剣×天使×血
挿絵作成:i-mixsさま
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ジャンル・必須要素:指定なし
穏やかな木漏れ日の下、彼女は笑って言った。
「私が闇に落ちることになったら、あなたの手で止めてくれる?」
そんな話を冗談交じりに聞いていた。
まさか、それが現実となるなんて、思わなかった。
正直、彼女が闇にのみ込まれるなんて、何かのドッキリにしか考えられなかった。
けれど、激化していく戦いの中で、これは現実なんだと、受け止める自分がいた。
わかっている。
彼女が清いままで、神の使徒として、生を全うしたいと願っていたことを。
だからといって。
だからといって、この手で彼女を殺すことになるなんて。
「お願いだ、目覚めてくれ!!」
叫びに似た声が響き渡る。
「ごめんね、もうあの頃には戻れないの」
彼女の顔には、あの暖かい笑顔はなかった。
あるのは、感情のこもっていない、ただの笑顔。
無機質な、笑み。
まだ、翼は白いまま。
まだ、彼女は闇にのみ込まれていない。
だけど、それもきっと、今だけ。
彼女の手には、僕を殺すための剣が握られている。
知っている、その剣には僕を殺すだけの十分な魔力と毒が塗り込められていることも。
「………っ!!」
自分の持つ、最高の剣戟で、彼女の首を掻ききった。
彼女はまた笑っていた。
無機質な、笑み……いや、それは……。
そして、僕は長い長い戦いを経て、やっと自分の故郷へと戻って来たのだった。
「あれは夢、だったのかな?」
目を覚ましたら、そこは自分の部屋だった。
今までと変わっていないと思っていたのは、自分だけだった。
気が付けば、苦手だった運動も楽々できるようになっていたり。
皆が嫌がることを率先してやってたり。
まあ、流石に生徒会長をやらないかと言われた時は、丁重にお断りさせてもらったけれど。
どうやら、あのときの戦いが、しっかり身に沁み込んでいるようだ。
あのときの、悲しみも。
あれから、一年。僕は強くなれたのだろうか?
キミは空でそれを見てくれているんだろうか?
「ねえ、ミセリア……」
「はい、勇者様」
「えっ!?」
振り向いた先には、あの白い翼はなかったけれども。
あの時と同じ、僕が愛した、彼女があのときと同じ服を着て、立っていたのだ。
僕は思わず、彼女を強く抱きしめ泣いた。
あの時流した、赤い血ではなく。
綺麗な、澄んだ色をした、透明の涙を零しながら。




