23 情報
幌馬車は、警戒しながらも軽快に進んでおります。
引いているのは、お馬さんに変化した『アンチ』さん。
最初は銀色の馬もどきだったけど、一生懸命に変化の練習をした成果はバッチシ。
今はどっからどう見ても、普通のお馬さん。
『化けるの、上手になったでしょ』
はい、おしゃべりしなければ完璧にお馬さんですね。
『東方にはお話し出来るお馬さんもいるっていうから、ちょっとくらいおしゃべりしても大丈夫でしょ』
異世界、侮りがたし……
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「『アンチ』さんの情報のおかげで、裏社会の有力組織を幾つか壊滅させることが出来ました」
「今回の件の情報等の報奨は、本来は『アンチ』さんが受け取るべきものなのですが、登録手続きの都合上アシュトさんの使い魔という扱いになっているため、直接お渡しすることが出来ず申し訳ありません」
へえ、使い魔ですか。
それはそれでカッコいいと思うけど。
アシュトさんはそういうの気になります?
「そっちの方は全然気にしてないけどさ、ひとつ気になることがあるんだよね」
「『アンチ』ってさ、元々はスッゴいゴーレムのコアだったから並みのゴーレムには入れなかったんだよね」
「どうしてスライムなんかに入れちゃったんだろ?」
おっと、確かに。
もしかして、あの銀色のスライムって普通じゃなかったのかな。
「スライム種はあまりにも多種多様なため各個体ごとの研究が進んでいないそうですが、極一部の特別な個体は竜種に匹敵するほどの能力を持つ、と噂されております」
「銀色のスライム、きっと強力な特殊個体だったのでしょうね」
相変わらず物知りさんですね、マーリエラさん。
ってか、そんな凄いの連れ歩いてたんだ、あの若造。
テイマースキルって、結構何でもアリっぽいね。
『ちょっとだけ、情報を思い出せたよ』
『えーと、名称が『メタルっぽいスライム』、だって』
おっと、朗報ですな。
そのまんまじゃなくて『メタルっぽいスライム』ですから、
セーフだよね、セーフ。
「うわっ、どえらい問題、忘れてたよっ」
どうしたんですかっ、アシュトさん!
「あのお馬さん、マルミさんがめっちゃ可愛がってたんだよね」
「『アンチ』とお馬さんが一緒になったんだから、いなくなったわけじゃないけどさ」
「ホントどうしよ、これ……」




