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第十三話

 



「おはようございます。皆さん体調も万全の様ですね? では朝食を取ってから出発して魔王城に突入でよろしいですか?」



「オッケーだよー」


「そうですね! ただ、昨日寝苦しかったから少し水浴びでもしたいですね。いくら魔法で清潔に保てるとしてもやっぱり気持ち悪いですもん」


「そうだな、でもこんな砂漠じゃ水場などないし。魔法での水浴びは少しでも魔力は温存しておきたいから我慢してくれ」



「はい、もちろん大丈夫です! もうちょっとで本当に魔王と戦うんですもんね! それくらい我慢します! でも倒したら思う存分温泉旅行しますよ!」



「あはは、トウマは本当に温泉が好きだな」


 


 ほのぼのとした会話の中、一人だけスッキリした顔ででてきたバサシは自身の髪を自慢するように搔き上げ無駄にイケメン具合を増していた。


 こいつ黙ってたらマジでイケてるおじさんなのにな……


 そんな憐れみを含めた目線をバサシに向けていたら、俺たちが野営していた場所のすぐそばで異変が起こった。

 

 地面が急にグラグラと揺れだし湯気を上げ始めたと思ったら、木々が生い茂り一瞬で温泉らしきものが出来上がったのだ。

 





 「……と、トウマこれはお前の仕業か? 魔力は温存と言ったのに、地形を変えるほどの魔法を使ったのか?」

 


「ちっ違いますよ! 本当に俺じゃないですよ!」


「本当に俺じゃ……」




「……え? はい……ここで……温まって行けって? はい、はい」





「……えっと、さっき俺が温泉旅行の話をしたから地母神様が温泉だしてくれたみたいです。決戦前だから温まって綺麗にしていきなさい! だそうです……」



「ほかの神々もちゃんと応援してるからしっかりね! まあ負けるわけないけどって言ってました」



「……そうか、いろいろ言いたいことはあるのだが、神々がそういうならしっかりと温泉につからせてもらおうか」



「そ、そうだね。神々が仰ってるしねー」

 


 俺達は出発の直前出鼻をくじかれた。だが、温泉につかってみると本当に気持ちが良く体の疲れが取れているのがわかった。それは皆同じ様でとても良い顔でくつろいでいる。


 そんな中先に入りあがっていたズーから悲鳴のような歓喜の声が聞こえてきた。



「ズー! どうしたの!」


「敵ですか!!」


「ちがうの! ……めちゃくちゃ強くなってるの!」


「「は?」」


「……温泉上がった後信じられないくらい清々しい気分になって何気なくステータスを確認したら、地母神様の加護がついているし、強力なスキルは増えてるし、全ステータスが五割上昇してるの。しかも、“神の眷属(仮)”っていう称号も増えてる……」



「確かに、今自分も確認したらズーと同じように全て上昇していますね。どの神の眷属になったのか、(仮)というのは不明ですが、恐ろしい効果のある温泉ですね……」



「すっごく嬉しいんだけど、これもう人外の仲間入りじゃない? 私ですらSSS級飛び越えた強さになってるよね?」


「そうですね。高齢で引退寸前ではありましたが以前お会いした事があるSSS級冒険者 “雷鳴のダラド”さんより間違いなく強いでしょうね。僧侶の職でそれほどまで強くなってしまうとは……トウマはどうですか?」





「……自分はちょっと違います。ステータスは元からMaxでしたので上がりません。それに地母神様の加護は既に持っていますので加護自体は増えていません。……ただ、称号が“神になることが確定した男”になってます」



「「え?」」


「前までは“神々の寵愛を受けた者”とかだったんですが、どうやら死後、神様になるみたいですね。びっくりしました。あははは」



「ということは、俺達はこのままトウマの眷属として従属神の様なものになるのか?」


「多分そうです。でも神様達はガーボさん達が望まないなら、ならなくてもよいと言っています。ですから(仮)なんだと思います」


「ははは、俺達はとんでもない奴に付いてきてしまったんだな」


「でもずっとみんなと一緒なら私は従属神としてトウマについていくよ」



「そうですね、トウマをほっておいたら大変な事になってしまうでしょうからどこまでもついていきましょう」



「じゃあこれからもずっと一緒ですね! あーよかった。みんながいればどこに行っても寂しくないですもん」



 微笑ましい、実に微笑ましい。俺はおじいちゃんが孫を見るような気分で三人を見つめていた。これからもこの絆がずっと続くことを祈るよ。


 そんな感傷に浸っていると、トウマ君が俺にも尋ねてきた。



「ええ、私達も同じ効果があったことを確認できました。ただ、眷属の称号はなかったです。流石にそこまでの縁は結ばれていないのでしょう。もっとも私の場合はもしなれたとしても辞退して人間としての生だけを謳歌したいとおもいます」



