21 野営
街道からかなり離れた原っぱで、ひっそり野営中。
周辺警戒は、俺と『アンチ』さんのダブルチェック。
確実では無いけれど、やれるだけのことはやっとかないとね。
夕食の、マーリエラさん特製北方風スープ、美味し。
モレッタさんとの特訓の成果ですな。
アシュトさんも満足そうですよ。
片付けを終えて食後のお茶。
焚き火を囲みながら、みんなで今日の出来事を語った。
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「ありがとね、ノアルさんと『アンチ』のおかげで生きてるんだね」
「でも、俺たちを守るためにスライムになっちゃったんだ」
「ゴメンね『アンチ』、ゴーレムなのに」
『平気だよ、動けるようになって嬉しい!』
「私ともお話し出来るようになったのですね」
「初めまして『アンチ』さん、マーリエラです」
「特務司法官で、ノアルさんの妻を目指しております」
「よろしくお願いします」
『こんにちは、マーリエラさん』
『でも、もうとっくに奥さんでしょ』
『一緒にお風呂してるし、一緒に寝てるし』
あー、その件につきましては内密に願います。
まあ、ずっと一緒に旅してるし、全部見られてて当たり前、だったよね。
それよりも、今日のことを話しましょうか。
えーと、俺が『アンチ』さんを銀色スライムにぶん投げたせいで融合しちゃった、ってことですよね。
何だか本当に申し訳ない……
『あの時はあれしか方法が無かったでしょ』
『私は、動けるようになったから嬉しいんだけど』
あの若造が何者だったか、誰か心当たりとかあります?
「仕事柄、結構狙われやすいけど、そんなヤバいヤツの心当たり無いな……」
「複数能力持ちの歳若い凶悪犯罪者……ごめんなさい、情報はありません」
『ちょっと待っててね、もしかしたら何か分かるかも』
銀色スライムな『アンチ』さんが、何やら思案中。
いえ、見た目で分かるんじゃなくて、一生懸命考えてるって伝わってくるんですよ。
"念話"って、相手のことがどこまで分かっちゃうんだろ。
えっちっちなこと考えてるのが丸わかりだと嫌だな……




