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ある意味無茶なお届け物

挿絵作成:杞紗さま

http://12191.mitemin.net/


希望のジャンル:恋愛要素

必須要素:指輪の描写

 今日も今日とて、所長に呼び出された。

 この事務所の底辺に位置する私、アリアはいつものようにしぶしぶ所長室に入る。

 とはいっても、ホントにそれをやると洒落にならないことになるので、真面目に聞いてる振りを一生懸命やっておく。

「君には、これを運んでもらいます」

 ぽんと所長の机の上に置いたのは、青い箱。

 所長がぱかりとそれを開くと。

「指輪、ですか?」

「そう、大切な指輪ですよ。この指輪には、ある人物のDNAデータが内蔵されているんです。箱はどう使っても構わないので、指輪だけでも、このポイントに運んでくるように」

 どうやら、かなり重要な指輪……っぽい。見た目は普通の指輪に見えるんだけど。

「わかりました。E6570ポイントまで運べばいいんですね」

「ああ、よろしく頼みます。あなたなら、きっと運んできてくれるでしょう」

 そう、所長はにっこりと怪しい笑みを見せていた。


 で、件の指輪を運んでいるわけなんだけど。

「まちなさあああああああああああああああああいいいいいいい!!!!」

「待たないってばっ!」

 仮面を被ったドレス姿のご婦人が、指輪を持ってる私を追いかけてくる。

 っていうか、あんなドレスにハイヒールなのに、あんなスピード出せるわけ!?

「むふふふ、驚いているようねぇ、小娘。聞いて驚きなさい、このドレスは、反重力制御もされてる上に、自身の能力を強化プログラムが入っている特殊なドレスなのよぉ!!!」

 ほほほほと、優雅に扇子をひらひらさせながら、そうドレス婦人が教えてくれた。

「そんなのいらないから!!」

 ご婦人が狙っているのは、このケースだってことは知ってる。

 さっと胸元からケースを取り出すと。

「あなたの欲しいのはこれでしょ? ほら、あげるっ!!」

「ああ、これで私はあの人と結ばれるわっ!!」

 ひゅーーーっと、飛んでいくケースの元へ、ドレス婦人は向かって行く。

 その隙に人出の多い道を選び、駆けてゆく。

 っていうか、私にもその反重力なんとかってついてるドレスが欲しい……所長がくれるとは思えないけど。

 お蔭で、おっかけてくるドレス婦人を撒くことに成功。そのまま所長の言っていた場所へと向かった。


 それにしても、あのドレス婦人は誰なんだろう?

 結ばれるってことは、結婚するってこと?

「この指輪がねえ……」

 既にケースの中身は偽物指輪と交換済み。

 本物は私の薬指にはめていた。

 敵に気付かれないように、右の腕時計ブレスに内蔵されたダミーエフェクトを展開してたから、ドレス婦人は気づかれていないはず。

 もうすぐゴール。目的地は目の前だ。なんだか、見たことのあるお屋敷のような……。

 そのときだった。

「小娘ーーーーー!!! 紛い物を放ったわねぇ!! 今度こそ逃しはしないわっ!!」

 なんと、あのドレス婦人がやってきてるではないか。

 あれ、それと同時に所長の姿が見える。

 ドレス婦人が放ったツタ植物が私をからめとっていく。

「さあ、指輪を渡しなさいっ!!」

 完全に身動きが取れなくなる前に、私は手にしていた指輪を外して。

「所長、これをっ!!」

 ぽーんと所長へと放り投げた。

挿絵(By みてみん)

 所長は、いつものあの嫌な笑みを見せながら、しっかりとその指輪を受け取った。

「はい、ゲームは私の勝ちですよ。残念でしたね、マチルダ」

「きいいい、今度こそ、わたくしの想いを受け取ってもらえると思いましたのに! 次こそは、負けませんわよぉーー!!」

 ドレス婦人は悔しそうな声を出しながら、帰っていった。

 ……実は悪い人じゃないのかも。

「アリア、お疲れ様です」

 お蔭で助かりましたと、あの不敵な笑みを浮かべながら、所長が私をツタから解放してくれた。

「ところで、その指輪なんです? それにあの婦人は一体……」

「言ったじゃないですか、ある人物のDNAデータが入ってるって」

「ええ、それは知ってます」

 まだ絡まってたツタをぽいぽいと捨てながら、聞き流すように尋ねると。

「それ、私のですよ」

「へえ、所長の……え?」

 あ、あああああ、お、思い出した!!

 DNAデータ、それはそれは大事なものだ。それがあれば、自分のうり二つのクローンを製造することが出来る。そう、万が一のことがあれば、これで自分を甦らせるのだ。

 この進んだ現代にとって、DNAデータを交換するということはすなわち。

「けけけけ、結婚っ!?」

「忘れたとは言いませんよ。あなたは言ったではないですか。『私の心を奪って見せる』と。まさか、怪盗のあなたにその通りに心を盗まれるとは思いませんでしたよ」

「そ、それは、あ、あなたが、わ、私を捕まえたんであって……そのっ」

「というわけで、あなたもDNAリング、作ってくださいね」


 私はこの事務所の底辺に位置する者だ。

 かつて怪盗を名乗り、様々な財宝を奪って行ったのだが、目の前にいる所長というか、探偵に捕まってしまい……見逃す見返りに事務所を手伝っている……はずだったのに、えええええ!?

「そ、そりゃあ、初めて逢った時にそんなことを言ったことがあったけど、あれは……」

「冗談とは言わせませんよ。私はもう、あなた無しでは生きられないのですから」

「!!!!」

 真っ赤になった私の唇を奪ったのは。

「ですから、明日、結婚式をあげましょうね」

「は、早すぎっ!!」

 こうして、私を抱き上げる所長は、私が見た中で一番の笑顔を見せていたのだった。

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