弟子入り
「……もっと、狩りが上手くなりたい」
あの日のウサギの味が、いまだに舌に残ってる。
囲炉裏の前で家族が驚いた顔をして、笑って、肉にかぶりついてた。
あの感じ最高だった。
やっぱり俺は欲望のままに生きる!
そしてもっとうまいものを食うんだ!
次の日、俺は朝イチでガロンおじさんの家に向かった。
「なぁ、おじさん。弟子にしてよ」
「ん?」
「俺、もっと狩りが上手くなりたいんだ!」
おじさんは腕を組んで、口をひん曲げるように笑った。
「……ったく、やっぱ来たか。しゃあねえ面倒見てやるか!」
その顔はちょっと嬉しそうで、目の奥がニヤッとしてた。
「ただし、俺は厳しいぞ? ガキだからって手加減はしねぇからな」
「わかってる! 俺、本気で肉が食いたいんだ!」
「……ははっ、そこかよ。まあいい。じゃあ、今日から“授業料”な」
「えっ」
「まずは薪割りな。うちの裏に積んであるやつ。あと鶏の世話と、火起こしも」
「ぜんっぜん関係なくない!? 狩りと!」
「関係大アリだっつの。獲っても焼けなきゃ意味ねぇ。運べなきゃ肉にならねぇ。あと俺の昼も頼むな」
(なんか、すげぇこき使われてる気がする……)
でも、俺は知ってる。
このおっさん、口は悪いけど――ちゃんと教えてくれるやつだ。
◇
それからの一ヶ月。
俺は薪を割り、矢を削り、動物の腹を開く毎日。
ウサギの皮も一人で剥げるようになったし、匂いにもだいぶ慣れてきた。
「……お前、意外と根性あるじゃねぇか」
そう言われた時は、ちょっとだけニヤけちまった。
おじさんは、大人用の矢も俺に作らせる。
「これ、おじさんの分じゃん」
「おう、授業料って言ったろ?」
「それ便利な言い方じゃね!?」
「よく気づいたな。じゃ、次は罠の仕掛け方いくぞ」
俺は文句を言いつつも、毎日めちゃくちゃ覚えていってる。
◇
ある晩。薪割りの帰り道。
空を見上げたら、また画面がフワッと浮かんできた。
【ステータス:ルクス】
年齢:7歳
種族:人間(村人)
職業:農家の三男坊
出身:ユレリ村
現在の欲望:もっと狩りが上手くなりたい
スキル:弓術 、解体術、矢製作
また出てきた。
どうやら俺だけステータスが見れるらしい。
(……まあ、見れても意味ねぇけど)
でも、このステータスは俺の成長の証だ。
もっと成長していつかもっと大きな男になってやろうと思う。
「……よし。明日は、もっとすげぇ矢、作ってやる」
俺は、ヘトヘトになりながら歩幅をちょっとだけ大きくして、家に向かった。
【ステータス:ルクス】
年齢:7歳
種族:人間(村人)
職業:農家の三男坊
出身:ユレリ村
現在の欲望:もっと狩りが上手くなりたい
スキル:弓術 、解体術、矢製作