努力の味
夕暮れの山道を、俺は足取り軽く歩いていた。
背中の袋には、自分で仕留めたウサギの肉。ガロンおじさんがきっちり血抜きと解体をしてくれて、「毛皮はもらっとくぞ」ってニヤリと笑って渡してくれた。
(肉だけで十分だって。あの皮、なかなか高く売れるらしいし……)
俺は何も言わず、素直にうなずいた。今の俺にとって重要なのは――
(この肉を、家でドヤ顔で見せつけること!)
肉! にく!! ニク!!!
(これで……麦粥地獄とは、おさらばだ!)
家に戻ると、囲炉裏の煙の匂いが鼻をくすぐった。
いつもと同じ――でも、今日の俺は違う。
「ただいまー!!」
元気よく声を上げて、ズシッと肉入りの袋を食卓にドンッ!
家族が一斉にこっちを見る。
「見てこれ! ウサギ、狩ってきた!」
次男がまず箸を止めて、口をぽかんと開ける。
長男は「……は?」とだけ呟いて固まった。
母さんは目を丸くして、「ほんとに? あんたが!?」と鍋を持ったまま硬直。
父さんだけは、鼻を鳴らして言った。
「どうせ、誰かにもらったんだろ」
「もらってねーし! ガロンおじさんと一緒に山入って、ちゃんと自分で仕留めた!」
「へえ……」
兄貴たちも信じられないって顔してたが、母さんだけはにっこり笑った。
「やるじゃない、ルクス。今夜はご馳走だねぇ」
そう言って、鍋から粥をすくう手を止め、囲炉裏に鉄串と網を準備し始める。
父さんは「え、粥は?」と戸惑っていたが、母さんはぴしゃり。
「今日は肉よ。文句ある?」
「肉ばっかじゃ体に悪いんだよ……麦で中和しねぇと」
「何言ってんの。あんたが『自分で狩ってこい』って言ったんじゃない」
「いや、まぁ……それはそうだが……」
父さんがしぶしぶ薪をくべる中、母さんは肉を手際よく串に刺していく。
串に刺された肉が、囲炉裏の網の上でじゅうじゅうと音を立てる。脂が滴り、炭に落ちては煙が立ち上る。
煙と香ばしい匂いが部屋中に広がり、家族のテンションも上がり始めた。
塩でただ焼くだけ。それなのに、見てるだけで腹が鳴る。
「うわ、うまそ……」
長男も、次男も、もう何も言わない。ただ串を見つめて唾を飲んでる。
火が通った肉を一本ずつ分けるとき、父さんがぼそり。
「俺が一番大きい肉な!親に多めに寄こすのが筋ってもんだろ」
「そういうのいらないって」
思わず言い返すと、父さんは渋い顔で、
「俺に育ててもらってるんだ。親孝行しろ」
「うわぁ……」と、兄貴たちが同時に引いた顔をする。
そんなやりとりをしながら兄貴たちも笑いながら次々と肉にかぶりつく。
「……ルクス、やるじゃねえか」
「……あんた、やるときゃやる子だったんだねぇ」
「悪かったよ、ルクス」
「うまっ、マジで」
兄貴たちは、さっきまでの態度が嘘みたいに、口いっぱいに肉を頬張ってる。
母さんは「今日は祭りみたいだねぇ」と笑っていた。
そして俺も――一口。
口に入れた瞬間――
(う、うまっ……!!)
あんなに臭かった血抜き。あんなに見たくなかった皮剥ぎ。
でも、今こうして焼いて食ってみると――全部、報われた気がする。
油がじんわり染み出して、少し硬いけど、噛めば噛むほど旨みが溢れてくる。
分けたら量は少しだったけど、それでも家族みんなで「うまいうまい」と騒ぎながら食べた。
囲炉裏の火がパチパチと鳴る中、麦粥の晩飯とは思えないほど、賑やかで、温かい夜だった。
家族が笑って、がやがやと囲炉裏を囲む。
俺の取り分は、気づけば少しになってたけど――
(いや、それでも……)
口の中いっぱいに、達成感が広がっていた。
「……最高だ」
誰に聞かせるでもなく、俺はそう呟いた。
努力で手に入れた肉は、麦粥の何十倍もうまかった。
【キャラクターステータス】
名前: ルクス
年齢: 7歳
種族: 人間(村人)
職業: 農家の三男坊
出身: ユレリ村(山沿いの辺境・自然豊かな農村地帯)
現在の欲望: もっと狩が上手くなりたい
習得スキル:
・弓術