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第十五話




「みんなどうして? 現世には来れないじゃなかったの?」



「で、あったが些かおかしなことがあって無理して出てきてしまったのじゃ。なに、処理はすぐに終わる故少し待っておれ」



「……え? 処理って?」



「我らの寵愛を一身に集め神になるトウマを差し置いて、何故主は魔王を討ったのじゃ? 貴様の様な端役は黙っておればよいのじゃ」



「創造神様、俺そんな事気にしてませんから!」



「優しいのー、だがそうはいかぬ世界には役割というものがある、そこの主はそれを超え余計な事をしでかした。罰はきっちり受けてもらわねばならない。闘神、魔法神よ……」



「「は! すぐに首をお持ちします」」



「そんな! やめてください! ()()()()()は友達なんです!」



「ほんに優しき子じゃ……だが、こればかりはダメじゃ。先ほどの話だけではない。あの魔王を倒す一瞬間違いなくトウマを超えた強さを持っていた。それはそこの従者も一緒じゃ、そんな存在この世界にあるはずがない。もしかするとイレギュラーな存在が他所から紛れ込んだのやもしれぬ、早めに対処せねばならんのだよ」





「……どうした? 闘神、魔法神よ、早くいかぬか?」



「二人ならもう気を失ってるぞ?」



「なに?」



「ついでに言えば他の神々もうちのバサシが全部終わらせてる」



「なにを言って……」


 

 見事なまでに驚愕に顔を染める小造は、怒りでここが現世だという事も忘れ世界を滅ぼすほどの力を込めて俺に殴りかかってきた。


 



 所を、バサシに瞬殺された……



「もう少しいいだろ……」



「拙者はもう終わらせたいのです。この世界には友達もいませんし……」



 ……友達?


 ……どういう?




 ……こいつ、まさか



「……お前もしかして、“イーフさんも眷属に”とか、“イーフさんは友達です!” とか言ったときに自分の名前がなかったから拗ねてんのか?」



「もちろんそうですが?」



 こいつ面倒くさいけど素直な奴だな……ただパグのバサシだったら可愛いのに。こんなイケオジの拗ねた姿とか見たくねーんだよ。



「……トウマ君、リートの事も友達だと思っているか? 眷属に欲しいか?」



「え? そ、それはもちろん思ってますけど……リートさんはイーフさんの従者だからそんな事僕が言ったらダメかと思って言いませんでした。それにもしイーフさんが来てくれるならリートさんも一緒に来るもんだと思っていたので……気を悪くしていたらごめんなさい。」



「だってよ! よかったな!」



「うむ! その謝罪受け入れよう! 短い付き合いになるが、友として認めよう!」



「ありがとうございます!」


「うざ! なんでそんな上からなんだよ! しかも、トウマ君もそれ受け入れているし……まあいいや、とりあえず神様達起こして創ちゃん呼ぼう。バサシ!」



「はい、既に起こしてあります」



「ご苦労さん、では……創ちゃんお願いします……」






 何日ぶりか覚えていないが、久々に会う創ちゃんはやはり神々しさが段違いだ。



 ただ、小造に対抗して部下らしき神々を引き連れてくるあたりがなんとも小物……



 というか始めて部下の神たちを見たがやばい強さばっかりだな。チートのあげようがない! みたいな事言ってたけど本当だ……



 でも……そんな神たちより俺の方が強いんだけど……創ちゃんチートマシマシって言ったけどマシマシ過ぎない?



「いいのいいの、それに今回は部下が一緒に行きたいって言うから連れてきてあげたんだよ? ね? ね? みんなそうだよね?」


 

 久々で心読まれるの忘れてた。すみません創造神さま。



「ええ、ええ、そうですとも、そうですとも。どーしても創さんについていきたくてお願いしたんですよ。そうだよな? 激務で忙しい神達よ?」



「「「……はい」」」



 パワハラだ……



「ち、違うよ! 創ちゃんそんな事しないから! 誤解だよ! ……今回の異世界小説も楽しかったなー」



「うわ、強引に話題を変えに来た……」

「創さん! 切り替えは大事ですぞ! ナイスです!」



「でしょ! やっぱりバサシは分かってるな! ……よし! この世界の創造神よもう全て理解したな? お前には“アーヒール”という名をやろう! これからもこの小説の世界の管理を任せるよ! なんかあったら僕の部下に相談しな! トウマ君が神になったら一度遊びにおいで? その権利をあげよう! 」



