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06 ヴェルクリ


 そんな感じな、リグラルトぶらり旅。


 まさに物見遊山な毎日を満喫していたのですが、


 のほほんと観光してるだけでも思いがけない発見に出会えたりもする、


 それが異世界。



 実は、召喚者として見過ごせないモノを見つけちゃったんですよ。


 オーパーツどころじゃ無い、歴史の証人っぽい、何か。



 ---



 幌馬車定期便でヴェルクリという街に到着。


 未だ発展途上って感じだけどそれなりに栄えている街で、立派な図書館や由緒ありげな博物館などの歴史的・文化的な施設が多いのが特徴。


 どうやらそれは、この街の成り立ちに由来しているみたいですよ。




 遥か大昔、この大陸でいろんな種族が大揉めに揉めた大きな争いごとがあった頃。


 リグラルト王国の礎を築いたと言われる当時この辺りを治めていた人族の国も、大戦乱に巻き込まれて大ピンチ。



 残念ながら人族は、この世界では弱小種族扱い。


 獣人のスゴい身体能力や、魔族の強大な魔力、


 どんなに羨ましくても、人族では種族特性的に敵いっこ無し。



 強種族に真っ向から立ち向かえるようなめっちゃ強い実力者もいたそうだけど、


 天下一なんちゃらみたいなトーナメントな武闘会じゃなくて戦争ですから、


 個人の活躍でどうこう出来るわけも無く。



 そんな人族の苦境を救ったのは、


 異なる世界から来訪した召喚者。



 広大な戦場をひとりでどうこう出来ちゃうような常識ハズレのモノ凄いチカラで、八面六臂の大活躍。


 いえ、ジェノサイドじゃなく、極力平和的なやり方で。


 そんなこんなで、敵味方問わずみんなから慕われるようになっていった召喚者は、


 いつしか勇者と呼ばれるようになり。



 争いごとが嫌いな優しい性格の勇者さまは、


 他種族殲滅の方向にはっちゃけることも無く、


 強種族の代表たちとの和平交渉に尽力し、


 大戦乱を終結させましたとさ。


 めでたしめでたし。




 ってな感じの、お伽噺ちっくな伝説がこの世界には残されており、


 当時この辺りを治めていた人族の国のお偉いさんの直系子孫、というのがリグラルト王家の売り文句。


 確かに、ヴェルクリ周辺でそれっぽい遺跡とかが見つかるそうで、あながち嘘八百では無いのかも。



 そして、遺跡から出土した本物っぽいアレコレや、


 各地の勇者さま伝説にまつわる嘘っぽいアレコレまで、


 玉石混合ちっくに展示されているのが、このヴェルクリ博物館。



 それはそれとして、俺としては冷やかし半分で寄ってみた博物館で、

 

 あんなのを見つけちゃうと、流石にお伽噺だなんて言えないわけで。



 ---



 博物館の隅っこに飾られていた出土品は、当時の様子を正確に伝えているといわれている、やたらと描写が細かい壁画。



 その中央にデッカく描かれた、片手を上げてカッコよくポーズをキメた勇者さまの、


 その手に握られているモノ。



 紛れもなく二つ折りの携帯電話。



 やたらと描写が細かいから機種名まで特定出来るほど。


 ご丁寧にも開いた状態ですし。



 ってかアレって、俺が昔使っていた機種だよな。


 当時のガラケーって、変に特徴を持たせようとして迷走してたから、一発で分かっちゃったよ。



 えーと、神話レベルの大昔に、俺と変わらん時代の人が召喚されてたってことですよね、これ。


 それってつまり、召喚される側の時代は何でもありってことなわけで。



 要するに、アレですよアレ。



 織田の信長さんとか、那須の与一さんとか、ジャンヌなダルクちゃんとかにも、


 これから出会えちゃったりするかもってことだよねっ。




 ……いいでしょ、そのくらいの夢を見たってさ。


 俺がお呼ばれされたこの異世界にも、その可能性がワンチャンあるなら、


 ありがちとかパクリとかって言われる筋合いは無いっての。




「遥か昔は、召喚者は様々な時代から呼ばれていたそうです」


 マーリエラさん?



「ところが、あまりにも異なる時代から召喚されると、文化の違いや歴史の重みに耐えられずに精神を病んでしまい、召喚者同士の争いに発展してしまうことも多かったのだとか」


 ……あらま。



「ノアルさんがこれまで出会った召喚者の方々は、文化や時代に大きな違和感を感じることの無い方たちばかりだったはず」


 ……ですね。



「今は、召喚の年代が極端に異なることが無いよう、この世界のことわりが調整されている、というのが、『召喚』魔法の研究者の定説となっております」


 ……えーとつまり、今現在この世界にいる現役の召喚者である俺たちは、あっちの世界の歴史上の偉人とか、後世から来た未来人には会えませんよ、ってことですか。



「その認識で正解かと」


 あー、それは残念。



 でも、よくよく考えたら、俺みたいな凡人のおっさんが歴史上の偉人とどうこうなっちゃうってのも、想像出来ないわけで。


 もし信長さんに会えたって、本能寺大変でしたね、くらいしか話すこと無いし。



 そもそも、偉人さんたちだって、困っちゃうよね。


 例えば、超一流映画スターがミーハーなモブ野郎に付きまとわれるなんて迷惑千万でしょ。


 この世界のことわりってのが何だか分からんけど、召喚者同士が揉め事しないようアフターケアしてくれているなんて、いい仕事してるよね。



 ってか、マジで何なんです?


"世界のことわり"って。



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