「そうですか……()()()()()ともずっと一緒にいられたら良かったんですが」



 付き合いは短くとも同じ志をもって旅した仲間だ、本気でそう思ってくれてるんだろうな。本当にトウマ君は優しい奴だ。



「その気持ちだけでありがたい。まだ終わっていませんがあなた達と旅ができて本当に良かったですよ」


 これは、俺の偽らざる本音。



「……イーフさん」



「さあ、ここからが本番ですよね? 最後まで気を抜かずに行きましょう」



「……はい! わかりました! ……でも、もし、もしも眷属となれる称号を得ることができたらもう一度だけ考えてみてください! やっぱり()()()()()とも一緒にいたいです!」




「……ええしっかりと考えさせてもらいます」


 

 俺はありえないことだと思いつつもトウマ君に言われたことが嬉しくてつい笑顔で返事をしてしまった。





 その後、意識を完全に魔王討伐へと変化させたパーティーメンバーは体を温めるように適度な速度で移動しつつ、遂に魔王城へ。




「……ここが、魔王城」



「なんか、ゲームに出てくるthe魔王城って感じの建物だな」



「なにそれ? またトウマのわけわからない単語がでてきた」



「はいはい、おしゃべりはそこまでにしてさっそく突入しますよ? 今日はここに来るまで不自然なほど魔物との戦闘がなかったのでここに戦力が集中していると思われます。気合を入れて行きましょう!」



「はーい」


「わかりました!」


「では、トウマお願いします」



「はい……みんな絶対に死なないようにね! まだまだ人としてみんなと生きていたいから! ……突撃!」




 勢いよく城内に入ると、そこは魔物で埋め尽くされていた。しかもどれをみてもかなりの高レベル。だが、入るや否や魔力を高めていたガーボ君の強力な魔法により大半が消滅。それを皮切りになぜか気合の入っていたバサシの攻撃によりもう半分がいなくなった。




「今まであまり戦闘に加わっていませんでしたが、リートさんも相当な腕をお持ちですね。泉に浸かって力を上げたと言ってもそれ以前の実力ですでにSSS級の力があったのではないですか?」



「すべてはツカサ様の教えの賜物です。最後の戦いですので、少しでもお力になればと思いまして」



 え? 誰こいつ? と思ったけどうちのバサシだった。絶対に嚙みつくと思ったから時間停止の準備してたけど、なんか普通だ。まあ普通ではないけど、バサシにしては普通。なんで? と思ったけど、多分もうラストが近いから早く終わらせたいんだろうと結論付ける。だってさっきから早く行きましょう早く行きましょうってうるせぇもん。



 一呼吸おいて念のため、みんなに怪我がないか確認し更に進むと闘技場のような所についた。そこにはこれまたテンプレ的な魔人が四人おりそのリーダー格の悪魔の様な魔物が話しかけてきた。



「わかってはいたが、いくらレベルが高かろうとあの程度の魔物だけではどうしようもないか……やはりお前は危険だ魔王様には会わせられん! 魔王軍が誇る最高幹部である四天王全員の力を持ってここで死んでもらう!」




 この四天王は全員強いな。タイマンならパワーアップしたガーボ君とズーさんでやっと勝てるレベル。四人相手ならトウマ君がいなかったら良くて相打ちって感じ。今更だけど本当に人類側やばかったな。


 トウマ君抜きだったら絶対に滅亡してたぞ……まあトウマ君がいなかったらそもそも小説が創られる事もなくこの世界自体もなかっんだけど……



 いろんな思考を巡らせているとスッと一歩前に出たトウマ君



「本番目前なので少し体動かします」



 と言って四天王を目にもとまらぬ速さで切って捨てた。あまりの速さに多分四天王達は自分が死んだことにも気付かず絶命しているだろう。



「……あなたという人は……少しはこっちにも見せ場を寄こしなさい」



「さっきあんなに暴れたじゃないですか? ここは僕に任せてくださいよ? もう終わっちゃったけど」


 トウマ君はすぐさま敵の戦力を分析し自分が倒さないと下手をしたら誰か死んでしまうと分かって速攻で倒したんだ。そしてそれを理解したガーボ君もまた敢えて気付かない振りをしているのだろう。良くできた子達だ。


 さっさと次に行こうと俺をグイグイ引っ張るバサシをいつもより強めに叩くとそれと同時に闘技場の扉が開きそこからかなりやばそうな奴が出てきた。


 


 遂に魔王のお出ましか……


 


 誤字脱字ありましたらお願いします。


 感想ブックマーク頂ける嬉しいです。


 本日二十三時位にもう一話投稿したいと思います。


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