25 心機一転
「よろしかったのですかノアルさん、こんなに早く王都を離れて」
「どなたかご挨拶なさりたい方とか」
いませんってば、そんなの。
なんたって"低職処分"のハズレ召喚者ですから。
むしろ王都には顔を合わせたくない連中ばかりで。
おっと、アシュトさんたちは別ですよ。
『それで、これからどうするの?』
あー、どうしよ。
『アンチ』さんは、どっかオススメスポットとか、ある?
『のんびりと旅暮らし出来るなら、どこへでも!』
はい、了解。
じゃあしばらくは、お馬さんモードの『アンチ』さんの背中に揺られてのぶらり旅、かな。
疲れたら休憩するから、無茶しないでね。
『私、この身体だから疲れないし』
駄目だよ、ちゃんと休まないと。
"まだやれる そんな時こそ 要注意"
前の職場で貼られてたポスターの標語だけど、
頑張り屋さんほど無理しちゃって後で大変なことになるから、
職場の先輩の言うことはちゃんと聞くこと。
分かった?
『はーい』
『それで、おじさんの前の職場って、どんなだったの?』
「私も、とても気になります」
おっと、乙女ふたりが興味津々ですな。
でも、残念。
おっさんにだってひとつやふたつ、秘密があってもいいのです。
つまりは、 ナ イ ショ (ウインク)
『ちょっとキモい……』
「まだまだお若いのですね……」
あー、なんだか申し訳ない……
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てな感じで、ハズレおっさんと監視乙女とのふたり旅に新たな仲間が。
スライムちっくゴーレムの『アンチ』さんが同行してくれることになりました。
実は、あの旅で起きた事件を知ったマルミさんが、大層お怒りだったのです。
いえ、俺たちにでは無く、側を離れたせいでアシュトさんを失いかけたご自身への怒り。
それで、旅商人として真に独り立ち出来るまでは、もう絶対に離れませんからっていう熱い宣言。
いや、"お熱い"、だね。
ホント愛されてるよね、アシュトさん。
『アンチ』さんも、前々から思うところがあったようで。
スライムボディを得て、自由に動ける喜びを享受している『アンチ』さんですが、
お役目はアシュトさんの守護。
もちろん旅商人だってそれなりに自由なのですが、まあお仕事ですから。
もっと自由にいろんなとこを見て回りたい、という抑えきれない気持ち。
そんなわけで、選手交代。
アシュトさんの旅商人修行のお供はマルミさんに。
フリーエージェントな『アンチ』さんは、俺たちと同行することに。
そんな感じで、俺たちのぶらり旅も新たなるステージへ。
えーと、アシュトさんのプロポーズの方は、
一人前になるまでお預けってことで。
せっかくのメネルカ特製結婚指輪も、もう少しだけ待機中。
がんばれ、アシュトさん。
『おじさんも、もうちょっと頑張らないとねっ』
「その頑張りを支え続けるのが、私の使命」
はい、おふたりとも、これからも末永くよろしくねっ (ウインク)
『……』
「……」
まことに申し訳ございません……
あとがき
異世界生活満喫中のノアルさん。
楽しんでいただけているようで何より。
そしていつものノリで、
なんちゃってハーレム方面に向かうのも、
どうやら、お約束。
つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。




