03 ハミシェル
海沿いに点在している漁村で補給しながら順調に北上。
ようやく辿り着いたのは、
エルサニアとリグラルトの国境の最西端、ハミシェルの町。
ヴラウペンのような両国共同管理の町なのですが、
物流拠点としてはあまり活発な方では無く、
もっぱら人の出入りを管理する関所的な役割りの町のようです。
異世界モノだと、こういうところでトラブルに巻き込まれるのがお約束ですが、
衛兵さんたちも何だかヒマそうにしてるし、大丈夫っぽいですね。
「病弱な妻を介護しながら旅を続ける献身的な夫、ということでいかがです?」
いかがも何も、妙な設定なんか拵えてないで普通に行きましょうよ。
ってか、早く背中から降りてくださいよぅ。
ぎゅっ
うわっ、しがみついてきたし。
甘えんぼさんもほどほどにしないと、
悪目立ちしちゃいますよっ。
「そこでイチャイチャしてる男、こっちに来いっ」
ほらぁ、目を付けられちゃったよ。
トラブルを呼び込むようなことしちゃダメでしょ、マーリエラさんっ。
「処します?」
大人しくおぶさっててくださいっ。
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衛兵詰め所に連れて行かれて、
屈強な衛兵たちに取り囲まれた俺たち。
根掘り葉掘り聞かれちゃったよ。
いえ、キッツい尋問とかでは無く、
マーリエラさんみたいな素敵な嫁さんをゲットする秘訣を教えてくださいって、めっちゃ真剣に……
なんすか、この異世界。
どこもかしこも嫁不足ですか。
「このような辺境の町での勤務は、出会いの機会に恵まれないものなのです」
ちょっと、マーリエラさん。
冷静に分析してる場合じゃ無いでしょ。
無事に解放されたからいいようなものの、
トラブルの原因になったってこと、自覚してくださいねっ。
zzz……
何度寝ですか……
ってか、タヌキ寝入り禁止!