ー強襲ー
「斧武術…lv5…かち割り。ふう…これで何体目だよ」
ファーシティはゴブリンの街。ゴブリンはサツキが狩ってくれるとして(さっきからあちらこちらでゴブリンたちが宙を舞っている)、僕は僕のノルマとしてボスゴブリンを狩っている。どうやらボスゴブリンはちょっといい家に住んでるみたいで、隠密で忍び込み寝込みを襲っていく。
「まだ起きてない個体が多いからいいけど…そろそろ騒ぎになりそうだなあ」
サツキはめんどくさいのか効果範囲の広い風魔法を使っており、結構音や衝撃がすごい。このままだとボスゴブリンたちも動き出すのは時間の問題だろう。今殺した個体も丁度起きようとしているところだった。
とりあえず半分ぐらいはボスゴブリンを殺したかな、という頃。
「ンギャオオオオオオオオオオオオ」
街全体に聞いたことがないような叫び声が響き渡る。と、同時に、明らかにゴブリンたちの動きが変わる。
「出ましたよ。ファーシティの王、ゴブリンキングです」
「おっ。てことは…」
ミライが戦線に出てきた。相変わらず赤髪ツインテールがよく似合う。上下は半袖半パン、マントも纏っているが、全て真っ赤だ。そしてあれは…
「太刀?」
「のようですね。どうやらミライは太刀術の達人みたいです」
これまた鞘が真っ赤な長物を下げて、ミライはキングに向き合う。お互いが息を潜めるのがわかる。強者同士のぶつかり。
「さてさてお手なみ拝見…あ」
気づけばミライはゴブリンキングの後ろにいて、そしてごろりとキングの首は地に落ちた。ミライはカチンッと太刀を収めた。実力差は、圧倒的だった。
「ふぅー…おしまい!あとは頼んだよ!2人とも」
言われずともわかっている。頭を失い路頭に迷い始めたゴブリンたちを、僕たちはバッタバッタと薙ぎ倒す。
「せっかくだから使っちゃお。斧武術レベル10、最終奥義、斧斬り」
手元の斧に光が集まっていく。斧で斬るんじゃあなくて、斧に斬らせる。自分は何も考えず、ただ、斧に斬らせたいように敵を斬らせていく。身体は勝手に動かされていく。斧が縦に、横に、宙に舞い。ゴブリンたちは、悲鳴をあげる間もなく、切り刻まれていく。
「風魔法レベル10、最終奥義、五月雨」
「風なのに雨なんだ」
どうやらサツキも最終魔法を使いたかったようだ。サツキを中心に球状に風魔法が展開されていき、そのエリアに入ったゴブリンたちは、細切れにになって…あれ?どこまで広がるんだこの魔法。このペースだと…
「おいおいおいあいつ加減知らねえのかよ!!!巻き込まれる!」
「範囲外に出ないと死にますねこれマスター」
この前のボスゴブリンの時と違い、今度は助けてくれる人もいないため、僕は死ぬ気で走った。範囲外に出て振り返ると、ゴブリンの姿はひとつもなく、僕たちの討伐は終了した。




