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6話・様々な事件


 それから、一週間が過ぎた――。

 第2回目のユメセカイ開催に向けて、中学生時代の写真を探そうとしていた俺は、母が住む室内でそれを見つけられなかった。


 部屋の外に持ち出して忘れても、フリールームかどこかにあるはずだから見つかるだろうと思っていたが、先週行った時に見つけるのは出来なかったんだ。そんな事を考えつつ、翌週の週末になっていた。土曜日の午前中に自宅で朝飯を作りつつ、考えている。


(母は写真を捨てる訳が無い。別れた父親の写真も捨てずに持っているんだからな。となると……)


 俺は夢の館の職員を疑うようになっていた。

 夢の館は幽木さんをリーダーにして、若い山田さんと四人のスタッフ。夜勤は男性二人体制のローテーション勤務だ。夜勤担当はたまに夜間トイレなどがあるぐらいで、特に問題は無いと聞いている。寝てる時間だから母達もほとんど関わり合いが無いと言っていた。二人共太ったオッさんだから興味ないそうだ。


(となると、やはり日勤スタッフ。この前のファミレスで山田さんから聞いた話だと、幽木さんは噂では他のグループホームで問題を起こしたとして、この新規グループホームに転勤したと聞いた。これは幽木さんを疑った方がいいのか……?)


 幽木さんはリーダーだし仕事はキッチリし過ぎている。けど、何の問題かは山田さんも知らないようだが何か問題を起こしたのは間違い無いようだ

 すると、俺のスマホにメールがあった。


「アルバムが見つかった? ソファーの下から?」


 何故か、中学生時代の写真アルバムが見つかったようだ。フリールームのソファーの下にあったらしい。準備をして、俺は夢の館へ向かった。

 到着してから話を聞くと、山田さんがソファーの下も掃除してないから発見が遅れたようだった。それを謝って来た。


「すみません和樹さん。私、少し掃除サボってました」


「まぁ、ソファーの下じゃわからないからね。介護の仕事は大変と聞いているから、あまり無理せずに」


「ありがとうございます」


 とりあえず山田さんを責めても仕方ないので、余計な事は言わない。山田さんは、介護の仕事をやる理由は社員登用されて横浜の仕事で、アパートの補助金とかが出るからやっているだけだ。専門学校も、そこまで意欲的に勉強していたわけじゃないと言っていた。


 若いし、田舎から出る目的なら仕方ない選択だとも思う。それを入居者の身内に打ち明けるのも、若い証拠だ。


 母は二階の自室にいたので、一応この件を話に行く。すると、幽木さんへの嫌悪感を出していた。


「あの幽木さんは幽霊みたいに現れるし、あの人がアルバムを隠したかも知れない。あの人、おかしいよ。洗濯物を畳む仕事も面倒だし」


「洗濯物を畳むのは仕事じゃないぞ。それにアルバムは見つかったから、もうこの件は忘れよう。幽木さんも、またユメセカイを開いて洋子さんに頑張って欲しいと言っていたよ」


「え? そうなの! それじゃ、またお話ししようかな!」


 上手く母を操って、アルバム件は流した。

 幽木さんが怪しいと母が言うのが、どこまで本当かはわからない。


 この夢の館において、母と深く関係してるのは幽木さんと山田さん。他のパートのオバさん連中はあくまで、自分の仕事の範囲を広げてはいない。となると、犯人探しをするなら幽木さんか、山田さんしかいないんだ。


「……でも、犯人探しをしてもしょうがないな。そもそも俺の考えすぎの可能性もある。この件は終わりにしよう。次のユメセカイを開くのが優先順位だ」


 それから、数日して母がゴミを便所に捨てるなどの行為が行われていると報告された。最近詰まりが発生していて気が付いた事らしいが、トイレに何かのゴミが流されているような話だ。その犯人は母だという。


 そんな事も有り、俺は仕事終わりに夢の館へ行く事になった。事務所で幽木さんと話をする。


「……洋子さんは、冷蔵庫にあるお菓子を自室で食べて、そのゴミをトイレに流していたようです。最近、やけに減りが早いと思い数を書いておいたんですよ。丁度、夜勤の人が夜中に起きて来た洋子さんの行動を見ていたらしく、報告がありました」


「そうですか……確かに、認知症になってから食欲に対しての限度が無いようにも思います。親戚の家に行った時も俺よりも食欲があってみんな驚いてたから……本当に申し訳ありません」


