12 お勉強
旅は、驚くほど順調。
幌馬車道中は安全・快適、
アシュトさんのおしゃべりは軽妙洒脱、
マーリエラさんは……いろいろ自重してくれております。
そんなわけで、あっという間に国境を抜けて、アレノマ王国入り。
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アレノマ王国は、北方魔導国家群と呼ばれる国のひとつ。
例の大昔の戦乱の頃、種族による地域分け以外の区分けもあったそうです。
大陸の南側には身体能力に優れた獣人たちが集まったように、
北側には魔法を信望する者たちが集まった、とのこと。
元々、この大陸の北方は魔力の素となる魔素が濃い地域が多く、
そこに住む人たちは生まれつき魔力が高いのだとか。
そういう土地柄なので、魔法との共存が土着の文化として根付いたのでしょうね。
魔力の強い子が生まれやすいという土地柄。
そういう子たちが魔法を上手に扱えるようになるための教育システム。
その子たちが成長して、よりブラッシュアップされた教育システムで次代の魔法使いを育成。
そんな感じで、魔法使いたちが寄り集まる集落がどんどん発展。
そのうちに、北方には凄い魔法使いが大勢いるぞっていう噂が広まっていき、
教えを乞いに来た魔法使いや、
チカラを疎まれて送られてきた魔力持ちの子たち、
そういう人たちの受け皿にもなっていくうちに、
魔法使いたちの集落は更に大きくなり、やがて国と呼ばれるように。
でも、人が大勢集まるといろいろあるわけで。
流派とか、教育方針とか、カリスマのある凄い天才の台頭とか。
それぞれに譲れないものがあると、独立する集団も出てきたりして、
やがて"魔導国家群"と呼ばれるように。
ただ、強大なチカラを持った魔法使いの集団というのは、
ある種の人たちにとっては宝の山なわけで。
利用しようとする連中との諍いとか、
魔法使い同士の確執とか、
長い年月いろいろあったため、
今はどの国もかなり排他的だそうです。
リグラルト王国と国境を接するアレノマ王国は、
閉鎖的な魔導国家群の中で唯一、
交易の窓口として開かれている国。
その中にある小さな独立国家が、"メネルカ魔導国"
魔法に関する知識と伝統では世界最高峰と言われている、
俺たちが向かっている目的地。
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以上、幌馬車内での歴史と地理のお勉強の時間でした。
レクチャーありがとうございます、マーリエラ先生。
とても分かりやすかったですよ。
それにしても、建国以来男子禁制という国に、
結婚指輪とゴーレムボディを求めて向かっているわけですが、
はてさて、どうなりますやら。




