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第2話 時空魔法


 さっそく魔力にEPを振ってみる。


「まずは1EP……ん?」


 1EPだけ振ったら魔力が0から18に上がった。超上がりやすいはずの紫表示だから期待はしていたが、筋力と比べて上がり過ぎじゃないか……?

 赤と紫との差に驚いたが、あとはどこまで数値が上がるか試してみよう。


 そんなわけでEPを振り続けた結果、魔力の数値は500になった所で停止した。ということは、これが今の上限か……。


 EPによるステータス強化には上限がある。

 この上限というのは資質とレベルに依存しており、魔力を500から更に上げるにはレベルを上げる必要があるようだ。


 色々弄って身体ステータスの感じが掴めたので、今度は各種スキルのほうを見てみよう。このスキルというのがまた種類が多く、どれを取るべきか悩んでしまう。身体系、精神系、魔術系、その他もろもろ。


 俺が表示されたスキルを見て悩んでいる間、ダンジョンコアは何も言わずに黙っていた。いつまで迷っていても仕方がない、ダンジョンコアに聞いてみよう。


「色々ありすぎて迷うんだが、何かアドバイスしてくれるかな?」

〈私に助言を求めたのは賢明です。あなたのステータスから判断する限り、魔力を伸ばして魔術系を選択するべきです〉

「やっぱりそうなんだな……。魔術系以外も取得したいけど、EPが限られてるからな……」

〈まずは属性取得をおすすめします。属性を得ることによって、その属性の基礎魔法も取得できます〉

「ちなみに、属性を取得しないとどうなるんだ?」

〈その場合、魔力があっても魔法は使えません〉


 そりゃ確かに属性取得は必須だな。地水火風、光闇……。やばい、全部取得するにはEPが全然足りない。


 時空属性なんてのもある。

 取得に必要なのは……280EP。高っ! 他のは70EP~150EPで取得できるのだが、時空属性は一際高かった。


 ……決めた、やはり属性を取ることにしよう。属性を取れば基礎魔法がついてくるのでお得感がある。あとは魔力に少し振ろう。筋力等に残りを振ってもさほど効果はなさそうだし。


 悩んだ結果、俺は時空属性を取得し、魔力に10EPだけ振った。これで魔力は180になり、EPは残り110となった。残ったEPは時空魔法の使い勝手を確かめて、改めて割り振りを考えよう。


 というわけで時空属性の取得を完了したわけだが、これで本当に魔力という謎エネルギーが俺の体に宿ったのだろうか。右手を前に突き出し、集まれ魔力と念じてみる。


 集まれ……集まれ……!


 あ、段々と何かが腕の先に集まってきた気がする。この魔力らしきもの、たとえば炎に変えられないだろうか。さっきダンジョンコアから得た情報によると、対応する属性を取得しなければ無理らしいが。


 一応確認しておこう。

 前に突き出していた右手を一旦引き戻し、炎をイメージしつつ、再び突き出して叫ぶ。


「ファイヤー!」


 む……。やはりなにも起きないな。


〈先程も説明しましたが、火属性を持たないとその魔法は使えません。あなたが取得したのは時空属性です〉

「時空的ファイヤー!」

〈そのような魔法はありません〉


 う……えらく冷静に否定されてしまった。

 だが確かに、魔法はイメージだけで使えるものではないと理解した。

 というわけで、ここは素直に時空魔法を試してみよう。


 時空属性取得により使えるようになった魔法は、『ゲート』『コネクト』『グラビティ』『クイック』の4つ。

 それら取得した魔法の効果は以下のようなものだ。


 ゲート……刻印によりゲートを作成する。任意のゲート間はコネクトで空間的に接続される。作成されるゲートの大きさはレベルに依存する。


 コネクト……ゲート間の空間を接続する。接続の維持には継続的に魔力を使用する。消費魔力は熟練度に依存する。


 グラビティ……対象に掛かる重力を増やす。重力の大きさは熟練度に依存する。持続時間はレベルに依存する。


 クイック……対象の固有時間を加速する。加速率は熟練度に依存する。持続時間はレベルに依存する。


 おお、時間操作ッ!

 どうやらクイックは時間を加速する方向にしか使えないようだが、いずれは対象の時間を停止させる魔法とかも得られるのだろうか?


