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誤字、脱字修正しました。
ひとまず、目標を決めた私は自分の周りを観察することに決めました。
今は5歳ですから、攻略者や主人公のことは気にしなくても大丈夫でしょう。婚約の話がお父様から持ち掛けられるのも10歳の時だったはず...なら私はしばらくの間は何もしなくてもいい。だけど、私が前世の記憶を取り戻した様に他にもイレギュラーがあるかもですし、備えあれば憂いなし。転ばぬ先の杖。ですわ。周りの状況や情報をまとめておいたら何かあった時に役に立つかもしれません。私は自分の周りのことを頭の中で整理する事にしました。
我がアルベルト伯爵家は王宮で国防大臣として働いているアンドールお父様とそのお父様に一目惚れされ、王家から降嫁された現皇帝陛下の異母妹のミシェルお母様、それから私の2歳上のアシュルールお兄様の4人家族。
家族関係は特に問題があるわけでもなく、お父様とお母様も周りの方々から羨ましがられるほど仲は良いものです。
私とアシュルールお兄様の仲も少しシスコン気味ではありますが、良いもので、使用人達も私達家族と仲は良くて、昔から仕えてくれている人が多い事から使用人達とも問題はないでしょう。
私の家族や使用人については問題はありません。ですが、問題が1つだけあることに気づきました。
それは、幼なじみのギルベルト・カイザール様のことです。
私と同い年で同じ伯爵家のギルベルト様はことあるごとに私と自分を比べては自分の方が優秀だの、優れているだのと突っ掛かってくるのです。
私としては、ギルベルト様よりどこが優れていないかどうか等どうでも良いことですがこのギルベルト様の意味の分からない行動が原因で私は第一皇太子殿下と知り合いになり、皇帝陛下からお父様に婚約の話が行くのはずなのでギルベルト様をどうにかすることは私が将来、皇太子殿下と婚約するのを防ぐ事になるのです。
もちろん、ギルベルト様をどうにかできたとしても、他に何かがあって婚約の話が持ち掛けられる事もあるかもしれませんが...まずは目先の問題からですよね!
さて、ギルベルト様を何とかすることは決まりましたが、どうすればあの自分と比較して突っ掛かってくるのを止めさせればいいのでしょうか...?
そもそもどうして女の子である私と比較するのでしょう?私が男の子であるならば分からなくもないですが、私は綺麗で歳をとっていないかのようなお母様とそっくりだと言われる容姿以外は特に何か変わった所はないですし、頭脳や運動神経等も普通の女の子と変わりません。一体ギルベルト様は私の何が気に入らないのでしょうか...
コンコンコン....ガチャッ
「お嬢様、失礼致します。ギルベルト様がいらっしゃっています。応接室の方にお通ししていますが、まだ体調が優れないようであればお帰りになられますようお話し致しますが...」
私付きの侍女マリアンネがギルベルト様が来たことを知らせに来ました。小さい頃から一緒に居るからか私にとってはお姉様の様に思っている人です。まだ、部屋から出てくる様になって日が経たないので私の体調を慮ってくれる優しいマリアンネ。まだギルベルト様にどう対応すればいいのか決まってはいないけれど、答えのでない問題を頭でずっと考えていてもどうにも出来ないですし、もしかしたら、今会うことで解決するかも...それに解決はしなくても何かヒントとかが見つかるかもしれません。とりあえずギルベルト様に会ってみましょう!
