表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

前編

バッドエンドです。

あと読み終わった後、もやもやした気持ちになるかも知れないです。

観客の歓声が響くステージ。

そこで歌うのは二人の女の子だった。

美しく、よく通る声。

二人は『フリージア』という二人組みのアイドルだった。

一人は永井未来ながいみくという。長い金髪をポニーテールにした、明るい女の子だ。その明るさを生かして、バラエティ番組に出ることも多い。

もう一人は神谷凛かみやりんという。ポニーテールの子とは正反対の黒髪でおとなしい雰囲気の女の子だ。どちらかというと歌番組にでたり、モデルとして活躍することが多い。

この二人が組んでいるのは、正反対な見た目、性格の二人を組ませたら売れるだろう、という社長の思いつきだ。

そして社長の思惑はあたった。いまや『フリージア』は大人気のアイドルだ。


―ライブ終了後の楽屋にて―


「ちょっと、どういうことよ、凛!」

未来がすごい形相で凛につめよっていた。

「・・・仕方ないでしょ」

凛は落ち着いた様子で返答する。その声には感情の起伏が全く見られなかった。

「仕方ないってなによ!いきなりアイドルをやめるなんて!いい加減にして!」

もう未来は爆発寸前だった。


ライブ終了後、凛が未来に言ったのだ。『アイドルをやめる』と。

それが未来にとって納得いかなかったのだ。

それも仕方ない。いきなり言われて納得する方がおかしい。

だが未来が納得いかないのはもっと別の理由だった。

凛がアイドルをやめれば『フリージア』は、自分は、どうなるのだと。

当然『フリージア』は解散になる。

そして未来はその後、ソロ活動をやっていける自信がなかった。

だって今、未来が『フリージア』でアイドルをやっていけるのは、ほとんど凛のおかげだった。

番組のオファーが来るのも、ファンレターの数も、何もかも凛のほうが多かった。

だから未来はずっと凛の腰ぎんちゃくのように生きてきた。

でもそれでもよかったのだ。

アイドルが続けられるなら。

それなのに今、凛がやめると言い出したのだ。

許せない。

許せない。

許せない。

許せない。

未来は怒りと絶望に押しつぶされそうだった。


不意に凛が口を開いた。

「・・・とにかく私はやめるから。アイドルなんてつまんないことやってられない。あ、社長に私がやめるって言っておいて」

そう言って、未来を突き飛ばして去ってしまった。

未来はその場に呆然と立ち尽くしていた。

もはや追いかける気力も無かった。

「なんで凛はつまんないなんて言うの?私なんかアイドルになるために死ぬほどの思いをしたのに」

自分で言って自分で情けない気持ちになって、唇をかみ締める。

しばらくその場で思考をめぐらせていた。


ソロ活動はどうやっていけばいいか?

いやその前に凛がやめることを社長にどう伝えようか?


いやいやその前に・・・凛がやめてもいいのか?


ダメだ。

未来はぶんぶん首を横に振る。


長い間二人で一緒にアイドルとしてやってきた。

本当はソロでやれるのがよかったなと思いつつも、凛と一緒にがんばろうと思う気持ちもちょっとずつ増えてきた。

凛のほうは、そんな気持ちは微塵も無かったようだが。


気がつくと未来は走り出していた。

凛をやめさせるわけにはいかない。

引き止めないと。

また一緒にアイドルをやっていくために。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