~喪失~
私はすべて失ってしまったのだ。
手に入らないと知りながら、そのすべてを欲したがために失ってしまった。
いや、一度は手に入ったのだ。
どんなに恋焦がれても手に入らなかったあの女。
あの女と話をしてみたい。
あの女と触れ合っていたい。
あの女と一生添い遂げたい。
叶わぬと知りつつも、そのことばかりを考え、願い続けていた。
だから、願いが叶った瞬間は、神の存在を確信したほどであった。
あの女が私の目の前にいる。
あの女が私と話をしている。
あの女が私の手を握っている。
夢かもしれない、幻かもしれないと言うと、夢でも幻でもありません、と言ってあの女は私の手に触れたのだ。
私はあの女を手に入れたのだ。まさに奇跡だった。
そう奇跡なのだ。奇跡とか長続きしないものなのだ。
私はあの女との生活が悠久に続くものと思っていた。
しかし、そうではなかったのだ。
あの女に会いたいという私の膨れ上がった情念は、あの女を手に入れたことでさらに膨張し、やがて破裂した。
世界は壊れ、あの愛しい女は、悠久の世界に飲み込まれていった。私を置いて……。
その私も、今はあの女がいるだろう悠久の世界にいる。
那由多の世界。
物語と物語を繋ぐ世界。
あの女は、この世界のどこかにいる。
そう確信した私は、物語をかき乱し、壊していく。かつて私の物語がそうなったように。
やがてすべての物語がなくなり、何もなくなった世界なら、あの女を捜すことも容易であろう。
なに、時間なら豊富にある。
私の名前はザイ。
那由多の世界群の中で悠久の生命を刻む存在。