 グラビティ、これは重力操作の魔法だが、もし重力を百倍とかにできるならその威力は恐ろしく凶悪だろう。


 ゲート……は移動に使えるのか? コネクトとセットで使う必要があるらしい。


「結構良さそうだな……。時空属性を選んだのは正解だったかな?」

〈時空属性はレアな属性です。内容的にも取得は良い選択だったと思われます〉

「レアな属性……取得できる奴は少ないってことか?」

〈はい。適性がなければ取得不可能です。属性取得の条件の一つとして、その属性に対する理解を一定以上有していることが挙げられます〉

「なるほど、属性への理解か。火属性なら火、水属性なら水への理解が必要になるわけだ。すると時空属性がレアな理由は……」

〈召喚モンスターはもちろん、この世界の人間の多くも時空に関する理解が深くありません。そのため時空属性はレアな属性となっているようです〉


 なるほど。それなら俺が時空属性への適性を得られているのは、舌出し写真で有名な物理学の先生のおかげかもしれない。

 さすがに数式なんかはさっぱりだが、非常にざっくりとした時空への理解ならある。


 というのも実は、ちょっとだけお値段の高い科学や宇宙の情報誌、月刊ムートンをよく買って読んでいたからだ。

 そう、月刊ムートンである。間違ってもそこから『トン』を外してはならない。万が一『トン』を外したら、水晶ドクロから世界の終わりを告げられるだろう。


 その月刊ムートンだが、多くの写真やイラストを掲載し、難解な情報でもわかりやすく解説してくれる素晴らしい情報誌だった。

 中でも舌出し先生の相対性な理論については、手をかえ品をかえ、これでもかとばかりに時間と空間の謎について特集してくれたものである。


 しかしそうか……そんなにレアな属性だったか。そうなると我が必殺の時空魔法を試したくなるな。握った手にぐっと力が入る。これはさっき俺の心臓をバクつかせてくれたゴブリンに、ギャフンと言わせられるかも。


「時空魔法を使ってみたいんだが、さっきのゴブリンで試せるかな?」

〈問題ありません。ゴブリンDを呼びます〉


 ふふふ……。さっきはよくもビビらせてくれたな……我が時空魔法に驚愕するがいい! ゴブリンが慌てふためく姿を想像しながら待っていると、ほどなくして奴がやってきた。


「ゴブッ」


 うっ……! こいつ入ってくるなり俺を睨みやがった。

 な、舐めるなよ! 俺はもはや無力な俺ではない!

 ゴブリンの顔をギロッと睨み返す。

 すると目を血走らせたゴブリンが俺に顔を寄せ、大きく吠えた。


「ゴブリャ!!」


 こわっ! ゴブリンこわっ!

 睨み負けた俺はスッと目を横に逸らす。


「ゴブブブッ!」


 くっ、ゴブリンの奴いやらしく笑ってやがる! 許せん! 俺は少し後ずさり、右手を上げてゴブリンに向けた。ゴブリンが警戒するような目つきになったがもう遅い。

 さあ喰らうがいい!


「グラビティ!」


 呪文とともに開いていた手の平をぐっと握りこむ。ゴブリンを握り潰すかのごとく気迫をこめて、必殺の魔法が発動する!


「ゴブッ?」


 ……あれ?


 今ゴブリンはグラビティの効果で重力が増加し、体の重さが増えているはず。それなのに何事もなかったように佇んでいる。

 いや、多少は異変を感じてるのか? 不思議そうに腕を上げ下げしているが……。


〈ゴブリンD、もう持ち場に戻りなさい〉

「ゴブ……?」


 時間がきてグラビティの効果が切れたゴブリンは、不思議そうに首を傾げながら広間から出ていった。


「た、たいして効かないだと……なぜだグラビティ……」


 俺はがくりと膝をつく。

 魔法は間違いなく発動した。ステータスで確認すると確かにMPが減っている。


〈先程の魔法を分析しましたが、ゴブリンの重さが5%ほど増えていたようですね〉


 嘘だろ……5%? そ……そんなに少しだけ?


〈今はまだ戦闘での効果が期待できないようですが、熟練度が低いうちは仕方がありません〉


 熟練度? そうか、威力は熟練度に依存するとあった。

 つまりこれからの鍛練しだいでは、奴を床にはいつくばらせることも可能ってことか。

 よし……待っていよ!


「ククク……ゴブリンめ。今日のところは勘弁しといてやる」

〈…………〉


 そうとわかれば早速魔法の特訓だ。とにかく回数撃てば熟練度も上がるはず。


「グラビティ! グラビティ!」


 広間の壁に向かってグラビティを連発する。


「グラビティ! グラビティ!」

〈練習するのはよいですが、ほどほどにしないと……〉


 あれ? なんか集中できなくなってきた……。

 俺は何やってるんだっけ? 手をニギニギしながら何かを連呼していた気がする。何て言ってたんだっけ?


 ああ……手をニギニギして連呼すると言ったら、アレだな……。


「おっぱい! おっぱい!」

〈……〉


「おっぱい! おっぱい!」

〈…………〉



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