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赤い髪のプリミエール

挿絵作成:i-mixsさま

http://10275.mitemin.net/


指定:赤い髪

 現在、私は非常に危険な状況に立たされている。

 大事な食料とお金を、まさか、道行く動物に掻っ攫われるとは、誰が予期したであろうか!!

 追いかけたけど、むっちゃ足が早い上に、隠れてしまったので、見つけることは不可能。

 仕方なく、道の途中で見つけた草花等で、腹ごしらえしていたけれど……それももう限界を迎えている。

 そう、私はお腹が非常に危機的な状況になっている。

 誰か、何かを恵んでください。

 と、前方に村らしきものを発見!!

「た、助かった……」

 それと同時に、私の意識は遠のいた。

 村の門の前で。ばったりと。


「本当にあのときはびっくりしたんですから!」

 金髪でそばかすがチャーミングな女の子、カレンが私の命の恩人だ。

 いや、ご飯をくれた人なんだけど。

 ここは、カレンのお家で、この村唯一の宿屋。今は、その一室を貸してもらっている。

「ごめんね、驚かせるつもりはなかったんだけど……」

 思わず苦笑を浮かべてしまう。

「無理もないよ、大変だったんでしょ? 一人で旅してたんでしょ?」

「え? 一人じゃないよ、傍に犬いなかった?」

「え?」

「え?」

 くそ、またあいつ、どっか行ってるのか。


 私は一人で旅はしていない。

 相棒のギルちゃんと一緒だ。大きさはまあ、私の足の膝あたりまでだから、それほど大きくはないし、小さくもないと思う。

 犬と言っても、本当は違うんだけど……まあ、いいんじゃないかな。たまにはそう言っても。

「だって、ここにギルちゃんいないし」

「ギルちゃんていうの?」

「うんそう」

 カレンの言葉に頷くと。

「見つけたら、抱かせて! 犬をもふもふするの好きなの!」

 やべ、ギルちゃんに抱かれるのかと思っちゃった。だよねー、もふもふだよねー、まさか、命の恩人が犬好きだとは思わなかったよ。モテモテだよ、ギルちゃん。

「うん、見つけたらね。きっとそろそろ私を見つけて戻ってくると思うんだけど」

 そう言った途端、外が騒がしくなった。

 きっと、ギルちゃんだ。お腹も見事にチャージし終わったし、ちょっくら回収しに行こう。


 ……と思っていた時期もありました。

 っていうか、なんで、村が攻撃されてるんですか!? マジで!?

「嘘っ!? この村にも来たって言うの?」

「知ってるの、カレン?」

 私の部屋からそっと覗くように外の様子を確認する。

 どうやら、村の門の所に巨大な何かがある。いや、あれは……。

「うん、前にうちの宿でご飯食べていった行商人さんが言ってたの。小さな村を狙って、盗賊が暴れているって。うちの村ってかなり奥まったところにあるし、それほど裕福な村でもないから大丈夫だって思ってたんだけど……」