「大丈夫よ、マリアンネ。気遣ってくれてありがとう。ギルベルト様に会いに行くから、着替えるのを手伝ってくれる?」
「かしこまりました。」
私はギルベルト様に会う決心を決めて、部屋着から清楚な水色のワンピースに着替えました。
「大変お待たせ致しましたわ、ギルベルト様。今日は当家に何のご用ですか?」
「何のご用ですか?だと?お前が流行り病から回復したと聞いたのでな流行り病ごときに倒れるお前を笑いに来たに決まっているだろう!なんと貧弱な身体なんだ、お前は?僕など、流行り病どころか風邪も引いたりしないぞ!身体を鍛えないから流行り病などにかかるのだ!僕は朝方と夕方に走り込みと剣の素振り、おまけに腹筋と背筋をしてるんだぞ!どうだ、すごいだろう!」
......意味がわからない。そもそも流行り病にかかるかどうかに身体を鍛えているかそうでないかは関係がないと思うし、私以外にも沢山の人がかかったわけで、その中には普段から鍛えている国防軍の騎士の方々にもいたらしいですし、5歳の男の子がそんなに鍛えている事はすごいことかもしれませんが、仮にも高熱を3日出して完全に熱が下がりきるまでに3日、そのあと部屋に一週間閉じ籠っていたわけで、二週間も病に倒れていた事になっている女の子に対して、病に倒れたことを笑いに来た!等と言い切るなんて人としてどうなのだろうか...とりあえず笑って誤魔化してしまいましょうか。
「まぁ、ギルベルト様はまだ5歳なのにそんなにも身体を鍛えていらっしゃいますのね。私は運動はあまり得意ではありませんので、どうしてもギルベルト様より体力等はありませんから流行り病になるのも仕方が無いのかもしれませんわね。流行り病はなおりましたけれど、ずっと寝たきりでしたのでまだ体力の方は回復してませんの、そのうちお庭でお茶が出来るくらいにはなるとおもいますので、その時はお兄様もお誘いしてお庭でお茶でもしましょうね。」
「当たり前だ!俺は由緒正しきカイザール家の嫡男だぞ!将来国軍の将軍になることが決まっているのだ、5歳だろうが体を鍛えねばいけないのだ!お茶の誘いももちろん受けてやるぞ!俺は心が広い男だからな!」
どこら辺が心の広い男だというのでしょうか。カイザール様のお父様のユギラール将軍様は確かに国軍の将軍として素晴らしい手腕と忠実な騎士道で騎士を目指す方々にとって憧れの的ですが、このままいけばギルベルト様が将軍を継ぐのは無理なのではないかと思います。現に次男のバルドー様が継ぐ事も考えなくてはと、この間我が家に来ていたユギラール将軍様がお父様に溢しているのを聞いてます。
「それはそれは、将来を見据えて努力なさっているなんてユギラール将軍様も鼻が高いことでしょう。ですが、頑張り過ぎてお身体を壊さないようお気をつけ下さいませ。まだ私達は5歳なのですから、無理をなさると身体の成長に悪いと聞きますわ。」
「ふん、そんなのお前に言われなくとも分かっている!お前がそんなことを気にする必要はない。俺はお前と違って身体を鍛えぬいている男なのだから!」
「それはそれは、失礼しましたわ。」
「分ければいいのだ!俺はお前の失言にも笑って許してやれる心の広い男だからな!はっはっはっは!」
「ありがとうございます。」
「ごほんっ!う、うむ。そ、それで、だな。マリーシャ、お前はその、花が好きだろう?母上がお前の所へ行くのであれば持っていけと、俺は別にお前に花を送る気など微塵も無かったのだが母上がどうしてもと言うから仕方なく持ってきてやったぞ!感謝しろ!」
「まぁ!とても素晴らしい花束ですわね。ありがとうございます。ライラ様にもお礼をお伝え下さいませ。」
「う、うれしいか?そうかそうか!まぁ、この俺がやったんだからな!当たり前だな!はっはっはっは!」
「ギルベルト様、楽しそうにお話しなさっているところ申し訳ありませんが、お嬢様はまだ体調が整っていませんので今日はもうお帰りになられますようお願い申し上げます。」
「ん?あぁ、そうか。体力がまだ回復してないと言っていたしな。いいぞ!俺は優しいからな、今日の所は帰ってやろう!また来るからな、マリーシャ!」
「ありがとうございます、ギルベルト様。またのお越しをお待ち申し上げていますわ。」
こうしてギルベルト様は笑いながら帰っていきました。
正直、どうして突っ掛かってくるのか分かりませんでしたし、ヒントも何も見つかりませんでしたがギルベルト様の相手をするのに疲れてしまったのでマリアンネが来てくれて助かりました。
「ありがとう、マリアンネ。」
「いえ、これくらいお気になさらないでください。お嬢様。」
「疲れてしまったから夕食の時間までまた部屋で休んどくわ。」
「かしこまりました。ごゆっくりお休み下さいませ。」
ドサッ
私は自室に戻り、ベッドに倒れこんで深いため息をつきました。
「はぁー、つっかれたー...ギルベルト様ってどうしてあんなに突っ掛かってくるのかしら...解決策も思いつかなかったですし、会ったのは間違いだったかしら...」
一人言を呟いて私はいつの間にか寝てしまいました。