取り扱い説明書
製品注意: ツンしかありません。デレを見ることはとても稀です。
取り扱い: 以下の通り。
彼はツンしかない。
ツンデレのツンのみ。
それでも…わたしのすることが、全部ダメなわけじゃないみたい。
手をつないでみたら、ふりほどかれない。
腕にもしがみついてみた。これも拒否されなかった。
「ねえ。手をつなぐのと、腕を絡めるのと、どっちがいい?」
「どっちも嫌」
「なんで?」
「歩きにくい」
相変わらず返事はツン。
前は、それで諦めていたけれど、これではいけないと思ってわたしが変わることにした。
「じゃあ、わたしが好きなほうにするね」
返事はない。
それでも手をつないでも振りほどかないし、腕を絡めても大丈夫。
思い切って指を一本ずつ絡めて恋人つなぎにしたけれど、それも大丈夫だった。
自分からはしてくれないけど。
「アイスクリーム食べる?」
「食べない」
自分の分だけ買って…そして一口食べる。
「おいしいっ!」
そう言ってから「食べてみる?」と差し出せば、彼は味見するように一口食べた。
恐る恐るカップのアイスも買ってみた。
「食べる?」
「食べない」
でも、「おいしいよ?」って言って、スプーンで差し出せば、彼は食べた。
これって「あーん」ってやつだよね?
声に出さずに、心の中で「あーん」って言ってスプーンを差し出せば、彼は大人しく口を開けて食べる。
「おいしい?」
「別に」
でも、わたしの手から食べてくれるの。
なんか…幸せって思っても…いいかな?
足早に歩く彼に置いていかれそうになって「待って」と言えば
「ちんたらしているなら置いていく」
そう言われた。
慌てて手を掴めば、前よりゆっくり歩いてくれる。
うん。少しだけ…彼のデレを見る方法が分かってきたかも。
彼はツンデレのツンしかない。
…と思われているけれど…。
実は一杯デレがあるの。
わたししか知らないデレに幸せになる。
きっと…ずっと…好き。
End




