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ー日常ー

「ようこそ冒険者ギルドへ!登録ですね。すぐできますよ!身分証明書をお願いします!」


 ナビ子の案内に従い、冒険者ギルドを見つけ、中に入り、受付へ行く。受付は長いカウンターになっていて、天井から「依頼関係」「冒険者登録」の二つの看板が吊るされている。僕は迷わず冒険者登録へ向かう。ワンオペのお姉さんが、依頼関係側から走って受付にきてくれた。陽気だ。僕は免許証を出す。


「あ、異世界の方なんですね。じゃあ免許証に魔法で烙印しちゃいますね。この世界から戻ると烙印は消えるんで免許偽造とかの罪に問われることはないです」

「死んでも元の世界に帰らないんで大丈夫です」


 絶対に元の世界には戻らない!絶対にだ。


「みなさんそう言っていかれますね…はいできました。今のあなたは1番下の階級。プレーンホワイトです。1番上のコンプレックスブラックまで、頑張って上がってくださいね」


 絶妙にダサ…絶妙にダサくない?誰が考えたかしらないけど。


「ちなみに特に階級によって受けれる依頼が異なるとかはありません。全て成功報酬なので、成功したもん勝ちです」


「ふーん、じゃあ階級によるメリットは特にないの」


「階級が上だと、世間からの評価が変わります。また、一定以上の階級は、一定の年俸がもらえます。ただし、年俸がもらえ始める階級から、1年間の成果ノルマが課されます。働かざるもの食うべからずってわけです」


 なるほどね。強者には義務と報酬を。弱者には平等なチャンスをってことか。


「とりあえず冬服が買えるぐらいの依頼をお願いします」

「それだとまあ、ありきたりですがゴブリン退治ですね。一群れ処理すれば10000ギルです」


 マジ?タビットラビットの何倍だよそれ。マジで狩猟は効率が悪いんだな。


「じゃあゴブリン退治で…」


『あーテステステス、テステステス。聞こえておるか。異世界人、AIども、神職貴族王族たち』


 突然、脳内で聞き覚えのある声がした。


『ワシじゃよ。神じゃ。今現在をもって、魔族の侵攻がこの世界の95%に達した。よって、残り3ヶ月で世界を閉じることにする』


 おいおいおい聞いてた話と違うぞ。


「待ってナビ子…しばらくは大丈夫なんじゃなかったの!?」

「私もそう思ってたんですが…おかしいですね…」


 狼狽える僕らにお構いなく、神は続ける。


『終末を回避するには、3ヶ月以内に、そうだな…少なくとも80%ぐらいまで魔族の侵攻を抑えてもらおうかな…』


「あ、あ、アバウト〜」


 一つの世界が終わるかどうかというのに適当すぎる。神の思考というものが人間に理解できる気もしないが。


『ということで、みんな頑張るんじゃぞ』


 それっきり、脳内で声が聞こえることはなかった。


「どうかしましたか?」


 受付のお姉さんが突然止まった僕を見て尋ねる。ナビ子との会話も、神の宣告も、全て脳内で行っていたので、お姉さんからすれば、目の前で突然動きの止まった変なやつである。


「なんでもないです。それより、ちょっとゴブリン退治キャンセルしても良いですか?考えなきゃいけないことがあって」


 とりあえず異世界人たちと集まって、この世界をどうするか考えなきゃいけない。


「良いですよ、ギルドは24時間受け付けてますので、いつでもいらしてください」

「ありがとうございます」


 僕は受付に会釈をし外に向かう。


「ナビ子、ほかの異世界転生者って後何人ぐらい残ってんの?」


 みんな、帰りたくないだろうから、50人くらいは残っているのだろうか。それとも30人くらいか。なんにせよ、異世界人が大量にいればそれがチートだろう。


「2人です」

「ん?」


 今なんて言った?聞き間違いか?


「聞き間違いではありません。あなたを含めて3人しか、もうこの世界に異世界人は残っていません」


マジ?100人もいたのに?


「そうですね。そもそもこの政策結構やってて、10年くらいになるんですよね。あと、あっちの世界とこっちの世界、わりと時間の長さが違って。こっちだともう初めて100年くらい経ってるんですよね。期間が長くなるとやっぱ、わりと死ぬ人も多くて」


あー勝手に短期間に100人送られたのかと思ってたけど、そういうわけでもないのか。え、てか元の世界と10倍も速度違うの?そんなことしたらみんな浦島太郎になっちゃうじゃん。


「そうなんですよね。でもみんな割と、人間関係に悩んでいたので、死んで戻ったとしても、そんなに苦しんではいないみたいですよ。だからソウタさんも、この世界を救えなかったときも少しはマシだと思って頑張ってください」


「いや、どっちにしてもいやだよ。まあ頑張るよ」


 確かに元の時刻に戻るのは嫌だが、浦島太郎になるのも地獄すぎる。


「あと、初めは私たちが存在しなかったんですよね。AIという水先案内人が。だからスキルポイントの使い方もわからず、死んでいった人も何人かいます」

「福利厚生がなってなさすぎじゃない?あの神」


 いい加減というか試行的というか…生身の人間で実験するんじゃない。


「まあいいや。その残りのメンバーと連絡って取れたりするの?」


「あーテステステス。聞こえますかー異世界の人たち」


 突然、脳内で聞き慣れない可愛い声がした。


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