「トイレの排水管が詰まらなかったので、良かったです。今後は、洋子さんのおやつなどを増やすのも考えてもらえると助かります」


「そうですね。そちらの夕食後に食べるのを約束して、何か買ってきます。とりあえず母にも今回の件は伝えておきます」


 体調が良いのか悪いのか、ダルそうな顔の母は自室でテレビを見ていた。トイレの件と、夕食後に食べる物が何がいいかを聞いた。やはり、幽木さんの事は嫌いなのがここでハッキリした。


「トイレに流したのはそこの幽霊女でしょ! ふざけんじゃないよ!」


 幽木さんとの仲が悪くなる母をなだめ、幽木さんにも謝ってから夢の館の玄関に立つ。そこで幽木さんに挨拶をして夢の館を後にした。





 その半月後――。

 また、夢の館トイレでの詰まり事件が発生した。母の住む二階のトイレが詰まったようだ。前科があるので、母が疑われて当然でもある。

 その事を聞いた俺は、すぐに夢の館に駆けつけた。流されたであろうゴミを、山田さんはゴミ袋に入れていた。そして、話を聞いてから幽木さんと山田さんに見送られて帰る。

 

 このトイレ詰まり事件は呆気なく解決した。


 俺は実は夢の館から帰ってはいなかったんだ。幽木さんに伝えて、犯人が二階に行ったら玄関を開けてくれるよう頼んでおいた。そうして、俺は犯人が掃除していたゴミから犯人をあぶり出す事に成功した。トイレ掃除をしようとしている犯人にまた、何かされる前に声をかけた。


「何やってるんですか山田さん? 今回のトイレ詰まり事件は山田さんが犯人ですよね?」


「!? か、和樹さん! さっき帰ったんじゃ……」


「帰れないですよ。犯人がわかってしまったんだから」


「何を言ってるんです? 犯人は洋子さんでしょ……」


「証拠もあるんですよ。母が流さない物の証拠がね」


 山田さんは余計なモノをトイレに流している犯人だった。何でこんな事をしたかは不明だが、俺は犯人が山田さんと確信していた。幽木さんは細かいから、母が大事にしている物がわかる。


 けど、山田さんは少し雑で仕事を早く終わらせる事しか考えて無いのが、掃除をサボっていた事などでよく分かっているからだ。


 トイレ詰まりのゴミの中から、一つの汚いビニール袋を取り出した。山田さんはわけがわからず言う。


「そのゴミが何かあるんですか? 私が犯人という証拠が?」


「これはゴミかも知れないけど、前のデイサービスで貰ったモノだから。これを捨てるのはあり得ない。母は荷物が多いだけに、捨てられないタイプでね。これは、幽木さんも分かっている事だ」


 幽霊のように立ち尽くしている幽木さんはトイレの方向を見てうなづく。


「言った通り、このビニール袋はタオルとかを入れる用に使っていたモノ。母がこれをトイレに流すのはあり得ないんですよ」


「……そんな。そんな事で……バレるなんて……」


 ここで、山田さんは自分の罪を認めた。

 俺の予想通り、山田さんが犯人だった。

 山田さんの話では、次のユメセカイのイベントではより一層母に気に入られたかったらしい。


 俺の事が好きだから。


 そして、幽木さんに罪をなすりつけるか、母が幽木さんを嫌えばいいと思っての行動のようだ。


「だから私は和樹さんが好きなの!」


「――!?」


 そこで、いきなりキスをされるが落ち着けと諭した。


 山田さんは、田舎から出て来て都会に馴染もうとしたがイマイチ馴染めていない自分がいたようだ。ネットで知り合った人達とも上手く行かず、合コンなどでもエッチしただけで終わるらしい。その寂しさを紛らわす為に、一軒家に住んでいて金のありそうな俺を狙っていたようだ。


(確かにこんな環境じゃ、利用者の家族にも手を出すのは普通か。やりたく無い仕事を選び都会に出て、上手く行かずに疲れてもいたんだろ。よくあるストレス発散だ)


 そうして、トイレ詰まり事件は幕を閉じた。

 ここである事実が発覚した。

 トイレ詰まり事件と、アルバム紛失事件は繋がりがあると思っていたが、山田さんはアルバムには触れて無いと言っている、


 となると、アルバム紛失事件は事件では無かったのか? と背後にいる幽木さんに振り返ってみた。


「……いない」


 すると、幽木さんはもう背後にはいなかった。相変わらず、幽霊のような人だ。山田さんの今後の事は、幽木さんが何とかするだろう。


 俺は家族としては山田さんにこのまま働いてくれと頼んでおいた。泣いている山田さんも、ちゃんと頑張ります! と気合を入れ直してくれたようだ。

 また、ファミレスでも付き合ってやろうと思う。


 そんな事も有り、俺は少し疲れが出たようで熱を出して寝込んでいた。そして、体調崩していると自宅に幽木さんが現れたんだ。


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