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ー街ー

「とまれいとまれい!」


 半日ほど歩くと、確かに街が見えてきた。街はぐるりと城壁に囲まれており、門に近づくと、甲冑を身に纏った門番がいた。門番は兜の隙間から問いかける。


「やあやああなたはどこぞのだれぞ。身分証明書をお出しになれい」


「身分証明書…?」


「免許証でいいですよ。世界が勝手に読み替えてくれるんで」


 脳内でナビ子が教えてくれる。免許証でいいんだ。

僕は尻ポケットから財布をだし、免許証を渡す。


「お!ソウタと申すのか。ニホン…じゃああんたも異世界人か。たまにいるんだよなあ」 


「そうなんですね。今も誰かこの街に?」


「いや、今は丁度誰もいなかったはず…しかしあれだな、ニホンジンってのはちょっと目が死んでるやつが多いな!」


門番は気さくに言う。そらまあこの世界に来ようとしたやつのだいたいは前の世界に絶望してきてるからな…。


「ようこそ、最後の街へ。歓迎するよ、異世界人。楽しんでいってくれ、人類最後の砦を」


 門番に別れを告げ、僕は街の中に入る。


「最後…?」


「この街以外の街はもう、魔族に支配されて残っていないのです。追いやられた人類は、残った武力と叡智の全てを持ってこの街の維持に使いました。この街だけは、何があっても崩れません」


「フラグだなあ」


 「何があっても」とか、「絶対」とかほど、信頼ならないものはない。


「そういや神が最後にチラッと言ってなかった?この世界を終わらせるとかなんとか」


「そうですね。魔王の支配する領域がこの世界の95%を超えてしばらく経てば、神はこの世界を終わらせると思います」


「ふーん」


「ちなみにこの街は世界の4%しかありません」


「終わりじゃねえか。95%超えてない?」


 この世界はもう終わりに向かっているのだとも言うんだろうか。


「各地で村程度の集まりを営んでる人たちが数人いるんですよ。この世界が維持されるかどうかは、実は彼らにかかってます。まあそのことは、我々この世界の部外者や、一部の貴族、神職しか知りませんが」


「何でだよ。みんなで6パーセントを死守しろよ」


 世界が終わりに向かっているのだとしたら、とっととその事実を公表して、みんなで死守すべきだろう。


「もう疲れたんですよ、普通の民は」


 ナビ子は諭すように言う。


「来る日も来る日も、魔王軍と戦って。人と資材は減っていくのに、終わりは見えない。戦っても戦っても、完全勝利なんて見えそうもない。だったらもう、自分たちで絶対守れる地域だけ残して、あとは全部捨てることにしたんです」


 終わりの見えない戦いほど、辛いものはない。それは社会人をやっていたのでよくわかる。この苦しみが死ぬまで続くのだと気づいた時、僕は生きるのをやめた。


「そして、残念ながらその後に、一部の人はこの世界の破滅のルールを知ってしまった。でも、もう彼らは、その情報を民に伝えるのはやめたんです。滅ぶときは滅びようと」


「あー…えらく腹を括ったもんだな…。そもそもこの街にそれだけの地域の人類って収められたの?」


「入りきりませんでした。そして皮肉なことに、その入り切らなかった人類たちが今、この世界を終焉から救っているのです」


 はみ出した数%の人類たちの営みによって、この世界はギリギリ存在を保ってるということか…。


「まあしばらくは大丈夫ですよ。ほんとに終末が始まったら一部の人たちと異世界人にはアナウンスされますし」


「そうなんだ。ちなみに俺たちってこの世界が終わったらどうなるの?」


 僕は嫌な予感がして聞いた。


「ご心配のとおり、元の世界に戻されます。ちなみにこの世界で死んでも、寿命以外の場合は元の世界に戻されますよ」


「あ〜〜〜〜〜〜」


 それはマジで嫌だな。ほかの転生者たちもそれはマジで嫌だろうし、最悪終焉が始まったら、みんなで何とかしないといけないんだろうな。


「まあいいや、とりあえず目下の目的、冒険者ギルドの登録と服の購入をパッパと済ましちゃおう」


「そうですね。それでは次の角を右に曲がってください」


 僕はナビ子の案内に従い、ギルドに向かった。

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