神界からの訪問者の白 参の2
◇◇◇
それから数分後。
ようやく白が生き返った。
いや、起きたが正しいのかもしれない。
「で、白はなんで話せるんだ」
「お主ら、分からんのか。我は神界からやってきた神獣様じゃ!!」
あ~神獣ねと2人は納得した。
しかし、その神獣様がなぜ倒れていたのか。
不思議に思い聞くが...
「あ、あ〜と、え~と」
言いづらそうに汗を流す。
「1つは、依頼じゃがな、」
「依頼ね〜」
伶琉がニヤけた笑顔で、もう一度聞く。
「で、倒れていた理由は?」
小さい声でゴニョゴニョっと。
何かを言ったようだった。
「へ?」
聞こえず、聞き返してしまう。
お腹、、という言葉だけ聞こえた。
しかしそれ以外何も聞こえず、もう一度聞き返す。
「だから、、あの、お腹が空いて倒れてたのじゃ!!!」
聞いたは良いものの、予想外の返答だった。
絢斗は鼻で笑い、伶琉は爆笑する。
何も言い返せない様子の白。
頬をピンクに染める。
しかし、その時だった。
2人の匂いを感じ取った。
(これは、)
「それでお主ら、いい匂いがする。我にもそれを恵むのじゃ」
顔を少し赤くし、恥ずかしそうだった。
伶琉は、その様子に微笑む。
(ちょっと可愛い)
「はいはい。ちょっと待ってね」
補充棚から賞味期限が近いみたらし団子。
そして、いきなり団子を取り出す。
相当お腹が空いていたのか、がっつくように食べていた。
その食べ方は、先程の可愛さを凌駕させた。
もう少しゆっくり食べて。
と思いながらも口に出さない伶琉。
"パクパク"というより、"バクバク"だ。
「この食べ物の名はなんというのじゃ」
丸い団子が4つ付いている。
それが、みたらし団子。
皮の中にあんこと、さつまいもが包まれている。
それは、いきなり団子。
伶琉が説明している間。
話を聞いてるのかわからない。
それ程のペースで、口に含ませている。
そして白は、ぺろりと平らげる。
全ての食べ物は、3分も持たず。
白の胃袋に消えていった。
「なかなか、美味な味じゃった」
食べ終えて、お腹も満たされた様子。
座っていたソファーに、盛大に仰向けの体勢。
その体勢のまま、話し始める。
絢斗は何も言わない。
しかし、伶琉は色んな意味で笑いを堪えている。
(すっげー態度)
「それで、依頼なのじゃがな。このスカーフ」
話しながら、のっそりと起き上がる。
(あ、起き上がるんだ)
すると、白の横から小さなワープゲートが開く。
白は、何かを取り出そうとしているようだ。
見つけたのか、手に持つ。
ワープゲートは閉じ、絢斗に渡す。
それは、スカーフだった。
赤のスカーフ。
「今のワープゲート、は」
不思議に絢斗が尋ねる。
「ああ、今のは簡単に言うと、荷物を詰めれる物じゃ」
人間界で言う何じゃろうと、考えている。
ひらめいたのか、パッと顔を晴れやかに。
「人間界で言うバックみたいなものじゃ」
"そうじゃ、軽く講義のようなものをしてやろう"と、なぜか始まった。
白は、絢斗と伶琉にスカーフを掴ませる。
すると、互いに目を合わせる。
2人とも、何かを感じた様子。
「お主らが今感じているものが、本当の神力じゃ」
神力は確かに人間界にも、存在はする。
あるところには、あるという感じでだ。
だがそれは、人間界特有の神力に染まってしまっている。
だからこそなのだ。
神界本来の、神秘的な神力とは異なる。
要するに、2人が今まで感じていた神力。
このスカーフの神力。
神力という名前は一緒。
だが、少しそれぞれ違う神力なだ。
と、簡単に説明する白。
「じゃあ、神力は2種類あるということか」
「うーん、まぁ、主には2種類じゃのぉ」
"主には"という言葉を不思議を、憶える。
「他にもあるのか」
絢斗が聞き返す。
すると、白は言うか悩んでいる様子だ。
これを言ってしまったら…
こ奴らも色々面倒なことに…
巻き込まれるかもしれない。
白は、色々考えていたのだ。
頭を悩ませ、腕組みをする。
そして、首をグルグルを回す。
それも、360度回転。
その様子ボーっと見ていた伶琉。
