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次の日、昨日は色々話すことがありすぎて朝にお兄様と走る話が出来なくてお父様から許可をもらうのを忘れてしまったので、私はいつものようにマリアンネに起こされて起きました。なんだか今日は体がポカポカして気持ちがポヤポヤします。不思議な感覚です。
「マリアンネ、今日はなんだか暖かいわね。天気がとても良いの?」
「いえ、天気は良いですが気温はまだ低い方ですけれど...っ!お嬢様少し失礼致します。」
マリアンネはカーテンを開けるのをやめて走ってベッドまで来て私のおでこに手を当てました。
「あつい...昨日色々あったから熱が出たのかもしれません。横になってください。旦那様と奥様に熱がでていることをお知らせしてきます。ジョンにもおじやを作るように言ってきますのでお嬢様は大人しく寝ていてくださいませ。」
「分かったわ。ありがとう、マリアンネ。お願いね。」
「氷枕も持ってきます。少々お待ち下さい。」
マリアンネは急いで部屋から出ていきました。
また、熱がでるなんて本当に体力がなさすぎます。元気になったら走るのをお父様に許しもらわなければ...でも、何だかさっきまではポカポカ、ポヤポヤしてたのに熱がでてると分かったら体がだるくなってきましたわ...頭も痛くなってきたような...だんだん眠くなってきましたわ...
私はそのまままた眠りにつきました。
「お嬢様、起きてください。おじやを持ってきました。少しだけでも食べて下さい。」
「んっ、マリアンネ...熱いわ...身体もすごく重たいの...」
「お医者様を呼んでいますので、もう少しお待ち下さい。お腹にご飯を少し入れて、診察のあとはお薬を飲んで寝るだけにしときましょう?さぁ、起き上がるのをお手伝いします。」
「ん...ありがとう」
「自分で食べられますか?」
「うん、大丈夫だと思うわ...」
マリアンネが起きるのを手伝ってくれたのでなんとか起き上がることが出来ました。身体がすごく重たくて正直ご飯なんて食べたくなかったけれど、マリアンネの言うとおり薬を飲むためにはお腹に物が入ってないといけないので頑張ります。ベッド上で食事をするための長机をマリアンネがセットしてジョンが作ってくれた私の好きなおじやがのせられました。食欲はなかったけれど、私の好きな具材で作られた美味しそうなおじやに私は少しだけ食欲が出てきました。
「美味しそうね...」
「ジョンがお嬢様の為に作った特別製ですから。」
「そうね...ジョンにありがとうって伝えてくれる?」
「かしこまりました。」
私は少しずつ口におじやを運びました。おじやはとても美味しかったけれど、やっぱり少ししか食べれず、一人用の土鍋の4分の1程しか食べられなくて作ってくれたジョンに申し訳なく思いました。食事をしたあとお母様とお兄様がお部屋にお見舞いに来てくださいました。お兄様はレッスンがあるらしく30分もしないくらいで涙目になりながら部屋から出されていました。そのあとすぐにお医者様がいらして診察を受けました。疲労からくる熱だろうとのことでした。なんと弱い身体でしょう。とにかくゆっくり大人しく寝ていればすぐに良くなると笑ってお医者様はお帰りになられました。
「とりあえず、また何かの病にかかったのではななくてよかったわ。」
「心配をかけてごめんなさい。お母様。」
「いいのよ、子供を心配するのは親の特権なの。お父様にも使いを出して疲労からの熱だとお知らせしましょうね。とても心配してらしたのよ。今頃はお仕事にならなくて周りの方をこまらせているだろうから。」
そう言ってお母様は笑いながら頭を撫でてくれました。
「さぁ、寝なさい。ゆっくりと。お薬がなくても寝ていればすぐ下がると先生が言っていましたからね。あなたが寝るまで私が側にいてあげます。...愛してますよ、愛しい私のマリーシャ。」
「はい、お母様。...私も愛してます。」
チュッ
お母様がおでこにキスをしてくれました。私はお母様の優しい声と暖かい手に安心してゆっくりと深い眠りにつきました。
次に目を開けると、ベッドの横に置かれた椅子にお父様が座って本を読んでいました。
「...お父様?」
「ん?あぁ、目が覚めたのか。どうだ?体調の方は。」
