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妄想ファンタジスタ  作者: 弥生遼
インターミッションⅢ
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~喪失~

 私はすべて失ってしまったのだ。

 手に入らないと知りながら、そのすべてを欲したがために失ってしまった。

 いや、一度は手に入ったのだ。

 どんなに恋焦がれても手に入らなかったあの(ひと)


 あの(ひと)と話をしてみたい。

 あの(ひと)と触れ合っていたい。

 あの(ひと)と一生添い遂げたい。


 叶わぬと知りつつも、そのことばかりを考え、願い続けていた。

 だから、願いが叶った瞬間は、神の存在を確信したほどであった。


 あの(ひと)が私の目の前にいる。

 あの(ひと)が私と話をしている。

 あの(ひと)が私の手を握っている。


 夢かもしれない、幻かもしれないと言うと、夢でも幻でもありません、と言ってあの(ひと)は私の手に触れたのだ。

 私はあの(ひと)を手に入れたのだ。まさに奇跡だった。

 そう奇跡なのだ。奇跡とか長続きしないものなのだ。

 私はあの(ひと)との生活が悠久に続くものと思っていた。

 しかし、そうではなかったのだ。

 あの(ひと)に会いたいという私の膨れ上がった情念は、あの(ひと)を手に入れたことでさらに膨張し、やがて破裂した。

 世界は壊れ、あの愛しい(ひと)は、悠久の世界に飲み込まれていった。私を置いて……。

 

 その私も、今はあの(ひと)がいるだろう悠久の世界にいる。

 那由多の世界。

 物語と物語を繋ぐ世界。

 あの(ひと)は、この世界のどこかにいる。

 そう確信した私は、物語をかき乱し、壊していく。かつて私の物語がそうなったように。

 やがてすべての物語がなくなり、何もなくなった世界なら、あの(ひと)を捜すことも容易であろう。

 なに、時間なら豊富にある。


 私の名前はザイ。

 那由多の世界群の中で悠久の生命を刻む存在。

 

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