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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夜10時、帰り道

作者: 芒に雁

 塾の帰り道。


 今日はバスが無いから歩いて帰る。


 少し遠いがまあ歩けない距離ではない。


 まあ、真っ暗だ。


 僕の街は虫が多い。別に僕は虫が苦手というわけでは無い。

 何ならミミズでもバッタでもカタツムリでも別に平気だ。


 嫌なのは「死骸」。昔から僕は生き物の死骸を見るのが嫌なのだ。


 5歳くらいの時からかな?突然嫌になった。

 蚊を潰した時、動かなくなった蚊の死骸を見て突然悪寒が走り、思わず手を思いっきり振った。


 そこから今まで普通だったのに、虫の死骸を見ると悪寒が走るようになった。


 別に大したことじゃないだろうし、僕の他にもそういう人はいるだろう。


 しかし何故か人は、嫌いな物ほどよく目に入る。


 今のところ脳裏に刻まれているのは、小鳥の頭、腐ったネズミ、干からびて片足がなくなっていた蛙、車に引かれてぺしゃんこになっていたカマキリとムカデ、殻ごと踏み潰されたカタツムリなどなど。


 そういった物を見ると、ビクッと驚き、見なかった振りをする。


 小鳥の頭に関しては一週間ほど放置されていたので毎日視界に入っては驚き、スルーするを繰り返していた。


 今、ブロック塀の上に落ちていたのは、バッタの後ろ足。


 まあ、この程度はまだマシだ。


 今度はトンボの羽。


 まあこれくらいなら大丈夫。


 カラスの羽。


 別に何も思わない。


 潰れた芋虫。


 はい、最悪。見なかった振り。


 羽アリの死体。


 こんなん夏場になったらプールにいくらでも浮いてる。

 まあ嫌だ。


 死にかけの蛾。


 羽が片方ない。もう助からないだろう。


 スルーする。


 ……今日は厄日か?多すぎだろ。


 五体満足で死んでいる蜂。


 普通にやだ。


 蜘蛛に喰われてる真っ最中の蝶。


 うわ。即目を逸らす。


 焦げたミミズ。


 最近よく見る。目を逸らす。


 砕けたカタツムリ。


 嫌すぎる。


 蟻の群がっているカマキリ。


 吐き気を催したので、即座に目を逸らす。


 猫の……耳?


 なんだコレ。流石にこれは特殊だ。


 流石におかしい。多すぎる。


 爪。


 ……爪?


 人の爪だ。親指?気持ち悪。


 人の耳。


 ビクッと背筋が伸びる。


 え……これ…………通報すべき?耳が落ちてるって?


 いや僕今携帯持ってないし、誰かが通報するだろ。うん。


 蝉。


 安定の嫌な奴。足の開き方で生きてるか判断できる。……死んでるな。


 目を逸らす。


 なんなんださっきから。怖い。


 あと少しで家だ。もう少し。


 角を曲がって、橋を渡ろうとした時、とんでもないものが目に入った。




 川のほとりの草むらの中に、人の足。




 声も出ず、その場で尻もちをつく。


 やばい。これは流石に通報!!


 立ち上がろうとするも、立ち上がれない。腰が抜けたのか?


 その時、気付いた。


 右足が、無い。


「え?」


 目をこすろうとして気づく、右手も無い。


 あれ?さっきまで僕、普通に歩いてたよね?


 目の前で、左足も無くなった。


 何が起こっているのか、全くわからない。


 その時、仕事帰りと思われる格好をした中年男性が目に入った。


「た、たすけっ……」


 中年男性はちらりとこちらを見た。そしてビクッとして、目を逸した。


「え?」


 男性がこちらを見ないようにして、誰かと電話を始めた。内容は聞こえない。


「は、はい。場所は……」


 ………なんとなく、察した。


 首から下も、消えた。


 目に入った自分の”死骸”の無惨さに、目を逸らす。


 ◆◇◆◇


 《◯◯県◯◯市、◯◯町で、少年の遺体が発見される事件が発生しました。身元は既に判明しており、鈴木友樹君(11)。塾の帰り道に何者かに襲われ、殺害されたとして、捜査が進められています。遺体は部分毎に切断されており、未だ右目と左腕が見つかっていません。犯人は防犯カメラを気にせず犯行に及んだようで、黒いパーカーに赤いスニーカー、無地のデニムを履いていたとのことです。被害者遺族からは……………》

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