第三十六話
主さんが練り上げる魔力を感知し、遂に隊長さんですら心が折れたようだ。「使命を全うできず申し訳ございません」とか言っている。ギルマスは流石に折れてないが、どうすることもできないって状況。
そろそろ、動いてやらないとみんなの精神がやばくなりそうだからギルマス達に声を掛けた。
「おい! 心配すんな! 俺が倒すから! そこでしっかり見とけ」
力の宿った俺の言葉が全員に届く。その時全員が安堵する。実家のような安心感ってやつだな。
俺は主さんの方に向き直り、ほんのちょっと力を込めて目を見つめる。
「最後になにか言い残すことはあるか?」
「……」
「……」
「……ふぅー、世の中、上には上がいる。そんなこと、ずっと前から知っておった、……ただ、ここまで隔絶した力を持つ者がおるとはの、世界はまだまだ広いのぉ」
「最後に、か……そうじゃな……儂を討つそなたの名前を知りたい。教えてくれるか?」
こいつらは、少しの力を見せると本能で全てを理解できてしまうんだよな。どうあがいても俺に勝てないって事が……
前回の天災級同様、強者の矜持を見せてもらい満足した俺は、魔法を解き本当の名前が伝わるようにしてから名乗った。
「ツカサだ」
「不思議な名前じゃが、美しき名じゃ。……そなたのような強者に討たれるなら本望じゃ」
……
ドサッ
主さんは、俺の名前を聞き命を終わらせた。
本当は情報収集の為に生かしておいても良かったんだけど、なんか嫌だったからやめた。どうせそのうちわかるだろうし。
ピースサインをして城壁を見ると、今日一の大歓声
「英雄! 救国の英雄! 王国の守り人だ!」
……恥ずかしい。
「英雄殿、これで益々創さんが喜びますな」
「バサシ、お前俺の事完全に馬鹿にしてるよな?」
「ツカサ! お前はバケモンか! あんなデタラメな奴を瞬殺? ありえんだろ? ひょっとしてコンセより……」
「コンセさんには会った事ありませんが、俺の方が強いですよ」
「お前なぁ……まぁいい、強者は常に大歓迎だ」
「……大切な冒険者を四人も、失ってしまったからな……」
「ギルマスのあんたがしみったれた事いってんじゃねぇ!って言ったろ! やっぱり私がギルマスに就任するべきか!」
「!」
「お前! いや、お前たちなんで! 死んだはずじゃ?」
「そっちの、仮Sに生き返らせてもらったようだな。これでまた、存分に魔物を斬れる。感謝するぞ」
「んな? そんなこと可能なのか?」
「こうして、生き返ってるんだからいいじゃねーか! 細かいこと気にすんなよ!」
「全然細かくねーよ……おい! ツカサ」
「魂はまだ肉体に宿っていたので、肉体を再生させてやれば生き返るのが道理です。ちなみに死後時間が経っているのは無理ですよ」
……無理じゃないと思うけど。
「そんな、道理が通るか!」
「ギルマスがしみったれた事いってんじゃねーよ! んなことどーでもいいんだよ! 現実に生き返った! それが全てだ。冒険者はそれでいいんだよ!」
「しみったれた事は言ってないが……だが、まぁ言ってることは正しいか。ツカサありがとう」
「構いませんよ。それより俺とバサシの審査早めにお願いしますね」
「ああ、文句なくSランクだが書類等の手続きがあるから少しだけ待っててくれ……改めて王国を守ってくれてありがとう」
「構わん、嫁の故国を守っただけだ……」
その後、喧しいバサシとラメリはほっといて事後処理が始まった。一度も声を発しなかったSランク二人が、魔物の死骸を数分の内に何かに収納し、血だらけになった大地に雨を降らせて洗い流した。
そして、俺に頭を下げ礼を言って王都内に戻っていた。
なんか、まともな二人組だったな……
って思ったけど。
「おい! あいつらまた私の素材横取りしやがったぞ! 銭ゲバが! これで何回目だよ!」
「あれはお前のものではない、俺達が討伐した分だ。他の防衛組が討伐した約二割はちゃんとあっちにまとめられている。金には困っていないのだから別に良かろう。困っているなら、斬って斬って斬って斬りまくればいい」
「何割とかこまけぇ事はどうでもいいんだよ! 私の物をとってるってことがいけねぇーんだよ!」
……頭がぶっ飛んでるからこそ、あそこまでの力を手にできるのか? ……さてと、俺もバラゴイズに一旦帰ろうかな。
「そうか、ではこちらから連絡するからまた来てくれ。多分今回の件は功績が大きいから、王と謁見する事になるぞ」
「……」
「おい! 返事しろ! 頼むぞ!」
「……転移」「お……」
面倒くさい。
「とりあえず、終わったぁ。まずは、ギルドに報告に行って、遂にお待ちかねの……デートだぁ!」
「お前ら二人ともお留守番な! 宿屋から出てくるなよ! お前らが来ると楽しい気分が台無しになるからな!」
「……拙者は構いませんが、ラメリよ。何か言わねばいかぬ事があったのではないか?」
「はい……師匠、少しだけ真面目に私の話を聞いてくれますか?」
「それって、こないだ言い掛けた事か?」
「そうです」
「もう、必要ない気もするが、お前の頼みだしちゃんと聞くぞ。……でも、その前に俺から一つある、間近で見た本当のSランクはどうだった? どう思った?」
「率直に言って、凄いの一言です。やはりあそこまでの力があるからこそ貴族とも対等以上にいられるのですね。実感できてよかったと思っています。そして、より一層何をしてでもSSSランクを目指さねば、と決意しました」
「そっか! 良かった。万が一心が折れてたらどうしようかと思ってたぞ。自慢じゃないが俺の力は強すぎてSランクの力を実感出来ることはなかっただろうしな」
「気遣いありがとう。私は折れない、どんな事をしてもSSSランクになる」
「わかった! 任せろ。……じゃあラメリの話を聞かせてくれるか?」
「……実は」
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