月が重なるそのときに
挿絵作成:りちうむいおんさま
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ジャンル:ファンタジー
必須要素:少女の杖・少年の魔導書・草原の石板・二つの月
二つの月が重なり合うとき
更なる力の高まりを知るだろう
「これなら、上手くいきそうです」
にこりと少女が微笑んだ。
「それならいいんだけど……まあ、とにかく、やってみるか」
少年は手に持っていた魔導書を開き、何かを詠唱し始めた。
ちなみに彼が詠唱しているものは、この世界のモノではなかったりする。
「石板にも力が戻ったようですね」
満足げに少女はそう告げて、自身もその杖を抱えるかのように、彼と共に詠唱を始める。
彼とは違う詠唱のようだが、これもまた、この世界のモノではない。
二人の声に応えるかのように、ぐんぐんと幾重にも重なる魔方陣が展開。
そして。
「来たっ!」
「ええ」
二人が頷き、今度は同じ文言で詠唱を始める。
共鳴。
魔方陣から現れたのは、魔力の塊。いや、結晶。
光り輝く、美しい花のような結晶がせり出してくる。
「「リュイディータセルベス!!」」
それと同時に、バリバリという音ともに、二人の体が割れた。
……割れた?
そこから現れたのは、20代の男女。
「全く、いきなりここに飛ばされたと思ったら、変な体にされちまって、あー、やっと元に戻った!」
「本当、窮屈でしたし、口調や性格まで強制されていましたからね」
それでもあなたはあまり変わりませんでしたけど、そう少女だった女性が微笑む。
「とにかく、体が元に戻ったんだ。魔力が満ちてる今なら、元の世界にだって戻れるはずだ」
「ええ、そうですね。残してしまったあの子のことが心配です」
少年だった青年は、腰に付けた二本の剣を鞘から引き抜き、新たな詠唱を始める。
女性も背負っていた弓を取り出し、空へと向けて、矢を引く。
青年の詠唱が終わるタイミングと共に、矢が放たれて。
そこにぶわりと、穴のようなものが現れた。
「またこの中に入らなきゃならないのが憂鬱だが」
「行かなくては戻れません」
二人は手を取り合って、ゆっくりとその中に飛び込んだ。
「夢を見たの」
杖を持った少女がそういうと。
「僕も不思議な夢を見たんだ」
本を持つ少年が応える。
「知らない男の人と、女の人がどこかに出かけてしまう話」
「知らない男と女がどっか行く話」
どうやら、二人が見た夢は同じもののようだ。
「月が並ぶ日は不思議なことが起きるって聞いていたけど」
「本当に起きるなんて、驚きだね」
夜空には二つの月が浮かんでる。
この月が再び並ぶのは、もう何年か先の話だ。
「あの人たち、無事にたどり着けたかなぁ?」
「うーん、あの先の夢は見てないけれど」
二人は顔を見合わせ。
「「きっと大丈夫」」
揃った声が、くすぐったくて、嬉しくて。
思わず笑いだした。
そよそよと心地よい風が横切っていく。
二人の傍には、光を失った、あの石板が佇んでいた。




