第五話
開いていただきありがとうございます。
「ほらほら、どうしたぁ!あんたの力はそんなもんかい!?」
アリーシャの猛攻をしのぐので精いっぱいの俺に挑発が投げられる。
こちらは剣一本
対するアリーシャは無手。
変則鎧のためか動きを阻害されているそぶりは全くない。
一応歩兵用と言われる全身鎧を着けさせられているからダメージというダメージはない。
だが視界が狭く、重い鎧は邪魔なだけだ。
「だー!こんなもん着て動けるか!!」
俺の腹部めがけて真っ直ぐ繰り出された蹴りを剣の腹で受け、振り切るようにしてアリーシャを投げ飛ばす。
間合いが空いた隙に兜を脱ぎ棄てる。
「ちょっと待っとけ!」
兜を脱ぎ棄てた俺を見て驚いたような表情をしているアリーシャに言葉を叩きつけると、次々に鎧を外していく。
滑り止めを兼ねた小手のみを残し、俺は中庭に連れてきてもらったときの服装に戻る。
「なっ、あんた何を…」
何事かを訴えているアリーシャを無視し、入口の方へと足を向ける。
跳びあがり、入口の上に掲げられていた長剣を取る。
掲げられていた長剣は長さ、重さはともに刀に近いものであったが、やはり模造品らしく重さのバランスが悪く、刃が存在しない。
「ま、この際文句も言ってられないか」
何度か素振りし、手にした長剣の感覚を掴む。
「行くぞ、隊長さん」
「…ああ、来い!」
一瞬の間ののち、アリーシャは構えを取る。
構えを取ったのを確認した俺は長剣を肩に担ぐように振りかぶり、アリーシャに向かって駆け出す。
何も考えていないかのように、俺は一直線に疾走する。
アリーシャはというと、何を考えたのか構えを取ったその場に留まっている。
「駆け抜けろ!切り刻めっ!」
叫びと共に一際強く踏み込み、アリーシャに肉迫する。
そのままの勢いを載せた袈裟斬りを起点とし、右腕一本で乱撃を放つ。
乱撃と言っても真ん中と左右、上中下段の九種を絶え間なく繋げるだけなのだが。
アリーシャは八種の斬撃までは手足につけた手甲、足甲により防いでいた。
いや、俺が防がせていた。
「この程度っ…!」
「はっ、口開けてると舌噛むぜ!」
八種の斬撃を防いだと思い込んでいるアリーシャに警告を発し、彼女の胴部にある防具のもっとも硬いところを見極める。
そして見極めた防具のもっとも硬い箇所に刺突を繰り出す。
八種の斬撃より速い突きは寸分の狙い違わずアリーシャの胴部を守る防具、そのもっとも硬いところに当たり、彼女の体を吹き飛ばす。
「こんなもんでいいか、隊長さん?」
重くバランスの悪い長剣を軽々と肩に担ぎあげ、仰向けに寝転がり地面に背中を付けているアリーシャの元へと歩く。
仰向けに倒れたままのアリーシャを不思議に思い顔を覗き込むと呆然としたような表情になっていた。
「隊長さん?」
肩に担いだ長剣を地面に突き刺すように下ろし、再度アリーシャに呼びかける。
俺の声に我に返ったのかアリーシャは飛び起きるように上体を起こして俺を見上げてきた。
「あんた、何者だ?」
上体は起こしたものの未だ地面の上に座っているアリーシャに、俺は苦笑しながら右手を差し出す。
「姫さんに喚ばれてきたただの異世界人さ。」
差し出した手をアリーシャが握ってくれたので俺は彼女を引き起こす。
アリーシャの顔には納得できない書いてあった。
戦闘描写が難しいです。