第三話
「つーさんおかえりめちゃくちゃ強くなってるし、チートも完璧に使いこなしているね」
「そんなつーさんにプレゼント、殴れるなら殴ってもいいよ」
創ちゃんわざと言っているだろう? 確かに一発ぶん殴ろうと思っていたが、創ちゃんと対面した瞬間辞めた。
自分が強くなった分一億年前よりはるかに創ちゃんを良く理解できる。こんなの絶対に殴れない。
チートをマシマシでもらったがこんなの無理だ。水鉄砲と核爆弾より戦力に差があるぞ。
「そういうのがわかるようになっただけつーさん成長しているから、自信もっていいよ」
「んじゃさっそく行ってみよう! 今回の世界は一般的な異世界小説です! いってらっしゃーい」
え? いきなり!? なんて言う間もなく視界が暗転し意識が飛んだ。
つーさんが旅立ち創ちゃんが一人になると、背後から絢爛豪華な男性が近づいてきた。
「遂に出発したのですね……運命を決められた子が……」
「あ、天使長。……ああ今出て行ったよ」
「彼の子はこの修羅の道を乗り越えられますかね?」
「つーさんなら乗り越えられるよ、乗り越えてもらわないと困る……彼が彼だけが、真なる闇から出でる混沌を止める運命を背負った宿命の子なのだから」
「そうですね……全ては彼のジェネリックパワーにかかっているのですね」
「…ぷははは、なんだよジェネリックパワーって! マジ意味不明なんだけど!」
「あははは、いやいや創さんの真なる闇からとかも中二病全開でやばかったですよ?」
「お前がそういう感じで声かけて来たから乗っただけよ。マジでつーさんにはそういう感じの伏線とかないから、てか俺に止められない混沌とかないから」
「はい、もちろん存じ上げております。創さんは完全無欠の創造神ですから、ではつーさんを拝見しながら創さんも沢山仕事頑張りましょう!」
「うげ! やっぱり仕事の事か、全知全能で完全無欠でも嫌なものは嫌だしやりたくないことはやりたくないんだよね」
「はいはい、頑張りましょう」
「うぇーい」
そんな会話を知る由もないつーさんは無事異世界小説内に到着していた。
目を覚ますとそこはベットの上。軽く周りを見渡し現状確認をする。そこで俺は本当に異世界に転移したんだと実感できた。
なぜなら、俺の居る部屋の窓から外を見ると見たこともない動物に荷車が引かれ。明らかに人間とは異なる獣人と呼ばれそうな人たちが普通に歩いているのだから。
それに異世界物のアニメでよく見る中世ヨーロッパ風の街並みだし。
しかし、これが本当に小説の中の世界なのか……創ちゃんが言っていた通りみんな普通に生きているんだな。
一人一人が生活をしていて一つの世界を作っているんだ。
「てかやっぱり夢じゃなかったんだよな……」
そう独り言ちた。
まああの創ちゃんを見て実は夢でした、とか言われても逆に信じられんよな。あんなの夢でもありえないくらいやばいもん。
とりあえずどうしようか? 創ちゃんのパシリはするにしても、特に指示があったわけでも期限が決められたわけでもないし。
まずは俺自身が異世界を楽しむか! その過程で、主人公を見つけてなんとなく倒して小説内創造神に来てもらおう。
そうと決まればまずは情報収集! 創さんは一般的な異世界物って言ってたから、やっぱり冒険者ギルドに行って冒険者になってランクをあげたりテンプレを味わってみよう。
未だに小説内創造神、略して小造を呼び出すパシリというお使いは面倒だけど異世界小説好きにはこの状況はやはり楽しい。
面倒だが楽しもう!
そう心に決めるとどこからともなく一枚の紙が落ちてきた。
つーさんへ
いっぱい楽しんでもいいけど、一年も二年もいたら退屈だからそこまでは時間かけないでね?
あと主人公の情報教えとくね。
主人公はレイ・ササキ
男の子十八歳で神様の間違えで死んじゃったからチート貰って転生した系だよ。
この世界ではありえない無詠唱、全属性を使えてステータスもマックスの激つよ主人公です。
異世界を楽しみつつよろしくね!
バイバーイ
創ちゃんより
なるほど、あんまり長居はできなさそうだな。念のため早めに接触しておくか。
そして、レイ・ササキ君か……無詠唱の全属性、厨二心がくすぐられるワードだ。
ざっくりとした方針も決まったし、まずは外にでよう。てかここはどこなんだろう?
とりあえず一階に降りるか。
一階に降りるとそこは宿屋だとすぐにわかった。わかったのだが、俺は宿泊料金を持っていない! さっそくピンチなのだが?
(創ちゃんめ、こういう時は餞別の金貨を数枚入れておくものだろう)
ちょっとあせる俺に女将さんらしき人が話しかけてきた
「あらお客さん、うちに泊まっていたかい? おかしいね、私はお客さんの顔は忘れない質なんだけど」
やばい、いきなり怪しまれている
「どこにでもいる顔ですから記憶に残ってないのかもしれませんね」
「こんなイケメン忘れる奴がどこにいるのさ!」
イケメン? 俺はせいぜい中の上の下だぞ?
「まあ昨日は大騒ぎしていたし、娘が接客したのかもしれないね! うちは前払いで料金をもらっているから朝食を食べてから出発しな!」
「ありがとうございます! 所で昨日はなんで大騒ぎしていたんですか?」
宿代は創ちゃんがうまいことしてくれたんだと自分の中で決着を付けて、情報収集がてら会話を切り出すと縦にも横にもでかい女将さんは目を見開いてびっくりしながら話し出した。
「なんでって、今は魔王が討伐されたからどこに行ってもお祭り騒ぎじゃないか? しかも今日は勇者レイ様が凱旋する日だもんで前夜祭だって大騒ぎだったよ」
「お客さんもそれ目当てで来た口じゃないのかい?」
お! 俺は小説内でも最後の方。それかもしかしたら小説自体はもう終わっていて、その後の話的な所に来てるのかな?
というか、うまく今日会ってしまえば俺の用事も終わってしまう可能性も出て来たな。
「ああ、それですよね。もちろん俺もそこら中で酒飲み歩いてましたよ。是非勇者レイ様にもお会いしたと思ってますけど、どうにか会えたりするんですかね?」
「さすがに会えないんじゃないかい? 昔は普通に冒険者ギルドでクエストをこなしていたから街中で見かけていたけどA級位になってから色んな所に行くようになって、S級になってからはもう本格的に魔王討伐に乗り出していたしね」
「それに今となっては勇者様、んで王様と謁見して旅の仲間でもあるお姫様をお嫁にして大きな領地を貰うんじゃないか? って言われているからね」
「そうすりゃ勇者様兼領主様だ、簡単に会う事なんてできないだろうさ。でも困った人を見過ごせない人でもあるから、案外お客さんが困っていたら助けにきてくれるかもね」
女将はそう言って大きな体をゆさりながらカウンターの奥へ消えていった。
ササキ君は見事に物語を終わらせて、ハッピーエンドを向かえるわけか……というか女将今大事なこと言ったな
「冒険者ギルド、A級S級か……」
どこぞの戦闘民族のようにわくわくしてきた! もう我慢できん。この異世界名物の硬いパンと薄いスープを流し込んで冒険者ギルドに行こう!
その後女将にお礼を言って、冒険者ギルドの場所を教えてもらった。
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