「なるほど、それなのに、こんな状況になったってことね」

 見れば、村の道が盗賊たちが放ったと思われる攻撃によって、ぼっこぼこに穴をあけられていた。

 もし、これが家の方に当たったら、火事になってしまうか、下手したら崩壊してしまうかもしれない。

 もう一度、門の方を見て、私はうんと頷き、立ち上がった。

「ちょ、ちょっと、今、立ち上がったら危ないよ!」

「うん、平気。これくらいならどうってことないし」

 にこっと笑って、私は続けた。

「それに美味しいご飯も貰ったし、その分は働かないとね」

 そういって、止めようとするカレンの手を振りほどいて、村の門へと向かったのだった。


 いやあ、本当に派手な攻撃をすること。

 村人達、凄い怖がってるよ、もう。

 私の目の前には、盗賊達が乗る『機獣』が見える。

 機獣というのは、巨大な動物を模した機械仕掛けの兵器だ。

 かなり前にこれと似た高性能な兵器を模して、開発されて作られたのがこれ。

 変形機構がない代わりに、動物特有の特性を兼ね備えている。

 熊の形をしているからパワー型で間違いないだろうし、おまけに砲弾ありか。

 人の5倍の大きさだから、まあ、普通の人なら泣いて逃げちゃうレベルだよね。

 そんな熊さんタイプの機獣が6体に……なんだか見慣れない機体がひとつ紛れ込んでる。

 ちょっと要注意かな。

「こんにちはー」

「……じゃねえだろ!? わかってるのか、お前の村は襲われてるんだぞ?」

 私は笑顔を崩さず続ける。

「残念ながら、ここは私の村じゃないわ」

「ほう、なら壊してもいいんだな?」

「でもね……」

 私はきゅっと瞳を細めて、笑みを深める。

「私の命を助けてくれた人がいる村を壊すというのなら、私も容赦しないわ」

「あん? ただの小娘に何ができる……」

 私はそっと指で簡単な魔方陣を描き出す。簡単とはいってるけど、普通の人ならかなりの時間を有するものだ。ふわりと私の赤い髪が揺れる。

「ブラッディフレイム」

 その魔方陣から凄まじい勢いで赤黒い炎が、1体の熊機獣を焦がした。

 まあ、この程度なら、中の人はまだ生きてるかな?

