第二十九話
「そ、そんな。私はいままでどれ程の……」
「どれだけの獣人を傷つけて……」
どうやら、悪い方へは転ばなかったようだな。まぁ、差別をやめない!って言ってもこれ以上こいつに構うことはしなかったが。
しっかり後悔してるなら、もうそれでいいや。
「……ラメリ殿と言ったか? どれだけ謝罪しようと無意味なのは理解しているが、謝罪させてほしい。今後今までのような発言は絶対にせん! 本当に申し訳なかった。すまない」
頭を地面に擦りながら村長は謝罪する。それを見たラメリは
「わかった。それで構わない。……だからもう二度としないで欲しい」
その後もずっと謝罪し続ける村長を村へ送り届け、俺達は帰路へつく。
「……師匠今までありがとう。世話になった。これで袂を別つができればこれからも友人として……」
「その謝罪受け取ろう! と言うことで、ラメリはまた弟子として復活しました! イェーイ! これからもよろしくな!」
「そんな! いいのか!?」
「俺がいいって言っているんだから、良いんだよ! ラメリ……カッコ良かったぞ」
「師匠……」
「うむ、ラメリよ、素晴らしかったぞ! 貴様は本当に美しく清きおなごだ。拙者の嫁として迎えたいくらいだ」
「バサシ殿……ありがとうございます。ですがお戯れはおやめください。あなたのように眉目秀麗な方の妻に私のような醜い女など不釣り合いです」
「ラメリ……そんなこと……」
「馬鹿者!!」
「……えぇ!」
「貴様のどこが醜いおなごなのだ! それほど美しき心を持った貴様を置いて他に美しきおなごなどおらん! それにこれから全ての差別をなくそうと思っている貴様が自身を蔑んでどうするのだ! そのような者の考えに付き従う者など居らんぞ!」
「バサシ殿……」
「誰がなんと言おうと貴様は美しい! 偉大なるツカサ様の従者を務める拙者が言うのだ、絶対に間違いなどない! 自信を持て! 二度とそのような言葉を言うでない! ……良いな!」
「……先程の言葉は失言でした、申し訳ございません。もう二度とあのような事はもうしません」
「うむ! その謝罪受け入れよう! 夫婦の件も考慮しておくように」
「バサシ殿……、畏まりました!」
「なんだよこれ……うまくまとまってるからいいけど……てか軽くプロポーズしてるじゃねーか」
「ご主人様、小さきことを気にしてはなりません。好きになったおなごがいるのなら何をおいても攻めなくてならないのです。ご主人様の様にウジウジと魔道具を作っている場合ではないのです!」
「はぁ! 俺がいつウジウジしてたよ! 全然してませんけど? カラミさんとはそういうんじゃないんだけど?」
「拙者はカラミの事など一言も言っておりませんが? あのおなごが好きなら帰ってすぐに声を掛ければ良いではないですか?」
「うっ、俺の飼い犬のくせに生意気な……」
「お師匠様、その件について少しだけ申し上げたい事があったのですが……」
「え! なになに! もしかして、カラミさん俺の事なんか言ってた!?」
「実は……」
「ツカサさん! 聞こえますか!」
凄くいいタイミングで当の本人から連絡が入ってきた。ラメリの話がめっちゃ気になるけど、一回っきりの通信魔道具を使ってまで連絡してきたという事は、なにかまずい状況になっているんだろう。
なにかわかんねーけど、スパッと片付けてラメリの話の続きを聞こう。
「ラメリ、その話はあとで聞く。今はこっちが先だ」
「はい、魔道具を使ったという事は、かなりまずいことが起こっているのでしょう」
「だな。……カラミさん! 聞こえてる! どうした?」
「実は……魔物の発生が確認されました! 大量発生とまではいきませんが、それなりの規模で増えています! もし可能であれば即帰還して頂けませんか? タイミングが悪いことに現在街に高ランク冒険者が三人しかいないのです。ツカサさん達と合わせて六人はいないと厳しいものになると思います。どうかお願いします」
「……転移」
「ツカサさん! 通信届いているでしょうか! ツカサさん!」
「聞こえてるよ。もう大丈夫……」
「!」
「……え? ……なんでここに!」
「あっちの討伐はチャッと片付けて、帰ろうとしてた所だったんだよ。んで通信が来たから転移魔法で帰ってきた」
「転移魔法……それほどの魔法も使えるのですか……」
「ああ」
「後でじっくり……食事をしながら聞かせてください……もっと色々知りたいです……」
「じっくり……食事……知りたい……」
「……いいですか?」
「もちろん! 速攻で魔物蹴散らして来るから、ちょっと待ってて」
「はい! 待ってますね! では、魔物発生の概要ですが……」
きたーついにきたー、ラメリの情報貰う以前にゴールが見えて来たぞ! ヒャッホー!
……んで、魔物発生だけど
数時間前に中規模の魔物発生が確認された。その群れはどんどんこちらに向かっているらしく斥候の話ではあと二時間もせずに街に押し寄せるだろうと言われている。
その数およそ五万。五万で中規模って……え? って思ったけど大量発生の場合は余裕で十万超えるらしいし。そもそもこういう時の群れは基本低ランクばかりなんだそうだ。だから、中規模くらいなら高ランク冒険者が数人と防衛に必要な人間がそろっていればなんとこ持ち堪えられるらしい。
それでも、数の暴力は凄まじく毎年高ランク冒険者がいても街や都市が陥落している。だから一切気を抜くわけにはいかない。
……元より気を抜くつもりなど毛頭ない、俺はこれから大事な大事なデートが待っているのだから。
さっさとこい、魔物ども!
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