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08 シチュ


 本当に申し訳なさそうにしている職員さんに平謝りしながら、


 とっくに閉館時間が過ぎていた博物館を退出。


 いつの間にやら日暮れ間近なヴェルクリの街中は、家路を急ぐ人たちでいっぱい。



 これって、いわゆる夕方の帰宅ラッシュってヤツだけど、


 みんなが急ぐ理由、よく分かっちゃうよ。


 これだけ栄えている街でも、夜道は暗いからね。


 数は少ないとはいえ魔導ランプを主要な道に設置しているエルサニア王都が特別なんだよな。



 マーリエラさんとふたり、長期滞在している宿に向かって仲良く急ぎ足。



 ---



 夕食は、とても満足出来るものでした。


 ヴェルクリにいる間はこの宿にと決めたのは、料理の美味さが理由ですね。



「防犯意識の高さも、ですよ」


 ヴェルクリ担当の特務司法官さんのお墨付き、ですものね。



 部屋は、2階のいちばん奥。


 確かに、ドアは頑丈、鍵も特製、セキュリティばっちりって感じの部屋ですな。



 実は、窓から脱出しやすい構造なのが決め手って聞いたけど、


 素人目にはよく分からんのです。



 この窓から、下の原っぱに飛び降りるってことなのかな。


 俺なんかがそんな無茶したら、複雑骨折・痛みで悶絶・挙げ句に気絶、のコンボが炸裂しちゃうね。



「予行演習、します?」



 ---



 かなりデカめで立派なベッドは、


 ふたりが余裕で眠れるサイズ。



 いつの間にか、着替えとか添い寝とか、お互い全然気にならなくなってたけど、


 一線は越えないってところが、何と言いますか、俺たちらしいかなって。


 

 で、今日の夜ふかしトークのお題は何でしょ。



「博物館でのお話しの続き、でしょうか」


 はい、騒がしくしないよう小声で、ですね。


 確か、神さま以外で"世界のことわり"を改変出来る人がいる、でしたよね。



「この世界の歪みから生じる問題を解決する旅をしてくださっている方がおられるのですよ」


 おっと、いきなり重要なキーワードが。


 世界の歪みってことは、要するに不具合ですよね。



 ほらぁ、やっぱりバグがあるんだよ、この世界。


 ダメだろ神さま、不具合を放置しちゃ。



 まあ、今さら放置神にアレコレ言ってもしょうがないか、どうせ放置だし。


 大事なのは、放置神の尻拭いしてくれている人がいるってことの方ですよね。



 世界規模のバグフィックスしてくれている殊勝な人物、


 それってとんでもない偉業だよね、


 どんな人なんだろ。



「『鏡の賢者』様という凛々しい少年、と聞いております」

「無敵で素敵なメイドさんとふたりで、世界のことわりの歪みを手直しする旅をなさっているそうですよ」


 少年とメイドさんが世界を救うふたり旅をしているってシチュエーション、何だかグッときますな。



 待てよ、ずっと神さまのやらかしの後始末をしてるってことは、


 おふたりも不老長寿な神さまってことでは。



「『賢者』様は、神様扱いされると照れちゃうそうですよ」

「可愛らしいですね」


 おっと、マーリエラさんの新たな性癖発見、ですな。



「妬いちゃいます?」


 いえ、俺も"素敵なメイドさん"ってとこにバッチリ反応しちゃったので、おあいこってことで。



 ってか、随分と具体的な情報があるんですね。


 もしかしてそのおふたりは、この世界の誰もが知ってる世界的な有名人ですか。



「有名人といいますか、確かに実在する伝説上の存在、でしょうか」

「この世界を守るためにご尽力してくださっていることは明らかなのに、こちらから会おうとしても絶対に会えないという不思議な方たち」

「巡回司法省でも、民間からの目撃情報は入手出来ておりますし、司法官個人が偶然遭遇したという報告もあります」

「ですが、司法省が組織としてコンタクトに成功したという事例は、未だありません」


 おそらく、仕事に集中出来るよう、何らかの隠密系能力で身を守っているのでしょうね。


 実際、利用しようと近付いてくる輩には事欠かないでしょうし。



「司法省の思惑はともかく、個人的にはおふたりの旅路のお邪魔虫をしてはいけないと思います」


 ですよね、俺たちみたいなのほほんぶらり旅だってジャマされたくないですもん。


 ましてや、"世界のことわり"が壊れないよう悠久の時を旅するふたり、ですから。



「あら、こうして添い寝しているのだって、誰にも邪魔されたくはありませんよ」


 はいはい、大切ですよね、添い寝。



 それではそろそろ、


 おやすみなさい、マーリエラさん。



「はい、おやすみなさい、ノアルさん」



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