不思議だなと思いつつ、
(首の骨って神界の狐は、ないのかな〜)
とも思っていた。
「後はな、邪気にまみれた神力じゃ」
邪気にまみれた神力。
それは、今では神力とされている。
しかし、数千年前までは呼び方も異なった。
『邪力』と呼ばれていた。
なぜなら神力とは違うもの。
として認識されていたからだ。
しかし、2000年前
邪力は神力によって清められる。
ということが判明。
そのため、今では神力の1つ。
として数えられている。
今の呼び名は
『邪神』または『邪力』
その2つの、どちらかで言われる。
「じゃから、これからもこの仕事を続けるのならば」
"神力を見分けられるようになることじゃ"
神力というのは元は、神界のものだ。
とても神聖で、神秘的なものなのだ。
「そうじゃ、例を出そう」
例えば、初めは神界にあった物だった。
しかし、それが人間界に送られた物 (者)があるとする。
それは、5年ほど置かれることにより。
人間界の神力に、半分は染まってしまうのだ。
だが前提として。
人間界には、神力というものが少ない。
そのせいもあり、人間界では神力を持っている人自体が本当に少ない。
特に、絢斗や伶琉。
2人ほどの神力の持ち主は、稀な存在。
だが、2人は逆に神力を持ちすぎている。
白は、不信感を抱いていた。
可能性があるとすれば、、、
◆◆◆
「なんで、邪神はあるんだ」
伶琉が尋ねるが、白は別の考え事をしていた。
少し遅れて"あ、あ〜それはじゃな"と説明し始める。
「神力は人間界でいえば、主にどこにあると思うか?」
その問いに、絢斗が答える。
「神社」
「そうじゃ」
「という事は、人間の欲の塊である願い事。により神力から邪力に変わるのか」
伶琉が続けて答える。
現代では、神社というのは昔とは違っている。
今では、具体的な願い事を求める人が多い。
それに願いが叶ったとしてもだ。
お礼参りをする人は少ない。
そうなると、人の欲望ばかり溜まっていく。
そういう場になってしまうのだ。
お礼参りがあるから、神力も清まる。
というのに、お礼参りというのは減少傾向だ。
今では神社という場所は
『願いを言うだけの(聞き入れてくれるだけの)場』
となってきているのだろう。
そのように、神界では思われている。
そのため、邪神になるのだ。
「お主ら、賢いのぉ。しかし最近ではな」
まぁ、何と言うべきかと迷っている。
「ちと、面倒なことになってきておるんじゃ」
「面倒?」
「そうなんじゃ。神力が邪神にされておる。と言う報告もあるんじゃ」
あるものの手によってじゃな。
そのために、白は人間界に調査に来た。
という理由も少し、あるという。
しかしお腹をすかせ倒れるとは。
白自身も、思っていなかったらしい。
そして偶然、2人によって介抱されたのだった。
要するに運が良かったのだ。
「ということは、人間が神力を邪神に染めている主犯。と言うことか?」
「主犯かは分からないが、トップは。そうだろう」
「トップって、部下がいるのか?」
それを聞き、絢斗は考え込む。
顎の下に手を持っていく。
絢斗は、探偵がよくやるポーズを癖でしてしまう。
特に考え事をする時。
または、思い悩んだ時などだ。
白は、そういうことじゃと頷く。
「これから、もしかしたら、俺達も巻きこまれる可能性があるのか」
伶琉は尋ねる。
考え込んでいる絢斗を横目に、白は質問を返す。
「お主も、能力者か?」
「まぁ、そうだね」
「神界では今、色々調査を行っている。これは、ほんの少数の奴らにしか伝えてない事じゃが、」
話を続けようとした白を遮る。
「能力者か」
絢斗が被せて言う。
その言葉に、伶琉もなるほどと納得する。
その2人の姿を見た白は、関心の目を向けていた。
こ奴らは、なかなか察しが良い。そして賢い。
2人の考え込んでいる一瞬の時を狙うように。
白は、口元の口角を上げた。
(この2人は、面白い)
2人に興味が湧いた白だった。
◇◇◇
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