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狼娘は黒兎に愛でられる  作者: 燈華


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プロローグ

新連載始めました。

よろしくお願いします。


一部暴力シーンがあります。苦手な方は注意してください。

ーー失敗した。


目の前に立つ三人の男たちを見てクレハは心の中で呟いた。

男たちはクレハを目の前にして好き放題話している。


「これは、犬だな」

「犬ならしつければ従順になるな」

「おお、それも面白そうだな。なかなか器量も良さそうだし、しつけて飽きるまで遊ぶのも良さそうだ」


誰が犬よ。

クレハは断じて犬ではない。


それに、さすがに目の前の男たちくらいであれば負けはしない。

争うことは嫌いだけど。

だからといって自分の身を守るのに躊躇はしない。


男たちは完全にクレハを見下(みくだ)して油断している。


ハイエナってこんなに愚かなの?


男たちはハイエナの獣人だ。さっきべらべらと喋っていた。(おど)しのつもりだったのだろう。

クレハからしたら、だから何? という感じだけど。


とにかく油断している今が好機だ。

三人の立ち位置を確認し、密かに拳を握り、重心を移動させようとしたーーその時。


「邪魔です」


その言葉が耳に届くと同時に男たちの一人が吹っ飛んだ。


「「は?」」


男たちが間抜けな声を出して振り向く。

と同時にまた一人頬を殴られ吹き飛んでいく。


「てめえ、兎ごときがぐわっ!」 

最後の一人を鮮やかな回し蹴りで吹っ飛ばした男と目が合った。


少し癖のある漆黒の髪に硬質な黒玉のような瞳、頭には長い黒い耳がぴんと立っている。彼は兎の獣人のようだ。


次はもしやクレハだろうか?


正直先程の鮮やかな撃退を見てしまえばどこまでクレハに太刀打ちできるかはわからない。

だけど身を守るためにはやるしかない。

クレハが握った拳をほどかずにいると、不意に目の前の彼の瞳が(ほころ)んだ。


「大丈夫ですか、お嬢さん?」


どうやら助けてくれたようだ。

クレハはほっとして拳をほどいた。


「は、はい。助けていただき、ありがとうございます」


ぺこりと頭を下げる。

その頭の上で髪と同色の青灰色の三角の耳が揺れた。ふさふさの尻尾も少し揺れてしまった。


「貴女のどこが犬なのでしょうね。どう見たって狼でしょう」


そう、クレハは誇り高き狼の獣人だ。断じて犬などではない。


「目が悪いのでしょう」


きっぱりと言う。

視力が悪いのか見る目がないのか。

両方だと思う。


「そうでしょうね」


あっさりと彼も同意する。


「私の助力は余計でしたね」


恐らく先程拳を握っていたのを見られている。


「いえ、大変助かりました。ありがとうございました。お強いんですね」


それは、褒め言葉のつもりだった。

クレハだとあそこまで短時間に鮮やかに戦闘不能にはできない。

本当に争い事は嫌いなのだ。

だが、目の前の青年はすっと目を細めた。


「兎が弱いだなんて誰が決めたのでしょうね」

「え?」


クレハは目をぱちくりする。

何が彼の気に障ったのかわからない。


兎が弱いだなんて誰も言っていない。

動物界の兎は確かに捕食される側だが、それと獣人は関係がない。

この国では獣人は等しく平等なのだ。

それに、動物の兎だって弱いとは限らない。


黒兎がすっと近づいてくる。


「なんなら食べてしまいましょうか、狼のお嬢さん」


耳元で(ささや)かれてびくっとする。

低く甘い声だった。

まるで誘惑するような。


「このまま(かじ)ってしまいましょうか?」


また耳元で囁かれ、そのまま本当に齧られてしまいそうで、思わず硬直してしまった。

先程の男たち相手とは違う。

それにくすりと笑う気配がしてすっと青年は身体を離した。


「冗談です。この辺りは物騒です。気をつけてお帰りなさい、お嬢さん」


(きびす)を返した背中に「あの、」と声を掛ける。

立ち去りかけた彼は足を止めて顔だけで振り向く。


「何の獣人かは関係なく、ただ貴方が強いから強いと言っただけです」


驚いて固まる彼に「ありがとうございました」と頭を下げてクレハはぱっと駆け出す。

後ろは振り向かなかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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