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あたしはアヒル1  作者: るりまつ
4/10

南国風居酒屋にて

 のんびりした沖縄民謡が流れる店内は、すでにたくさんのお客さんで賑わっていた。

 ハイビスカスの造花が飾られた、板間の広い座敷に通され、とりあえず掘りごたつの長テーブルを挟ん男女一列で向かい合わせに座る。


「ミーナ、何飲むぅ?」

「うーん、やっぱりとりあえずビール?」

「ワタシはビールはちょっとなぁ〜」

「あ〜超ノド乾いてっからやっぱオレ、一杯目はオリオンの生だな〜」

「俺もそうすっかなぁ〜」


 となり同士肩を寄せ、メニューを見るフリをしながら、向かいに座った相手をチラ見チェックは欠かさない。そこへお店のお兄さんが、にこやかにオーダーを取りに来た。


「俺、オリオンの生」 

「ボクも」

「オレ、大ジョッキでね」

「ワタシ、シークァーサーサワー」

「あ、わたしはぁ、島みかんサワー」

「私もやっぱりオリオンにしよ。とりあえずグラスでいいや」

「ワタシ、パイナップルサワー」

「あたしウコンサワー」 

「おれはいきなり泡盛いっちゃおっかな〜。ロックで!」


 それぞれが口々に飲み物をオーダーし、急いでお兄さんが伝票に書き込むそばから、今度はあっちこっちで食べ物の名前が飛び交いはじめる。


「ゴーヤーチップス」   

「ミミガ—ね」

「私、海ぶどう食べた—い」

「あ、今のそれぞれ3皿ずつ」

「ラフテー、3皿」

「すくがらすって何?」

「いやラフテーは4皿くらい食うべ」

「塩漬けの小魚で島豆腐に乗ってます」

「ラフテーって一皿何個?」

「ゴーヤーチャンプルーとフーチャンプルー」 

「島らっきょ」 

「と、ソーメンチャンプルーもいってみっか?」

「はい、ラフテーは一皿3個です」

「ちっちゃくない?おれのコブシくらいある??」

「んーまぁ、3センチ角くらいっすかねぇ、、、」

「じゃ、ラフテーはやっぱ4皿にしとくか」

「んな、足りなかったらまた追加すればいいじゃねーか」

「そーだよ、がっつきやがって!」


 ようやく長いまとまりのないオーダーが終わった。

 こいつら男子は、ふだん飲み屋で働いてる腹いせなんだろうか。特にあたしの斜め前に座った男は、ラフテーラフテーって、うるさいしくどい。

 お店のお兄さんは、何度も伝票を確認しながら去って行った。するとすかさずレナちゃんが、幹事の男子にイチャモンをつけ始めた。


「ところで松野くん、なんでそっち4人なのよぉ。松野くんが絶対アタマ数合わせろっていうから、こっちも一人ドタキャンされたとこを無理して5人揃えたんだからね〜!」

「いや、大丈夫!ホント5人だから。実はこっちも急に来れないヤツ出ちゃって、昨日慌てて一人なんとかお願いして、来てもらえることになったんだけど……ちょっと遅れてるみたいでさ!ごめん、さっきから電話してんだけど全然通じなくて……ったく何してんだろなぁ、、、」


 松野くんてコはケータイをチラッと見て、気まずそうに笑った。するとラフテーを連呼していた男が不審そうな目をして訊いた。


「おい、誰、誘ったんだよ」

「あ〜実は俺の地元の先輩」

「えぇっ!?先輩??」

「といっても、ダブってるから同じ2年は2年。…だったはず。あれ?3年になったのかな??」

「なんだよそれ?誰よ??」

「いや、違う大学だから、、、よくわかんねぇ人なんだよ」

「何、松野君、知らない人誘ったの?」

「いやいや、そーじゃなくって、俺はよく知ってるけど、こいつらは知らないっていうか……」

「オレは知らない」

「ボクも知らない」

「おれも知らん」


 男子全員、完全否定。

 そこへ不意に、砂糖のように甘ったるい声が割って入った。


「ていうかぁ〜。わたし達も皆さんのこと全然知らないしぃ〜」


 大人しそうなさったんていう子が、小首をかしげてそう言うと、ガタガタしていた空気が一変した。


「そ、そっか、そーだよな!お互い初対面だもんな!!とにかく自己紹介くらいするか」

「そうだな、そのうち来るだろ」

「おぅ、そうするべ!知らない野郎のことより、早く君たちとお知り合いになりた〜い」


 ラフテー男のキモい発言にかぶせるように、タイミング良く飲み物が運ばれてきた。そしてバラバラの飲み物が、それぞれの前に間違いなく置かれて、みんながグラスを手に取ると、ようやく、