お父様は本を閉じて私のおでこに手を当てました。
「熱はもう少しあるみたいだな...食欲はどうだ?食べられそうならジョンに食べやすいものを作ってもらおう。」
「お腹は少し空きました。身体はまだだるく感じますけど、朝よりは楽になりました。頭痛も朝よりは痛くないです。」
「そうか、それはよかった。マリーシャ、何か食べたい物はあるか?アイスクリームも果物もたくさん買ってきたからなんでもあるぞ。」
「ありがとうございます、お父様。ミカンが食べたいです。」
「そうか、ジョンにミカンもむいてもらおう。あとは何かあるか?」
「...お父様。一つお聞きしてもいいですか?」
「ん?なんだ?どうかしたか?」
「どうしてお家にいらっしゃるんですか?」
「…………」
そう、寝ていたから正確な時間は分からないけれどまだ夕方と言える時間のはず。だって、まだお日様が出ていますもの。しかも今の季節は冬です。日が沈むのは早い。5時くらいになると日が沈んでしまいますから遅くてもまだ5時前のはず。普段のお父様は19時くらいにしか帰ってきません。それにお父様は国防大臣の地位に就いてますから、帰ってこない日もあるほどお忙しい人です。それなのに今お父様はお家にいる、おかしいです。
「お父様?」
「......私がとても優秀だから今日の仕事はすぐ終わったんだ。」
「お母様が私の事をとても心配してらしたから周りの方が困るくらい使えなくなっているはずだと言ってましたよ?」
「ミシェルめ...マリーシャの事が心配だったから逆に仕事をさっさと終わらせて帰ってきたんだ。」
「そうなんですか?」
「あぁ、そうだよ。」
「マリーシャに嘘をつかないでくださいな。アンドール様。」
「ミシェル。」「お母様。」
いつの間にかお母様がドアを開けて部屋のなかにいらっしゃいました。
「嘘なのですか?」
「ぅ...」
「えぇ、嘘ですよ。あなたのお父様はあなたが疲労からくる熱だと伝えた使いと一緒に帰ってこられました。職務は部下の方々に押し付けて。本当に困った人です。マリーシャは大丈夫だから仕事を頑張って下さいと手紙にも書きましたのに...」
「心配なものは心配なのだから仕方あるまい。それに普段しっかり仕事をしているから急ぎのものはないし、明日、明後日までに片付けないといけないものは終わらせたから今日くらいはあいつらだけで大丈夫だ。」
「だからといってお昼に帰ってこなくても良いでしょう...?」
「アレスと一緒じゃないとあれこれ買ってこれないだろう。」
「あんなにたくさんのフルーツ痛む前に消費しきれませんよ。家にだってまだたくさんのフルーツがありましたのよ?アイスもそうです。今は冬ですよ?あんなにたくさんどうするんですか!」
「アイスもフルーツ使用人達にもあげればいいだろう?すぐなくなるさ。」
「無駄遣いなさらないでください。と言ってるんですよ!」
「無駄じゃない。マリーシャが何食べるかわからないじゃないか。だったら食べる可能性があるものは 全部買わないとダメだろう?」
「はぁ...」
お母様とお父様の攻防はお父様に軍配が上がったようでした。ここは私がお母様の味方になってお父様にちゃんとお仕事をして、無駄遣いをしないように言わなくては。
「お父様?私のために色々買ってきてくれたり、お仕事から帰ってきてくれたこととても嬉しいです。」
「おぉ、マリーシャ!そうだよな、お父様が側にいてくれるの嬉しいよな?」
「ですが、私のためにお父様が周りの方に迷惑をかけたり無駄遣いをしてお母様に怒られるのは悲しいです。」
「うっ...」
「ですので、今度私が病気になってもただの熱とかならちゃんとお仕事をして早く帰って来てくれるととても嬉しいです。」
「「マリーシャ...」」
「分かった。次からはちゃんとお仕事を終わらせてから帰ってくるよ。」
「はい、お父様。約束ですよ?」
「約束だ。」
お父様と次からはちゃんとすることを約束して、お父様はジョンに食事を作るように言ってくると言ってお部屋から出ていかれ、お母様は私の熱を測って体調はどうかを聞いてまたもう少し寝るように私に言って出ていきました。私は家族の愛情を感じながら目を閉じました。たくさん寝ているはずなのに不思議と眠気がきてすぐに寝てしまいました。