第一回これからどうするよ会議~会議の結末~
などと思っていると、制服の下から現れたのは、なんと体操服。しかもブルマだ。
「じゃ~ん。驚きました?ふふ」
「べ、別に驚くもんか」
「素直じゃないですね。シュンスケ君なら、これも脱いでもいいんですけど、カノンちゃんが怖い顔をしているので、やめておきましょう」
上着の裾に手をかけていたイルシーが首を竦めた。気にせず続けてくれても僕的には大丈夫なのだが、確かにカノンが怖い顔をしている。やめておいた方がいいだろう。どうも彼女はスケベなことが嫌いらしい。
「はい。これはカノンちゃんにです」
イルシーは、脱いだ制服を綺麗に畳んでカノンに手渡した。
「えっ?これを私に?」
「そうですよ。カノンちゃんは、明日からシュンスケ君の通っている学校に転校することになったんですから」
そうだ。すっかり忘れていた。
「どうしてそんなことになっているのよ……」
じろっとカノンを睨み付けるカノン。僕はさっと目を逸らす。
「こらっ!答えろよ」
「まぁまぁ、カノンちゃん。傍にシュンスケ君がいることで、魔法が使えるようになるんですから」
イルシーが宥め、渋々と言って感じで制服を受け取るカノン。
「それと、シュンスケ君。モキボの出番ですよ」
「モキボ?」
「そうです。カノンちゃんは、明日高校に行って授業を受けるんですよ。ある程度の学力は必要ですよ」
ああそういうことか。なかなか考えているな、イルシー。異世界から来たキャラクターが現代日本でドタバタを繰り広げるベタな展開はこれで回避できる。
僕はモキボを出現させ、
【カノンが高校二年生相応の学力と、現代日本における一般的な知識を得た】
と入力した。
一瞬、カノンは目を大きく数度瞬きしただけで、特に大きな変化はなさそうだ。
「どうだ?」
「うん?別に……」
「何か質問をして見ましょうよ、シュンスケ君」
「そうだな。永禄三年に織田信長が今川義元を破った戦いは?」
「桶狭間の戦い」
「今の日本の総理大臣は?」
「小野田総理」
「この携帯電話で天気予報のサイトを開いてみろ」
僕は携帯電話をカノンに渡す。昨日の様子とは打って変わって、てきぱきと操作し、天気予報サイトの画面を僕とイルシーに見せた。
「最後だ。次の英文を和訳せよ。『My breast is very small』」
「『私の胸はとても小さいです』って何を言わせるのよ!」
カノンの空手チョップが炸裂した。失神しそうになるほど痛かったが、ともかくも『創界の言霊』は効果を発揮している。成功だ。
「これでなんとかカノンちゃんも、素敵なスクールライフを楽しめますね。じゃあ、お姉さんは安心して帰ります」
うんうんと頷き、文字通り消えるように帰っていったイルシー。あいつはずっと一緒にいるわけではないから安心していられるが、カノンの生活全般を見なければならない僕としてはまだ不安が残る。確かに知識の相違から来るトラブルはないだろうが……。
「学校かぁ……」
目を輝かせているカノン。それを見ていると、やっぱり学校行くのをやめろ、とは言い出せなかった。