「かんぱーい!!」


 となった。

 それぞれグビッと一口、二口、グラスに口をつけると、松野君はさわやかな笑顔でみんなに言った。


「じゃあ自己紹介、まず男子からいきますか。 てことで、幹事の俺から。えーと松野です。マツノユウキ。 レナちゃんと同じ、西新宿のビルの中の飲み屋でバイトしてます。 ちょっと高いけど小洒落た店で、ワインなんかもたくさんあるから良かったら今度来てください。 昼はその近くの大学に通ってて、一応、機械工学の勉強してます」


 機械工学と聞いただけで、女子から『えーすごい〜!!』と声が上がる。 それを聞いて、なんでかレナちゃんが得意そうだったのが笑けた。

 飲み屋のバイトなんて聞いてたから、もっとケーハクそうな男を想像してたんだけど、 松野くんはいかにも頭が良さそうで背も高く、爽やか好青年ってカンジ。 この人が彼女いなくて合コン参加してるってのは、ちょっと信じられない感じだけどな〜。

 90点。でも限りなくあたしには縁がなさそうだから、可能性30%ってことで。

 その次は、ちょっと大人しそうな、眼鏡をかけたコ。


「あ、えっとボク、高橋隼人たかはしはやとって言います。えっと、ユウキと同じ学校です。 バイトは一緒じゃないけど、他の二人ともユウキを通して知り合って、 えっと、最近はけっこう飲みに連れてってもらったりしてます」


 隼人くんは、眼鏡の奥の大きな目を天井のほうに向けながら、 ササっと当たり障りのないことだけ言うと、 ホッとした顔でジョッキのビールを一口飲んだ。

 んー、、、ちょっとインパクト薄いね〜。顔もセンスも悪くないんだけどぉ〜65点。 でも押しに弱そうだから、意外にあたしでもいけちゃったりして??可能性も図々しく65%!


「次、オレ、佐藤俊。シュンで良いからね〜。 ユウキと同じ店の、俺は社員です。 なのでオレの方が同い年だけど、ちょっと偉いです。なんつって! 店来てくれたらオマケしちゃうよ〜。 一応、ちょっと前にバーテンになるための学校終わって、 今はソムリエの資格なんて取ろうと思って、まぁ頭は悪いけど、勉強中なんでよろしくね〜」


 シュン君はちょっと長めの茶髪で、かなり背が高く、顔が小さくて細ぉ〜い。 バンドとかやってそうな、不健康なオーラを持ったビジュアル系ってかんじ? カウンターでカクテルとか作ってる姿が、リアルに似合ってそう。

 そうねぇ〜見た目は90点だけど、こういう人ってブスにとことんクールそうだから 可能性は限りなく0%かな〜。

 次、ラフテー男


「はい、おれおれおれ!!藤井卓也。タクちゃんて呼んで!シュンとユウキと同じ店で、おれはとりあえずバイトってかんじ。 昼はなーんもやってないけど、ま、今は自分探しってやつ? 隼人は最近、ユウキが店に連れてくるようになってから友達になったんだよな?な、隼人?? おれ達、みんな彼女いないから、よく合コンやってんだよな?な?な?な??」


 松野くん、高橋君、シュン君は、はしゃぐラフテー男に、あははは、と引きつった笑顔を返す。

 コイツ、やっぱ ウザい。

 見た目も固く身のしまったコデブってかんじで暑苦しいし、女子のことをジロジロとデカイ目で、せわしなくチェックしてるとこがキモい!コイツが本当に、松野くん達の友達なんて思えない。少なくとも、コイツの「彼女いない」と、他の3人の「彼女いない」は質が違いすぎる気がする。

 え?あたしといい勝負なんじゃないかって??

 お〜〜〜〜〜!?痛いとこ突いてくるね!ほとんど誰もあたしのことなんて見ようとしない中で、このラフテー男だけが、さっきからあたしの胸元をチラチラ見てくるんだよね。

 見た目8点。で、可能性80%

 全然嬉しくないけどね!!

 はい、次、女子いきますよ〜。




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