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レイン

挿絵作成:伊燈秋良さま

http://5506.mitemin.net/


ジャンル・必須要素:指定なし







 時が巻き戻る。

 いつからそんな機能が付いたのか。

 どうして、そんなことが出来るようになったのか、分からない。

 ただ、ただ。


「るーあ」

 下っ足らずな声が足元から聞こえる。

「どうかしましたか、お嬢様」

「おじょーさまじゃなくて、りーや! りーやなのっ!」

 甘えん坊で聞かん坊で、けれどなんとも愛らしい幼女。

 それが、リーヤ様だった。

「はい、リーヤ様。何かあったのですか?」

「ねえ、どうして、リーヤにはおとうさまとおかあさまがいないの?」

「それは、この世界が終わりそうになっているからです」

「おともだちが、るーあしかいないのも?」

「ええ、そうです」

 私はそう頷いた。

「じゃあ、りーやとるーあは、ずっとずっとおともだちね!」

 そういって暖かな、小さな手でぎゅっと握ってくる。

「はい、ずっとずっとお友達ですよ」

「でもね、ちょっとお腹すいちゃった」

 ぺたんと座り込んで、今にも泣き出しそうな顔を見せる。

「では、美味しいものを作ってきましょう。……この石の椅子に座っていてください」

「はーいっ!」

 片手を上げて、リーヤ様は良い子にしていてくれた。

 だから、安心して、獣を飼って、焼いてきた。それだけでは栄養が偏るので、リーヤ様の好きな果物も取って来た。これでリーヤ様も喜んでくれると思っていた。


 そのときまでは。


「きゃーー!!」

 その声を聞いて、急いで戻って来た時には、もう遅かった。

 血まみれで倒れたリーヤ様が横たわっていて。

「ぐるるるるるぅ……」

 人々を絶望へと導いたあの、忌々しい竜がそこにいた。

「リーヤ様!!」

 駆け寄るも、もう遅いのだ。

「おかえりー、来てくれるって……おもってた」

 にこりと微笑んで。

「さいごに、ね。……るーあにあえて、ね……よか……」


 リーヤ様はまだ、幼い。

 生まれて、片手で数えるくらいのほんのお小さい方だった。

 いてくれるだけ、尊い方だった。

 けれど、私には獣を狩ることはできても、竜を狩ることはできなかった。

 ましてや、リーヤ様を救うことも。


挿絵(By みてみん)


 気付けば、雨が降っていた。

 私は動けずにいた。

 ばちばちと、何かが弾ける音が聞こえた。

 私の目にはいくつものエラーが表示されていた。

 一面、赤くなっていた。

 ああ、終わりなんだと、思った。


 もし、この世界に、神がいるというのなら。

 お願い、私に力をちょうだい。

 リーヤ様を救えるくらいの、力を……。



 何度目の巻き戻りだろうか。

 もう一度、機能を確認する。

 見知らぬ機能が山ほど増えているような気がする。

 けれども、不思議なことにそれら全てが今の私に必要な気がする。

「ルーア! また、竜が出たんだ! 急いでくれ!」

 たくさんの声が聞こえる。

「はい、了解しました」

 私は翼を取り出し、空からそこへ向かった。

「るーあっ!!」

 そこにはお小さいあの方がいて。

 その方に向かって炎を吐こうとする竜に一瞥し。

「対象、リーヤ。加速展開、ブレスバリアー!!」

 その炎はリーヤ様を燃やす威力はない。

 なぜなら、それを遮断するバリアを私が張ったからだ。

 地面に着地し、そのまま竜に突進する。

「あなたは、この世界に必要ない。消滅せよ」

 手を大きな剣に、刃に変えて、固い鱗ごと、真っ二つに切り裂いた。

 どうっという音ともに、竜は息絶える。

 ああ、勝ったのだ。

 なんと嬉しいことだろう。

「るーあ!」

「リーヤ様。まずは私の力のセーブを」

「あ、そーだった。『るーあ、お疲れさま』」

「通常モードへと変更します。……ありがとうございます、リーヤ様」

 やっと抱けた、暖かいお小さい命に。

 なぜだか、雨の滴が落ちた。


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