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本を開いて

挿絵作成:りちうむいおんさま

http://7484.mitemin.net/


指定ジャンル・必須要素:特になし




 ぼくは、この時間が好きだ。

 おおきなとしょかんで、だいすきな本を読むこと。

 それがぼくのだいすきなことだった。

 でも、ぼくはまだちいさいから、ほんとうは、ここで本を読むことはだめなんだけど。


 ある日、ぼくはとしょかんへのぬけみちを見つけた。

 やったと思った。

 うれしくて、うれしくて、とってもよろこんで、としょかんに入っていった。

 そして、だれにも見つからないように、好きな本をひとつ、引き出す。

 うれしくてうれしくて、たくさん読んだ。

 そうして、これで最後にしようと思って取り出した本。

 それを開いた時だった。


「ここは……どこ?」

 そこは知らない森だった。

 あれ? ぼく、としょかんにいたよね?

 持っていた本を大事にかかえると、もう一度、まわりを見渡した。

 ふわりと、何かがぼくの目の前を通っていく。

「えっ?」

 思わず、目をこすって、もう一度。

「は、翅の付いた妖精!?」

 と、そこで、ぼくはおもいだした。

 たしか、手に持っている本が、妖精の本だったことに。

「も、もしかして、ここ……」

 そこで、ぼくはわかった。

 ここは、妖精のいる森。

 本に書いてあった、その妖精の楽園である森だということに。

「でも……どうして?」

 わからない。

 わからないけれど、なんとかして、元いたとしょかんに戻らないと。

 そうしないと、父上と母上がかなしんでしまうから。

 ぼくは本をだきしめるように抱えながら、辺りを歩いていく。

「ねえねえ、妖精さん。ぼくのいたとしょかんに戻して?」

 ぼくの声が届いていないのか、妖精はぼくをみて、しらんぷり。

 だんだん、ぼくは、かなしくなってきて……。


 そのときだった。

「グアアアアアアア!!」

 蜘蛛のようなモンスターが突然、あらわれたのだ!

「うわああああ!!」

 しかもそばにいた妖精さんたちを捕まえて、ばりばり食べてる!

 そんなのを間近に見て、震え上がらないわけがない。

 足ががくがくして、逃げられない。

 蜘蛛の目がぼくの顔を映した。


「こっちよっ!」

 だれかの声が響いて、ぼくの手を掴む。

 ふわりと目の前に、紫色の何かがひるがえるのを見た。

 ぼくはその手に引っ張られて、なんとか蜘蛛のいる森から、離れることができた。

「どうして、ここに来たの?」

 助けてくれた子は、女の子だった。

 紫色のドレスを着た、髪の長い女の子。

 しかも、ぼくよりも少しだけお姉さんのようだ。

「本を読んでたら、ここに来ちゃって……」

「気をつけて。あなたはただでさえ、本に気に入られてるんだから」

「どういう、こと?」

 ドレスのお姉さんはおしえてくれた。

「本の好きなこどもを、本の中に閉じ込めて、食べちゃうの」

「えええええ!!!」

 お姉さんは怒ったような口調で。

「だから、おとなが、このとしょかんにこどもは来ちゃダメっていうのよ」

 ぼくはそのとき、父上と母上のいうことが、やっと、わかったような気がした。

「あなた、名前は?」

「……なまえをたずねるときは、まず、自分から名乗るんだよ」

「……そんなこと、良く知ってるわね」

 女の子は、眉をひそめながらも。

「ソフィアよ」

「ぼくは、ジークフリート・ロル・エレフィムテです」

「ジークね」

 ドレスの女の子……いや、ソフィアがそういうと。

「書の契約に基づき、ソフィアが命ずる。書架への道を解き放て!」

 ソフィアの足もとから、魔方陣が光り出し、そして。


 気が付けば、そこは……ぼくが最初にもぐりこんだとしょかんだった。

「帰って、来れたんだ……」

「帰って来れた……じゃないっ!」

 ふわりとドレスを翻して、ソフィアは告げる。


挿絵(By みてみん)


「もし、帰れなかったらどうするの? 今回は私がいたから、大事にはならなかったけど、この次はないわよ?」

「ありがとう、ソフィア!!」

 ぼくはソフィアに抱きついて、キスをした。

「ちょ……な、なにするのよっ……」

「お礼をいっただけだけど?」

 くびをかしげていると、ソフィアは顔を真っ赤にさせながら。

「まあ、いいわ……次からは気をつけるのよ」


 こうして、ぼくとソフィアは、運命の出会いを果たした。

 けれども、ぼくは気づいていなかった。


「ま、また本に閉じ込められちゃったよーう!」

 二度目の事態にぼくは、それほど焦ってはいない。

 なぜなら、もうすぐ、彼女が来てくれるから。

「ジーク、あんた、なにしてるのよっ!!」

 あのときと同じ、紫色のドレスをひるがえしながら。


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