「やりやがったな、このアマ!!」

 2体の熊機獣がこっちに向かってきた。

「術式展開、βαを接続、承認! 轟け、ライトニングスプレッド!!」

 たくさんの稲光が2体の、いや、その後ろの数体も巻き込んで、ビリビリさせてる。

 わかってる、これだけじゃ、機獣は壊せない。倒せない。

 走って敵の攻撃を躱しながら、次の術式を展開させていく。

 これでもダメだったら、ちょっと私だけじゃ無理かも。

 走りながら、落とした術式5つを同時に起動。

「女神アーラメイアに捧ぐ、術式展開、空間固定、Ωα接続、承認……ダイヤモンドコフィン!!」

 5つの魔方陣から、青いダイヤのような氷の槍が、つぎつぎと突き刺さる。

 目標は盗賊の機獣全部。ついでに後ろにいる怪しいやつにもあたって欲しいところだけど……。

 煙が消えた後、私は思わず唇を噛んだ。

 数体は行動不能に陥れたけれど、他は無傷だ。というのも、熊型にしては大型で異質な色のボディをしている機獣が……いや、たぶん、あれは機獣じゃない。

「小娘の割には、よくやったと誉めてやろう。だが、俺のこのシャドウベアに敵う奴はいない」

 がしゃがしゃがしゃんと、見事に変形して人型になった。

 そう、これが機獣の元になった、『獣機神』。

 相手がそれを持ってるとは思わなかったよ。これじゃあ、降参だよ。


 そのときだった。

 村の影から何かが駆け出し、熊の獣機神に体当たりをかましてきた。

「おわっ!?」

 バランスを崩しそうになっている盗賊には目もくれず、攻撃してくれたのに視線を移す。

「お帰り、ギルちゃん」

『お帰りじゃないだろ? また面倒なことに巻き込まれやがって』

 大きさは犬っぽいけど、本当は小型の獅子の姿をしている。

 牙だって爪だって、そこら辺のモンスター相手では歯が立たないくらいなのだ。

 それが、私と一緒に入てくれる相棒、ギルちゃんだ。

「でもこれで、すっごく助かっちゃった」

『なんだ、やらかすには条件があるってこと分かってるんだろうな?』

 ギルちゃんは、ちょっと意地悪だ。でも、今回はその条件は満たしてる。

「もっちろんだよ。この村の人に助けてもらったもの。美味しいご飯貰っちゃった。だから、恩返ししないとね」

『なるほど、了解した』

 ギルちゃんから盗賊達へと向き直る。

「はん、その犬が加わったって、結局は一緒だろ? さっさとくたばりやがれ!!」

 熊の獣機神が左腕にあるガトリング砲をぶっ放した。

 だけど、私とギルちゃんが来たからには、そんなの通用しない。

『フィールド情報入力固定、シールドバリア展開』

 ギルちゃんが展開してくれるバリアは、そんじょそこらの武器じゃ、歯が立ちませんよーだ。ふっふっふ。

「なにっ!?」

 さて、もう一つ驚いてもらっちゃいましょうか。

「これを機に見かけで判断しない事ね。私、こう見えて大人の女性なんだから」

 ぽんとギルちゃんの頭に手を乗せ、起動コードを発動させる。

 ギルちゃんの足もとから、幾重にも重なる魔方陣が、徐々にその大きさを増していく。

「それともう一つ、私は嬢ちゃんじゃないわ。プリミエール。それが私の名前。覚えておいてね?」

 そして、ギルちゃんの大きさも徐々に巨大化していく。

 囁くようにギルちゃんの耳元で、私は、最後の『キィ』を入力した。

「目覚めなさい、ギルバッシュ」

 さらに巨大化したギルちゃん、うううん、ギルバッシュが変形を開始する。

 そう、私のギルちゃんもとい、ギルバッシュは、高性能な獣機神だ。

 高性能すぎて、星を滅ぼすほどの力を持ち合わせている。

 けどまあ、今はいろいろあって、その力のほんの少ししか出せなくなってるんだけどね。

 まあ、それはそれ。

 ギルバッシュの手の上にすっと乗ると。

「さて、始めましょうか」

 すうっと私の体もギルバッシュに溶け込むように入り込んだ。


挿絵(By みてみん)


「んーっ!! この体も久しぶりっ!!」

 大きく伸びをして、懐かしい感触を確かめる。

 長い手足に、伸びた背丈。豊満な胸、お帰り! スタイル抜群の私、お帰り!

 そんな私の両手両足には幾重にも巻かれた鎖で繋がれている。

 つながっている先は、もちろん、ギルバッシュ。

 どうしてこうなったかは、まあ、長い話になるから割愛するということで。

『で、どうするよ、エル?』

「そんなの決まってるでしょ、ど派手に決めましょ。それにああいうの見ると、昔の嫌な自分と重なって、スッゲエ、イライラすんのよね。ほら、高度術式展開してエネルギー注入するから、とっととやっちゃって」

 しゃらんと鎖の音を鳴らして、私はオイタの激しい盗賊団に目を向けた。


 こ、こんにちは。カレンです。

 えっと、その、目の前で立て続けに起きたことが、本当、信じられない。

 盗賊に襲われたと思ったら、あの子、えっとプリミエールっていったっけ?

 行き倒れてた子が、盗賊と渡り合うなんて、誰が予想した?

 あれって、魔術師だよね。はるか昔に絶えたって聞いてたけど、凄い!

 魔術って、あんなに凄いんだね!

 でも、それでもやっぱり神様の御使いである機獣に獣機神には歯が立たなくって……。

 と思ってたら、今度はプリミエールちゃんも獣機神を呼び出して、爪と牙とで、あっという間に盗賊達をやっつけちゃったの!!

 本当に凄いっ!!

 で、今は生きてる盗賊を縛り上げて……プリミエールちゃん、物凄くイイ顔してる。

 うん、グッジョブ。

 じゃない。そうじゃなくって!!

「プリミエールちゃん、凄い!!」

「凄くないよ。殆どギルちゃんの力だし。ほらカレンも見てたでしょ? 最初の方、私、かなり押されてたんだから」

「それでも怖がらずに戦えるなんて、凄い凄い!! それにすっごく格好いい!!」

 あたしがそういうと、プリミエールちゃんは、照れたように頬を染めた。

「わ、私は、その、助けてもらったお礼、なんだから……」

 なおも照れてるプリミエールちゃんに、あたしはくすくすと笑って。

「そんなプリミエールちゃん、可愛い」

「そ、そんなこといっても、何にも出ないしっ……そ、それに」

「何?」

「わ、私のことは、リムとかエルとかでいいから。だから、長い名前で呼ばないで」

 こうして、あたし達はプリミエールちゃん、ううん、リムちゃんとギルちゃんと、一緒に暮らすことになるんだけど……でも、今は。

「じゃあ、リムちゃんもギルちゃんも、お祝いしよー!」

「「おおおおおーーっ!!」」

 リムちゃんもギルちゃんも知らないだろう。

 あたし達の村では、いつでもお祭りをしたいってことに。

 ことあるごとにお祭りして盛り上がるのが大好きだってことに。

 それに、この村の救世主であるリムちゃんとギルちゃんには、めいっぱい歓迎してあげないと!!



 追伸。

 このお祭りが一週間だけでなく、1か月も続いたことに驚愕。

                           by プリミエール


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