~軍師独白~
「で、あの禿は、まだ出てこないの?」
「うむ。あっちの世界から帰ってこられたと、すぐに魔王の間に篭ってしまって、中にも入れてもらえんのだ」
「まぁ、禿の気持ちも分かるけどね」
「これ、サリィ。口が過ぎよう。デスターク・エビルフェイズ様に対して禿とはなんだ、禿とは」
「だって、本当に禿だったんだもん。ぷぷ、今思い出しても笑っちゃうわ」
「それよ、それ。どうしてデスターク・エビルフェイズ様は、あちらの世界に行くと人間の姿になるのだ?しかも、よりにもよって禿とか……」
「知らないわよ。あっちの世界じゃ、人間しか存在できないからじゃない?」
「なるほど……。しかし、そうだとしても、妙な話だ。魔法を使えないはずのカノンが魔法を使える。しかも、デスターク・エビルフェイズ様を一撃でぶっ飛ばしてしまった。ふうむ、一体どうなっているのだ?」
「カノンの魔法?ああ、それなら、あの少年のせいよ」
「少年?」
「そうそう。なんか、こう、少年が光るボタンを一杯出して、それを叩くと文字が現れて、カノンが魔法を使えるようになるの」
「光るボタン?叩くと文字?」
「ふわぁ、眠たい。ねぇ、リンド。寝ていい?」
「そういえば、あの預言者も、同じようなことをしているのを垣間見たぞ。うむ、その少年といい、預言者といい、どうにも怪しい」
「じゃあ、私寝るし。おやすみ~」
「うむむむ。これは一度調査の必要があるか……。ん、サリィ、どこへ行く?引き続きあっちの世界で調査を……。うむむむむむ、仕方がない。この私、魔王軍の軍師こと、リンド・バオルムが出るしかないか……」
 




