もう一度、出会ってみたら
挿絵作成:injoonさま
http://10242.mitemin.net/
希望ジャンル:掌編あるいはファンタジー。
必須要素:蝋燭と時計と空を飛ぶもの。
ふわりふわりと、天使の羽を持ったなにかが飛んでいる。
「ちょっとー、もう少しゆっくり運んでくれませんかー? ぼくたち、落ちちゃいますよー」
そう声を出すのは、なにかが持ってる……蝋燭だった。
「すみませんねぇー、わたしも急いでるんですよ。ほら、あの時計見えるでしょう?」
言われて蝋燭は空に浮かぶドデカい時計を見た。
「ああ、本当ですね。ヤバいですね」
「だから、急いでるんです。それにしても、神も人使いならぬ人形使いが荒いですよね」
どうやら、あの天使の羽を持ったなにかは、人形……だったようだ。
「ですねぇ。でも、ぼくらも早く行かないとヤバいですよね?」
「そ、そうでした! ちょっと急ぎますから、しっかり捕まってくださいね」
「捕まってくださいって!」
焦った声が下から聞こえた。そう、あの蝋燭から。
「ああ、すみません。えっと、ちょっと魔力渡しますんで、それでなんとか、しっかり掴んでもらえます?」
ほわほわほわーんと、淡い光が蝋燭に注がれる。
「おお、これからぼくらもなんとかなりそうです」
「じゃあ、行きますよ」
「ちょ、ちょっと待っ……うひょーーー!!!」
数分後、何とか一行は時間までに神の前にたどり着くことが出来た。
「ちょっとーギリギリじゃない」
「申し訳ありません」
神の声に人形はぺこんと頭を下げた。
蝋燭も心配そうにゆらゆらと揺れている。
「でも、イイものを持ってきてくれたわ。これだけの魂なら、あの世界の勇者に相応しいわね」
神は満足げにそう微笑むと。
「勇者様ですか?」
「ほら見て、何度死んでも生き返る運命を持っているでしょ? これが重要なのよ」
「でも、これって、後でも付け加えれる……」
「あのねえ、最初からついてるのと、後から付け加えるのと、全然違うのよ。これなら、こんだけたくさん付け加えてもスタミナ有り余ってるから平気ってこと」
「おおおっ」
にこにこと、神はその蝋燭を特別な台において、魔法をかけた。
赤い炎が青い炎に代わり、その揺らめきは一層強くなったようにも思える。
それと同時に、蝋燭から聞こえていた声が、一切しなくなった。
「なんだか、寂しいですね」
「あら、あなたも行く? ちょっと楽しいことになってるわよ」
「え? いいんですか?」
正直、人形はこの仕事に嫌気を感じていた。だからこそ、遅刻したりしてしまったのだ。
「いいわよー。ついでに勇者さんに会って、一緒に旅するといいわ。ほら、いってらっしゃい」
そう、そんなときもありました。
「いやあ、まさかあなたに出会うとは。ちょっと嬉しかったですけど」
青い髪の勇者はそう告げる。
「ですよねー、私もこうなるなんて思わなかったです。そりゃあ、あまりにも刺激的ですけど、ちょっとあっちの仕事が恋しくなってきました」
可愛らしい天使の少女がふうっとため息をついていた。
ここはとあるダンジョン。いや、モンスターハウスというべきか。なんとかこの区域のモンスターを殲滅して、退治したモンスターを使って、ごはんを作っているところだ。
「えっと、倒さなきゃいけない魔王って……」
「地下、いちまんごせんろっぴゃくさんじゅうに」
棒読みに言う勇者に思わず、天使は同情した。だからこそ、共にいることを選んだのだ。
「まだ地下45階ですもんねー」
「い、言わないで、言わないで! なんだか凹みそうなんだからー」
彼らの戦い……いや、冒険はまだまだ始まったばかり。
「ねえ、もっと仲間増やそうか」
「いいですね、それ。地上に戻れる魔法を覚えたら、さっそく」
「やりましょう、やりましょう」
こんなの二人だけでやれるか! 神様のこんちくしょー!!