19 ピンチ
「めんどくさいな、手間掛けさせないでよ」
アイツが指を鳴らしたら、背中のバッグから何か出てきた。
サッカーボールくらいの大きさで、ぐにょぐにょ変形しながら動いてる。
見た目は……自在に形を変えられる金属光沢の水風船、かな。
なんて言うんだっけ、あれ。
科学の実験で見たヤツ……
そう、水銀!
ゆっくり近付いてきたソレが、
ぐにょんって変形して広がった。
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デカい風呂敷みたいになったソレが、寝ている馬を包み込む。
馬っぽい形になってた金属光沢のソレは、あっという間に縮んで元の大きさに戻った。
捕食、されたってことだよな。
ってことは、スライム?
いや、金属光沢だから、メタルスライ……
おっと危ね、途中だからセーフ。
そう、いま考えるべきは名前じゃなくて対処。
ってか、あんなの徒手格闘しか出来ない俺と相性最悪だよ。
馬具ごと馬を喰ったってことは、ハンパな武器だと喰われるぞ。
「おっさんだけ喰っていいよ」
「馬車は探し物が見つかってからだぞ」
余裕こいてるな、若造。
確かに打つ手無しだけどさ。
スライム引き付けて逃げ回りながら、無い知恵振り絞るしか無い、かな。
『おじさん、聞こえる?』
はい、聞こえますよ、って誰?
『アンチって呼んでるよね』
おっと、念話ですか。
初めまして、アンチさん。
『挨拶はいいから』
『私をアレに投げて、早く!』
アレって、どっち?
若造?
スライム?
『スライム!』




