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血塗られた大楽刀自  作者: 西季幽司
第一章「容疑者はロミオ」
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嫌われ者のジュリエット③

 感情が高ぶり易い青年のようだ。大楽裕が落ち着くまで、また待たされた。

 ようやく落ち着いた様子だったので、生長が事情聴取を再開する。「外回りに出たというなら、何処の高校に行って、誰と会ったのか、詳しく話して下さい。我々で裏を取ります」

「う・・・むう・・・」裕が呻く。

「事件当時のアリバイがない上に、被害者を恨んでいた。動機もある。あなたが大楽玲さんを殺害したのではありませんか?」

「違う。ま、待ってくれ。言う。言うよ。本当のことを――」

 裕は既に憔悴しきった表情だった。

「学校に行くように指示されたのは本当だ。何故、河村さんが嘘を言うのか分からない。指示はされたんだけど、面倒くさくて・・・喫茶店で時間を潰してサボっていた」

「学校には行っていない」

 裕は証言を翻したものの、河村から学校回りを指示されたという証言を繰り返した。「刑事さん、信じてくれ。河村さんから学校回りをするように指示されて、面倒でついサボっただけなんだ。サボっていたことを知られたくなくて、学校を回っていたと嘘をついた。あの家に行って人なんか殺していない。もう一度、河村さんに確認してくれ。本当だ。た、頼むよ。信じてくれよ~!」

 裕はまるで誰かに連れ去られるのを恐れているかのように、机の端を両手でしっかりと握りながら叫んだ。

「分かりました。後で、もう一度、河村さんに確認してみましょう。ところで、靴のサイズはおいくつですか?」

「靴のサイズ?二十五・五センチだよ」

 犯行現場には被害者の血糊の付いた靴跡が残っていた。そのサイズは二十六・五センチだった。裕は見るからに小柄だ。靴のサイズが犯行現場の下足痕より小さかった。

「そうですか・・・」

「靴のサイズがどうかしたのですか?」

「いや、聞いてみただけです」と生長は誤魔化した。

「そ、そうだ。僕を疑うくらいなら、孝さんの愛人を調べてみたらどうだい? 孝さんの愛人、藤田真衣、知っていますか?」

「ええ、まあ」

 河村から話を聞いたばかりだ。

「彼女、あの女に、『殺してやる』と脅されていたみたいですよ。孝さんから、そう聞きました」

「あの女」とは玲のことだ。

「脅された? ほう~そんなことがあったのですか」

 被害者は問題の多い人物だったようだ。怜は藤田真衣に殺してやると言った。そして、自分が殺されてしまった。返り討ちに遭ったのだろうか。

 大楽裕が時間を潰したという喫茶店の名前を聞いて、事情聴取を終えた。

 もう一度、運営部に寄って、河村を呼び出した。

「捜査には協力することは、やぶさかではありませんが、周りには、塾に対する裏切りだと思う人間がいるかもしれません。人目に立たないようにお願いします」と河村に釘を刺された。

「すみません。大楽裕さんのアリバイについて、もう一度、確認したいのです。大楽裕さん、高校に行っていないことは認めましたが、河村さんから外回りを指示されたことは間違いないと証言しています。本当に外回りを指示していないのですね?」

「高校に行っていないことを認めたのですね?」

「はい。あなたから外回りを命じられたようですが、面倒で、喫茶店で時間を潰していたと言っていました」

「ははあ~やっぱりサボっていた訳だ」

「では、外回りを指示したことは間違いない?」

「よく覚えていませんが、そう指示したかもしれませんね。ああ、そうだ。近所の高校の教師から、塾からは誰も夏期講習の生徒を募集に来ていないと言われて、慌てて募集に行った記憶があります。彼に頼んだかもしれません」

 証言を変えて来た。父親の権力を笠に着て、仕事の手を抜き、さぼり放題で尻ぬぐいばかりさせる裕のことを快く思っていないのだろうが、河村という男、油断がならない。

「忙しい」という河村を解放した。

「やはり、大楽裕は外回りを河村に頼まれていたようですね」と浅井が言うと、「外回りを指示されたことが分かっただけで、アリバイがあったことが証明された訳ではない」と生長に釘を指された。

「そうですね。あの河村という男、一癖ありそうですね。アリバイがあるようですが」

「うむ。しかし、調べれば調べるほど、被害者を恨んでいた人間が出てくるな」

「ですね~他にもガイシャを恨んでいた人間がいるかもしれませんね」

「被害者の身辺を洗ってみた方が良さそうだな」

「どうします?」

 窓から外を見ると、雨は止んだようだった。

「実家の村田家に事情を聞きに行ってみるか」と生長。

「ああ、良いですね。あちらの家族からなら、赤裸々な話が聞けそうです」

「赤裸々って、お前、人生相談じゃあるまいし・・・」

「はは。ドカン! ドカン! とメガトン級の話が聞けるかもしれませんよ」

「おっ! メガトン級と言えばスカイドンだな」

 特撮物好きの生長が直ぐに反応する。スカイドンは体重が重たいことで有名な怪獣の名前だ。

「厄介な事件になりそうですね」

「ああ。さあ、行くぞ!」生長が浅井を促して立ち上がった。

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