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魔女の末裔~新米メイドの王宮事件簿~  作者: 晶雪
第十六章 新米メイドと魔女の塔
369/410

368 深夜0時

 ぐるぐる、ぐるぐる。世界が回る。

 テーブルと椅子。かまどや食器棚。ドアも、窓も、セドニスの姿も、全てが回っている。

 何なの、これ。何が起きたの。

「エル・ジェイドさん!」

 もう1度、セドニスが私を呼ぶ。ほとんど叫ぶように。

 だけど私は、返事ができなかった。

 ふいに視界が暗転して、周囲の音が消えて――ついでに、足元の床も消えた。


 落ちる。


 落下感と浮遊感。

 いきなり暗闇に投げ出され、もはや左右どころかどっちが上か下かもわからず、強烈なめまいと吐き気に襲われながら、私は叫んでいた。

「何なの、これ!?」

 無論のこと、誰かが答えを教えてくれるわけではなかったが――それでも、黙っていられなかったのだ。

 あまりに唐突でわけのわからない事態に、再度、抗議の声を上げようとした、その時。

 冷たい外気が頬にふれた。

 一瞬遅れて、両足が大地に着く。勢い余って、若干つんのめる。

 どうにか体勢を整え、辺りを見回した私の目にうつったのは――。


 見上げるほど大きな、白い石造りの塔だった。


「え……」

 周囲は森。塔の正面入り口には、何やら見覚えがある気がする観音開きの扉があった。

 ……開いている。まるで来訪者を誘うように。その内部には、ただ闇だけが広がっていた。

 誰も居ない。

 ついさっきまで話していたはずのセドニスも、憩い亭の厨房も幻のように消えて、私は夜の森に1人、立っていたのだった。

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