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第二話

携帯電話の電源を切り、ショルダーバッグの奥に埋めたところで扉がノックされる。

返事と同時に扉が開き、先ほどの少女が入ってきた。


「お待たせいたしました、勇者さま」


入ってきた少女がスカートを摘み上げ、優雅に頭を下げる。

西洋の中世時代が舞台のアニメで貴族令嬢がやっていた挨拶に見える。


「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。遅ればせながら自己紹介をさせていただきます。」


少女は頭をあげこちらを見てくる。

どう返したものかわからなかったので、見返すことしかできなかった。


「私(わたくし)の名前はセフィリア・スクシ・アークラルド。アークラルド皇国の第四皇女です。」


少女の自己紹介を聞き、俺はああ、やっぱり、としか思わなかった。

召喚を行うのは王女が定番。

先入観に加え、少女の言葉づかいや立ち居振る舞いからしてそうじゃないかとは思っていたのだ。


「本来であれば王である父が勇者さまにご挨拶せねばならぬところ。私のような若輩者が代わりにご挨拶させていただくことになり、申し訳ございません」


申し訳なさそうな顔で謝罪の言葉を口にされる。


「あ、ああ。…っと、王様には俺から謁見をするんじゃないのか?」


俺の問いに第四皇女は勢いよく首を横に振る。


「いえ、私たちの世界を救っていただく勇者さまに、王への謁見などしていただくわけにはまいりません。王が勇者さまへ頭を下げることこそありますれど、勇者さまが王へ頭を下げることなどありません。」


強く否定する第四皇女に俺は好感を抱く。

今まで読んだ小説でも、遊んだゲームでも、王様というのはかしずかれて当然、という雰囲気があった。

俺はそれがあまり好きではなかった。

自分の世界の問題を他の世界の人間に解決させるのに、依頼主が偉そうというのが個人的にはとても納得できなかったのだから。

だが、想像上の出来事と現実ではやはり違うようだ。


「そうなのか。あ、俺も自己紹介をしておくよ。名前は時坂陽。こっち風に言えばヨウ・トキサカ、かな。どれくらいの付き合いになるかわからないけどよろしくお願いするよ」


「勇者さまのお名前はヨウ・トキサカさまとおっしゃるのですね。こちらこそよろしくお願い致します」


第四皇女セフィリアは笑みを浮かべて軽くうなずいた後、俺に対し深々と頭を下げる。

その姿を見た俺は、ふと昔読んだ小説の内容が頭に浮かんだ。

その小説とは、俺と同じように異世界に召喚された主人公が聖剣という名の枷を付けられ、王家の言うがままに働かされる、というものだ。

小説という想像上の物語のことではあるが、俺は緩みかけた気を内心できっちりと引き締める。

召喚されたということは、魔法かそれに類する力があるのだろう。

物質に作用する力があるのはわかったが、精神に作用する力がないとは限らない。

いくら気を引き締めたところで無駄かもしれないが、やらないよりはマシだろう。


「それで、救ってくれって言ってたことの説明をしてくれないか?」


セフィリアが頭を上げるのを待ってから俺は声をかける。

いままでと変わりない様子になるよう努めて心がけた。

そのおかげか、セフィリアは俺を疑うようなそぶりも見せず、顔に浮かんでいた笑みが一瞬のうちに悲痛なものへと変わった。


「はい、かしこまりましたわ。ご説明させていただきます。ヨウさま、申し訳ありませんが付いてきていただけないでしょうか?」


セフィリアの言葉に黙って首肯すると、置いてきたショルダーバッグを拾い上げる。

セフィリアの方を見ると、セフィリアは悲痛な表情を隠そうとわずかばかりの笑みを浮かべた。

そしてセフィリアに先導され、待たされていた部屋を後にする。

この後にされるだろう現状とはどのようなものかを予想しながら俺は歩く。

予想の斜め上のことが話されるとは、歩いているときには想像だにできなかった。

あんな一話ですがお気に入りに入れてくれた方がいらっしゃるとは思いませんでした。

この場を借りてお礼申し上げます。

本当にありがとうございます!

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