第六話
お久しぶりです。
こんな小説を読んでくださっている方がいらっしゃるかはわかりませんが、ありがとうございます!
あの後、俺は姫さんことセフィリアと隊長さんことアリーシャの追及を受けることになった。
召喚されたばかりで実力が未知数だったこともあり、防具を固めさせて安全を確保した上でアリーシャが徒手空拳にて俺の実力を測る、というのが本来の目的だったようだ。
手加減していたとはいえ隊長であるアリーシャに一撃を入れたこと、そしてその一撃を与えた武器が武器と呼べない装飾用の剣であったこと、
その他いろいろと突っ込みどころが多かったようで美少女と美女から質問攻めにあうことになった、というわけだ。
「いや、だから何度も言ってるだろ。胴体の防具が一番固そうだったから胴体を狙ったんだって」
迫りくる美少女と美女の顔から逃れるように後ろに下がって行きながら答える俺。
「だったらあんたは何者なんだい!?ただの魔族があたしに攻撃を当てられるわけがない!」
ずいとさらに詰め寄り、右手で俺の胸ぐらを掴む美女、もといアリーシャ。
胸ぐらを掴まれてそれ以上逃げられなくなる。
「これも何度も言ってることだけど、姫さんに喚ばれてきたただの異世界の魔族だって。元の世界でほんのちょっと訓練をしてただけだから」
軽く肩をすくめ両手を軽く上げて見せるも、信じられないと言わんばかりの目つきで見つめられる。
いや、これはもう睨まれているといってもいいかもしれない。
膠着状態になった俺たちに口をはさんだのは美少女、もといセフィリアだった。
「アリーシャさん、ヨウさまのお言葉を信じませんか?」
言葉だけを取れば質問や提案のように読めるが、声には肯定以外を拒絶した威圧が含まれている。
アリーシャは微かに体を震わせるとすぐさま俺から手を離し、地面に片膝を付いてセフィリアに頭を下げた。
「っ…申し訳ございません!」
「皇族ってのはすごいな」
感嘆したように俺はセフィリアに声をかける。
アリーシャは頭を下げたまま微かに震えている。
血か、契約か、もしくは違う何かか。
魔族を名乗っているんだ。
上位者には逆らえない、もしくは逆らいづらい制限でもあるのだろう。
「ヨウさまは平気なのですね」
セフィリアは驚いたような表情で俺を見つめてくる。
「もしかしたらアリーシャに向かって言ったからじゃないか?ちょっと俺に向かってやってみてくれよ」
片手を伸ばしてセフィリアの顎に指先を当て、目線を合わせながら笑みを浮かべる。
一瞬身を固くしたセフィリアだったが、俺の眼をまっすぐに見返してきた。
「ヨウさま、手を離してくださいませんか?」
言葉は依頼の形式になっているが、その実、声には先程以上に威圧感が込められている。
セフィリアの声に込められた威圧の意味を理解しているが、だからと言ってアリーシャのように跪くような気持ちにはならない。
「あーっと…セフィリア、すまないんだが俺には効き目がないみたいだ」
セフィリアの顎から指先を離し、そのまま自らの頭を掻きながら苦笑するしかない俺。
呆気にとられた表情のセフィリアとアリーシャから向けられる視線がとても痛い。