 今回は最初から神の力ガンガン出してたから、創ちゃんが来た瞬間、力の差をすぐに感じ理解したようだった。そのおかげで全てすぐに終わった。前回同様小造達に傅かれ満足気の創ちゃん。又もや忠誠を誓われている。



「……二番目の小造だから、アヒルなんですね?」



「え? 何のこと?」



「俺が小学生一年生の時親父が成績表見ながら、アヒルが三匹って笑いながら言ってたからどういう意味か聞いたら、数字の2がアヒルに見えるから二をアヒルって言うんだ。って言っていました」



「一歩踏み出した後の、二歩目も大事だよな……」



「なんかうまくまとめようとしても、まとめられてませんよ?」



「いいのいいの、じゃあ僕達は帰るね! 後は声かけてくれたら帰れるようにしとくから!」



「あ! ちなみに、アドバイスなんだけど。トウマ君は多分、自分が小説内の登場人物だって受け入れられないだろうから、うまいことしてあげた方がいいよ? じゃーね」



 自由な人だな……他の神様達も大変そうだ。アーヒール達も泣きながら見送っている。そこでトウマ君達に目をやると、トウマ君以外は創ちゃん登場に耐えることができず気を失っている。トウマ君は元から神に準ずる力を有していた為かギリギリ耐えていたようだ。まあ今回はそれが仇となったようだが……




「え? え ? え?  物語の登場人物?  僕が? そんな噓でしょ? これまでの人生は? え?」



 前回のレイ君が変なだけで、普通はショックデカすぎるよな……


 というか、わざわざここが小説の中だって言わなくてもいいのにな。創ちゃんの言葉ってそれが嘘じゃないって心でわかっちゃうんだから。

 まあ創ちゃんからしたらそこまで気を遣う必要もないのか。



 俺はトウマ君にそっと手を差し伸べて優しく声を掛けた



「トウマ君大丈夫だよ……」


 そう言うと、トウマ君は糸が切れた操り人形の様に倒れ込んだ。驚いたことにそれを支えたのはバサシだ。その行為を嬉しく思いつつトウマ君に記憶を消す魔法を唱えた。


 それは俺達に関する記憶も一緒に消す魔法だ……なにがきっかけでこの事実を思い出してしまうかわからないので全て消すことにした。少し寂しいがトウマ君の為だ……魔王討伐は三人で行った事にしてもらう。




「アーヒールさんも、俺達のことは黙っていてくださいね?」


「わかっておる」


「お願いします。もしトウマ君達が神になってこの事を話しても良いと思ったら話しても構いません。アーヒールさん達もずっとトウマ君に隠し事しているのもつらいでしょうから」



「……お気遣い感謝する」



「その上でまた俺達に会いたいと言ってくれたら連れてきて下さい」



「承知した」



「頼みました。……ではアーヒールさん達は自分の世界に戻ってください。俺達も姿を消して最後を見届けます」



「……余計な世話かもしれんが、別れの言葉は良いのか?」



「ずっと見てたでしょ? もう別れの言葉は済ませてますから。あれ以上はいいんですよ」



「……」




 アーヒールさん達が消えた後、俺はこの世界に向けて“獄炎のイーフ”に関しての全ての記憶、記録を抹消する魔法を放った。一瞬で終わったがこの作業は少しだけ寂しさを感じる。……気を取り直してトウマ君達に目をやると、バサシが皆の頭を撫でていた。きっと自身の中で別れの言葉を述べているのだろう。




「貴様らは、偉大なるツカサ様の従者になる資格を持っている……」



 ……違った。ただの洗脳だ。頭をひっぱたき、トウマ君達が目覚めるよう魔法を掛けた。

 

 

 もちろん、最後のシーンをやり直さないといけないので魔王も生き返らせている。バサシのチートテントの効果によって一度死に、俺にも殺されて、そしてこの後トウマ君にも瞬殺されるとは哀れな魔王だ……



  



 様々な思いを胸に俺はこの世界に対しても別れを告げそっと姿を消す。







 




 誤字脱字ありましたらお願いします。


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