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9話・人生デイサービス


 3回目になったユメセカイも、無事に終わった。今回は高校時代の振り返りだった。


 金が無いから私立には行かせられず、公立一本に絞ったのが申し訳無かった事。祖父の死から家の金が底を尽きかけていた事。自分は再婚すべきか、それともしない方がいいのか? 年齢的に考えても最終局面である事。祖母の体調が悪くなって来ていて、今後が不安な事。俺の将来を考えたら、今の家は売り払う事がいいかも知れないという事――。


 そんな内容の話を母はした。

 体調は優れてはいないはずだが、その話は途切れる事無く話し続けていた。すでに、夢の館の主役は母になっていた。ここに来てから他の入居者やスタッフともトラブルがあったが、母は完全にスターになっていた。


 そして、一月後に4回目のユメセカイを迎えた。これは、もう母個人の話になっていた。今までの人生の話がメインテーマだったんだ。


 母は人の親として苦悩していた。

 俺が子供の頃に離婚をしているから。


 父親とは、父の浮気問題がキッカケで別れたそうだ。しかし、母も相手を問い詰めたりなどして暴行事件にまで発展していた。そして、それは示談で済んだが元の鞘には戻る事は出来なかったようだ。


 その後、父の行方は知らない。

 知らないからこそ、俺には死んだと伝えたようだった。


 子供が好きじゃないのに、子供を産んでしまった後悔もあった。けど、それを乗り越えた先には喜びもあった。

 

 喜びもあれば、辛さもある。

 人生と同じと、母は言った。


 人の親なら、息子の全てを愛していると言うのが普通かも知れないが、俺の母はこうでいい。

 息子の全てを愛しているなんて、気持ち悪い言葉は聞きたくない。母は常に自分が一番だ。それが、少しでも息子に気持ちがあったなら愛されていた証拠だ。


「だから私は和樹が好きなのです」


 自身有り気に、母はそう言って笑っていた。その笑顔は、俺の脳裏に焼き付いた。


 最後のユメセカイから一ヶ月後、急激に体調を崩した母はそれから一週間後に亡くなった。気性の激しい母らしい最後だと思う。

 長く苦しまなかっただけ、マシだったろう。


 母の死後に俺は幽木さんと付き合う事になった。生前に報告は出来なかったが、それでも許してくれと思った。


 死ぬ間際、母は毎日の繰り返しは、喜びも悲しみも同じようで違うとも言った。


 俺もそう思った。

 人生とはデイサービスのようなものだ。

 毎日の連続、毎日の勉強。

 同じルーティンのようで、毎日違う朝が訪れる。

 毎日、毎日、毎日――誰かの為に、そして自分の為に働かなくてはいけない。


 人生=デイサービス。


 俺も老いたら母のようなユメセカイを開けるよう、色々な経験を積んで行きたい。隣にいる女性と共に、人生デイサービスを――。


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