第十二話
「ここが魔大陸ですか……トウマがいれば大丈夫でしょうが気は抜かないでくださいね? 魔大陸に入り生きて戻った人間はいないと言われています。それに魔物のレベルがかなり高いとこの前倒した、魔王軍幹部が自慢げに言っていました」
魔王城の位置もその幹部が教えてくれたらしい、どうせ貴様達はここで死ぬのだ! とペラペラと何でも話す奴だったようだが案の定トウマ君に瞬殺されたよう。
「ここから北へ五日ほど行った所に魔王城があるはずです。気を引き締めて行きましょう!」
相変わらずしっかりとパーティーを引っ張ってくれるガーボ君。トウマ君は「この前は二週間って言ってませんでした?」 とか頓珍漢な事を言ってガーボ君に説教されている。
さっそく出発した俺達だったが、行けども行けども砂漠ばかりで若干気が滅入ってくる。それは皆同じ様で。
「ガーボさん、僕もう疲れました。僕が魔法で魔王城まで行って転移で戻ってきますからそれから皆で行きましょうよ?」
「それいい! 私も疲れたー」
うん、その案は魅力的だし是非実行して欲しい。こんななんもない砂漠であと三日も歩き続けるとかチートがあっても疲れるし嫌だ。だが、そんな希望はガーボ君の冷静な判断によって打ち砕かれる。
「確かにいい案かもしれないが、ここは敵の本拠地。いつどこでなにがあるかわからない。戦力を分けるのは危険だ。もちろん俺達は覚悟を決めて魔王討伐に来ているから命など惜しくはないが、万が一にでもトウマに危害が及ぶ可能性は避けておきたい。お前は失ったら人類は滅亡するかもしれないんだ」
そう真剣に訴えるガーボ君はこれまでにない表情で話し続ける。
「俺はSSS級冒険者で人類でも最高峰の戦力だと自負している。だが、この前お前が瞬殺した幹部ですら俺からしたらギリギリ倒せるかどうかのレベルだ。あの幹部以上の戦力が魔王城にはあるはずだ、だからトウマには万全の状態で魔王討伐に挑んで欲しい。力が足りず申し訳ないが人類の為にもう少し我慢してくれ。すまない。」
ここまで言わせてしまい、トウマ君は意識を変えたようだ。
「……いえ、ガーボさんこっちこそごめんなさい。これは人類の存亡をかけた戦いですもんね。少し気が抜けていました。俺はチートを貰って強くなったけど、やっぱり抜けている事が多いからこれからもガーポさんにはフォローして欲しいです。お願いします」
人の話をちゃんと聞け素直に頭を下げられるというのは素晴らしな、どっかのクソ上司に見習わせてやりたい。
再び出発した俺達は、時折現れる魔物を倒しつつ三日が経っていた。
「早い行程だったから明日には魔王城に付くな、まだ夕方だが今日は早めに休むとしよう」
「やった! 明日に備えてゆっくり休憩しましょう!」
「うんうん、そうしよう! イェーイ」
「ズー、周りに魔物除けの結界と防御結界をお願いします」
「はーい」
手早く野営の準備をするトウマパーティー。俺達も準備しようとするとドヤ顔のバサシが近づいてくる。
「ご主人様、野営の準備が整っています。トウマ達のみすぼらしいテントなどではなく、拙者の生産系チートをふんだんに活かして作った力作です」
俺は無言で時間を停止し、そのテントを粉砕した。
「ご主人様! 何をするのですか!」
「チート詰めすぎなんだよ! すげー神々しいし! この世界には規格外すぎる! 魔物除けの布とか使ってるみたいだけどその布の効果だけで全世界の魔物死んでるぞ! 魔王ですら死んでるし! 生き返らせないといけないじゃん! これから倒す予定の魔王を生き返らすって意味わかんねーよ!」
そう言うとバサシは気配を探り、魔王を含む全世界の魔物が消滅していることを確認
「チッ! 情けない魔物共め、少しは踏ん張らんか! ……とりあえず土下座ですよね? ご主人様の為に丹精込めて作ったテントを粉砕されてしまいましたが、この世界に合わない物を作った拙者が全て悪いですもんね? このボロ切れと化したテントを片付け次第すぐに土下座しますので少々お待ちください」
ぐっ、そう言われるとつらい。俺の為に一生懸命テントを作り、満面の笑みで渡して来たバサシを思い出すと少し申し訳ない気持ちになる。
しかも、絶対にわざとだと思うが。人化を解いて犬のバサシとなってテントのボロ切れを咥えながら一か所に集める姿を見ると俺が完全に悪者だ。
「……バサシごめんな、せっかく作ってくれたのに、気持ちだけありがたく貰っとくよ。後で直しておくからさ。今日は普通のテントに寝ようぜ?」
「その謝罪受け入れましょう。今後はこのような事がないようにしてください。今日はテント内では犬のままでいますので、久々にブラッシングお願いします」
やっぱりムカつく……でも壊したのも事実だし久々にブラッシングしてやるか。
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