16 お別れ
「長々と付き合わせちゃって、ゴメンね」
「おかげさまで、指輪、手に入れることが出来たよ」
「みんな、本当にありがとね」
おめでとうございます、アシュトさん。
でもまだプロポーズの準備段階なのですから、
旅商人修行の方、気を抜いちゃ駄目ですよ。
「ホントだよね、俺ってすぐ調子に乗っちゃうからさ、何か成功させても結局後でやらかすことが多いんだよね」
「今回の旅が上手くいってるのは、ノアルさんたちが一緒にいてくれるおかげです」
「ホント感謝してます、ありがとね……」
「ホントにねえ、どうしてこんなになったんだろ」
「ちっちゃい頃のアーちゃん、可愛いだけじゃなくて真面目で慎重で、大人みたいに考えることの出来る賢い子だったんだけど」
「まさかこんな風になっちゃうなんて、ねえ……」
「ちょっと姉さんっ、こんな風ってどんな風なのさっ」
「ってか、そういうのをどうにかするってこともひっくるめての修行の旅なのっ」
「あんまりイジワル言ってると、子供が出来ても連れてこないからねっ」
「そういうとこがお調子ものだって言ってんの」
「ごめんね、ノアルさん、マーリエラさん」
「こんなのだけど、これからもよろしくお願いしますね」
こちらこそです。
アシュトさんやモレッタさんとのご縁、
末永く大切にします。
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モレッタさんや従業員の皆さんと、笑顔でお別れ。
なぜか集まってきた近所の子たちにも、手を振ってお別れ。
たぶん湿っぽくはならないだろうなって思ってたけど、
想像以上にカラッとしたお別れでした。
また来たくなっちゃうよね、この街。
「ハグ、しなかったのですね、モレッタさんと」
「もしかして、私に遠慮したのですか」
いえいえ、違いますよ。
あの宿ではモレッタさんのご厚意にいっぱい甘えちゃいましたが、
物理的に甘えるのだけは絶対にNGって、
ひと目見た時から決めてましたから。
「御心、強いのですね」
「ノアルさんらしいような、らしくないような……」
ブレブレでふらふら生きるってのを真っ向から貫くのが、俺らしいかなって。
まあ、今回は上手く出来たってことで。
「『アンチ』さんのゴーレム素体も手に入れることが出来たら、大成功でしたのに……」
あー、残念でしたね、あれ。




