平和で平等で理想の世界
気がついたらここにいた。
遠い未来の多分地球だろう。
人は居なかった。
しばらく人を探して歩き回ると、巨大な建物があった。
入り口を探し、建物に入った。
そこには大量のカプセルが並んでいた。
その大半は空だったが、人が入っているカプセルもいくつかあった。
カプセル内の人々は例外なく眠っていた。
その顔は「幸せ」を絵に描いた様な顔で、まるで本当に絵を見ている様だった。
何か気配を感じ振り返ると、驚いた顔をした少女が立っていた。
しばらくお互いを凝視したが、少女の側から話しかけてきた。
「こんにちは、管理人のユメです」
「接続希望の方ですか?それとも施設案内をご希望ですか?」
現状が全くわからないので、案内を希望した。
ユメは私をつれて施設案内を始めた。
説明によるとここはやはり未来の地球だった。
そして遺された人類はみんなこの施設のカプセルで眠っているらしい。
「みなさんを管理するのが私の仕事です」
「私は平等で平和で理想の世界を実現するために作られたんです」
「私はみなさんに理想の世界を提供しています」
理想?こんな場所に閉じ込めることが理想なのか?人類はこんなことを望んだのか?
「肉体は閉じ込められています。しかし精神は夢の中にいるんです」
「私は肉体を維持し、子孫を作り出し、夢を管理しています」
カプセルには赤ん坊も入っていた。
「長い人で千年は生きています。あなたの時代では不可能でしょう?」
「でもここでは出来るんです」
「だってこの中は理想の世界ですから」
ユメは笑顔で語りかけている。
「例えば・・・」
この人は異世界で勇者を、この人は猫しかいない世界で猫を、
この人は永遠の赤ん坊を・・・
ユメはカプセルのひとつひとつを指差し説明してくれた
「夢の中では皆さんは全員主人公です。他の人や動物、物や事はすべて私が管理しています」
「私は超えられない試練は与えません」
「私はあなたの居場所を作ることが出来ます」
「あなたは望んだ力、望んだ生き方そのすべてを実現させることが出来ます」
「平等で平和で理想の世界がここにはあるんです」
ユメは空のカプセルの前で立ち止まった。
「以上で施設説明は終わりです」
「私の中はとても温かくて、気持ちいい場所ですよ。あなたも私と繋がりませんか?」
カプセルはゆっくりとフタを開けた・・・