表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の末裔~新米メイドの王宮事件簿~  作者: 晶雪
第一章 主人公、求職中
20/410

19 後始末2

 事件の話をするとはいっても、今回の件では、私は純粋に巻き込まれただけの被害者であるからして、話せることは少ない。

 しゃべっていたのは、主にアゲートだった。

 普通、こういう事情聴取っていうのは1人ずつ行うものらしいが、カイヤ殿下への説明も兼ねて、2人まとめてすることになったのだ。

 

 あの中年男は、最初カルサが推測した通り、王都の貴族なんだそうだ。

 例の、私に盗っ人の濡れ衣を着せてくれた「セイレス家」と同様、もとはけっこう由緒正しい家柄で、今現在は傾いている。

 土地を売ったり、新たに商売を始めてみたりしたものの、うまくいかず。アゲートの店から何度も金を借り、その借金で首が回らず。ついには、例の「家宝」を手放すに到ったと。

 その決断をしたのは、あの中年男ではなく奥さんの方なんだって。

「大変聡明なご夫人ですよ。いずれ家を建て直すことでしょう。幸いなことに、現実の見えていない夫は、しばらくシャバに出てこられない」

 アゲートは立派な口ひげをいじりながら、妙に楽しそうに話を続ける。


 ちなみにあの「家宝」、そこそこ高い物らしい。宝石としての価値ではなく、細工した職人が名工だから。

 かつて――何百年も前に王家から送られたもので、名誉の証であり、家名の象徴なんだとか。

「それをいくらで買った?」

 カイヤ殿下が問いを挟む。

「親愛なる殿下でも、商取引の詳細についてはお答えできませんなあ」

 とぼけるアゲート。

 もしかしなくても、安く買い叩いたのかな、と私は思った。


「極めて正当な商取引ですよ。ご心配なら、あの家の者たちに確認されても構いません」

「別に、そこまでする気はない」と殿下は言った。「およその事情はわかった。俺は帰るが……、その娘を連れていっても構わんか」

 この場で娘と言えるのは私しか居ない。

 問われたカメオは、「聴取は終わったんで、構いませんが」と答えつつ、理由を聞きたそうに私と殿下の顔を見比べた。

 私も聞きたい。殿下が私に何の用だろ? 仕事の件なら断られたし、他に思い当たる用件もないし。

「どうした、行くぞ」

 殿下が言う。私が一緒に行くのが当たり前みたいに。

 おかげでカメオも納得してしまったのか、第二王子殿下のすることなら怪しむ必要もないと思ったのか、敢えて引き止めようとはしなかった。


 私も、早くここから――アゲートから離れたかったので、ひとまず席を立った。何の用かは、外に出てからあらためて聞けばいい。

「またねー、姐さん」

 カルサが気楽に手を振ってくる。

「ごきげんよう、殿下。またお会いしましょう、お嬢さん」

 なぜか、アゲートまで。

 そっちは正直、2度と会いたくない――と私は思った。まあ、残念なことに、その願いはかなわないのだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