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あたしはアヒル1  作者: るりまつ
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ここはどこ?

 

 強いノドの渇きを感じて、あたしは目が覚めた。

 目が覚めた。

 ……ていうことは、あたしは眠っていた、ということだけど、、、

 いったい、いつ寝たんだろう?


 焦点の定まらない小さな目に最初に映ったのは……


 シマシマだった。

 細いシマシマ。


 シマシマは赤と青と白が規則的に並んでできていて、それがいったい何なのかと目を凝らすと、急に遠近感が崩れてめまいを感じ、あたしは吐きそうになって、慌ててそのシマから目を逸らした。

 横を向くと、ティッシュBOX……。

 と、履きつぶしたモスグリーンのスニーカー。

 と、空のペットボトル。

 と、タオルだか雑巾だか、汚れた布。

 さらに黒いサンダル片方と、空き缶……。

 そんなようなものがごちゃごちゃと転がっている。

 その先に、灰色のビニール製の布?の、ポケット?の中に本??

 ……雑誌だ。それとロードマップ。

 ああ、イスか。座席。これは車のシートだ。


 え、車??


 もう一度、上を見る。

 ……やっぱりシマシマ。

 そして安っぽい灰色をした、車のビニール天井。

 よく見ると、そのシマシマは長い物体で、ビニール天井の2か所に張り渡された、縄跳び紐のような物でグルグルとくくりつけられていた。

 あたしは深く息を吸い込んで、徐々に視界を広げてみる。



 天井

                       ザーーーーーーーーーーーーーーーッ

 窓

                 ザザーーーーーーーーーーーーーーッ

 空

            ザッザーーーーーーーーーーーーーーー……

 風?


 そうだ、ずっと聞こえていたこの音は風の音??

 あたしはシマシマにぶつからないようにそっと身を起こそうとした。

 その瞬間、頭の中に何とも言いようのない鈍い痛みが走って、あたしは思わず頭に手をやり、ギュッと目をつむった。


「痛ったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


 予期せぬ頭痛に一人つぶやきなが目を開くと、フロントガラスから強烈な陽の光が差してきて、目を射る。

 黄色い太陽の光が、また頭の痛みを刺激したので、もう一度目を閉じて、それから少し時間をかけて、太陽の光に合わせられる分だけ小さく目を開いた。

 光を大きく取り込んだフロントガラスの先に見えたのは……



 海だった。



 真っ青な海。

 雲ひとつない空。

 そして左右に広がる白い砂浜……

 そこには絵に描いたような海の景色があった。



 なぜに海??



 あたしは混乱で痛む頭を押さえながら、冷静に、冷静に、昨日のことを思い出そうとした。

 昨晩、あたしは合コンに参加したはずだったよな?


 気の乗らない合コン。

 そこは渋谷。

 ここは海。


 ???


              ザザザザーーーーーーーーーーーーーーーーッ…


 開け放した車の窓から、気持ちよい風が吹き込んできた。

 その風でピラピラッと、紙のひるがえる音がした。

 見ると、頭の上にあるシマシマを固定した紐の一か所に、ノートの切れ端が挟んであるのが目に入った。

 その時初めて、そのシマシマが、いわゆる「サーフボード」の形をしているんだということに気が付いた。

 あたしは厚いパイル生地で出来たシマシマを支えている、太い縄跳びのようなビニール紐から、ノートの切れ端を慎重に抜き取った。そしてそこに書いてある大きな走り書きを読んだ。走り書き、とはいっても形の整った几帳面な感じの字に思えた。


  ポカリスウェット→クーラーバッグの中。必ず飲め

  真水→ポリタンクに入ってる

  タオル→適当に使え

  便所→駐車場の右 (男女別の水洗すいせんだ)

                     

 ポカリスウェット、水、と、その指示書のようなメモを読んで、あたしはものすごくノドが乾いていたことを思い出した。

 

 クーラーバッグはどこに?

 

 ぐるっと車の中を見渡す。小さなワンボックスカー。座席は運転席と助手席のみ。後部シートというものは無く、あたしはどうやら荷室に横になっていたようだ。

 荷室には、スケートボード?ショルダーバッグ、CDケース、雑誌、それから他のシマシマや、布のたぐいが一盛りになって置かれていて、その横に灯油を入れるような大きなタンクと、ミントグリーンのバケツと小ぶりの青いクーラーバッグが見つかった。

 あたしは躊躇ためらいいなくクーラーバッグのファスナーを開けて中に手を突っ込むと、ひんやりしたペットボトルを一つ取りだし、夢中でゴクゴク飲んだ。

 冷たい液体が、スポンジのようにカラカラになった体に一気に吸い込まれ、あたしはあっという間に1本を飲み干してしまった。


「フーーーーーーーーーッ…」


 美味しさに思わずため息をつくと、大きく開いた後ろのドアから、運転席側の窓へ向かって、気持ち良い風が抜けていった。

 後ろのドアにはいくつかの洗濯物が、ていねいにハンガーにかけて干されていて、それらが風に合わせて優しく揺れる。


 干されているのは緑のTシャツ。

 そして細身のデニムパンツ。

 となりに白いコットンシャツ。


 ……どこかで見覚えのある白いコットンシャツ。


 そして小さな携帯用ピンチングハンガーには、爽やかな浜風に吹かれて、ピンクのブラジャーがクルクル回っていた。


 ピ、ピンクのブラジャー!?!?!


 とっさに、あたしは自分の胸に両手をやった。


 な、な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!!!


 次に本能的に、アソコに手を当てた。


 あった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!


 え!?何これ??どういうこと!?!?

 そこで風に吹かれてのんきに干されているのは、確かにあたしが昨日身に着けていた、パンティー以外の衣類一式。

 そして、改めて自分の姿を見ると、なんだかタオル地で出来たユルユルガバガバの、バスタオルのような物を着ているではないか!

 一人パニックになって、車から転げるように飛び出した。

 ふりそそぐ直射日光を急に浴びて目がくらみ、それでも一歩二歩とよろけながら歩こうとすると、裸足の足の裏が焼けるように熱くて、咄嗟とっさに着ていたタオル服のすそを踏んで、その場にしゃがみ込んだ。


「よ〜〜〜!お目覚め??」


「ヒャハハハッ!」


 その時、海の方からこちらに向かって、男の人が二人、歩いてくるのが見えた。

 逆光で顔が良く見えない。

 でも、その声の一つには、ハッキリと聞きおぼえがあった。


 これは一体、どういうことなのだ??





ーパート2に続くー

 この作品は、2012年8月にFC2ブログに書き始めたものです。

その後11月に初めてノベリスト.jpに自分的には小説と思って投稿し、それから2014年3月にdノベルズに移動する際、もう少し小説らしい形にしなくてはと思い、一度お蔵入りにした作品です。

 推敲してもこんな程度ではありますが、それでも最後まで読んでくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

 引き続き『あたしはアヒル2』もよろしくお願いいたします。

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