魔獣狩り、始動
「やった……けど、逃げられたッ」
弓を握りしめたまま、俺は悲しげに唇を噛んだ。
目の前を、血を垂らしながら猪が走り去っていく。
(クソッ、あと一歩だったのに……)
「ししょーッ! すみません、仕留め捕りそこないました!」
「わかった、俺がやる」
ガロンおじさんは短くそう言うと、重い矢を一本引き絞り~
ズドン!
その一矢が木々の間をすり抜け、疾走する猪の頭を正確に撃ち抜いた。
猪はそのまま地面にバタリと塁れ落ち、動かなくなる。
(……やっぱすげぇ。師匠、マジで人間じゃねえ)
俺がゼェゼェと息を吸く横で、ガロンおじさんが口元をニッと編めた。
「まあ、惜しかったな。胸に当たってた。十分だ」
「ほんとに?」
「おう。すくなくともお前の年でここまでやれる奴はまずいねぇ。この木が密集した林で、動いている獲物に放ったあの矢の軌道、兵士でもマグレじゃなきゃ難しいぞ」
へへ、と笑うしかなかった。
(もう8歳だ前世で言えば、俺って小学三年くらい……か。肉のためなら俺、なんでもやれる気がする!)
そのとき、ガロンおじさんが空を䮻いでポツリと告げた。
「そろそろ、魔獣をやらせてみるか……」
「え、今なんて言った?」
「聞こえてんだろ。魔獣狩りだよ。そろそろいい頃合いだ」
ゾクリと背筋が震えた。
(マジか……ついに、あの“魔獣”に……?)
それは、動物とは別の存在。人に害をなす、本物の怪物。
何度もガロンおじさんから話を聞いていた。危険だが、魔力を多く含む肉を持つ存在。
つまり~。
(めちゃくちゃ、うまいってことだ!)
「行く。絶対に、行く!」
俺の目がギラついたのを見て、ガロンおじさんはクククと喉を鳴らして笑った。
「欲望に忠実なのはいいこった。なら、明日、準備しとけよ。試練の始まりだ」
次の日。
俺は夜明け前に目を覚ました。
目指すは~“魔獣の森”。
この一狩りで、俺の肉人生が一段階進化する。
(絶対に、食ってやる!!)
【ステータス】
名前:ルクス
年齢:8歳 up!
種族:人間(村人)
職業:狩人見習い New
出身:ユレリ村
現在の欲望:魔獣の肉を食べる
スキル:弓術 、解体術、矢製作、身体強化